受注獲得計画(アカウントプラン)は個別対策を考える
できるかどうか、どうやってやるかを悩むからアカウントプランに価値がある
2023年5月15日
最近、受注獲得計画(アカウントプラン)を作成して営業活動を行っている会社が増えています。
新たな取引を獲得する計画、他の部門を紹介してもらって取引部門を拡大する計画・・・
しかし、一生懸命に時間をかけて作ったアカウントプランを見てみると、実行できない、意味のないものが多い。
WEB会議システムの営業担当Aさんがアカウントプランを作っていました。
お客さんはモーターメーカーのリーディングテクノロジー。
昨年、営業本部に購入してもらったので、今期は研究本部に営業してWEB会議システムの受注を獲得したい。
リーディングテクノロジーとは大阪支社の営業企画部長と接点があり、Aさんが考えたアカウントプランは・・・
(リーディングテクノロジーの経営課題)
リーディングテクノロジーのIR資料で調べてみると・・・
・自動車や家電メーカーの高度化する需要に対応するため研究開発を強化する。
・地域別、取引先別の提案力を強化し新製品の販売を促進する。
(リーディングテクノロジーの拠点や組織)
ホームページを見てみると・・・
・本部は、営業本部と研究本部に分かれている。
・営業本部の中に東京支社と大阪支社があり、それぞれに営業企画部がある。
・研究本部は東京にある。
・研究本部の中の先端技術研究部と研究推進部も東京にある。
・研究本部の中の商品開発部は東京と大阪、中国、ドイツにある。
(リーディングテクノロジーの投資について)
大阪支社の営業企画部長に聞いてみると・・・
・営業本部は今期の投資は抑える。
・研究本部は投資を増やして技術者の採用を強化するらしい。
(研究本部の状況)
大阪支社の営業企画部長に聞いてみると・・・
・研究本部では4年前にWEB会議システムを導入したけれど機能が足りず不満らしい。
・研究推進部が、研究本部のシステム導入を担当していてIT企業との取引も多いらしい。
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そこで、Aさんが作ったアカウントプランは、
5月:営業企画部長から研究推進部の紹介を獲得
6月:研究推進部との面談で当社のWEB会議システムを紹介
7月:研究推進部に研究本部で使っているWEB会議システムの問題点をヒアリング
8月:研究推進部にWEB会議システムを提案
9月:研究推進部から研究本部の受注を獲得
みなさん、Aさんが作ったアカウントプランについて考えてみてください。
ちゃんと実行できるのでしょうか?
受注を獲得できるのでしょうか?
Aさんに聞いてみました。
大阪支社の営業企画部長から東京の研究推進部を紹介してもらえるの?
どうやって紹介してもらうのか?お願いしたら紹介してくれるの?
研究推進部は当社のWEB会議システムを気に入ってくれるの?
どうやって気に入ってもらうの?
研究本部は投資を増やすそうだけどWEB会議システムの予算をと っているの?
予算をとっていないのであればどうやって予算をとらせるの?
研究推進部はIT企業との取引も多いらしいけどコンペにならないの?
コンペになるのであればどうやって勝つの?
すると、Aさんは、
「紹介してくれるかわかりません、とりあえず営業企画部長にお願いしてみます」
「気に入ってくれるかわかりません、とりあえず紹介してみます」
「予算をとっているかは研究本部と接点がないのでわかりません、会った時に聞いてみます」
「コンペになるかはわかりません、コンペになったときに考えます」
???アカウントプランを作った意味はあるのだろうか???
計画(プラン)とは、
目的に対し、あらかじめ達成する方法や手順を考えること、目的を達成するための企ての内容。
Aさんのアカウントプランの場合は、
リーディングテクノロジーの研究本部に営業してWEB会議システムの受注を獲得するという目的を達成する方法や手順、達成するための企ての内容でなければなりません。
つまり、できるかどうかを考え、どうやってやるかを考えるものであり、一般的な営業プロセスを書くものではありません。
できるかどうかを考え、どうやってやるかを考える
できるかどうか≒個々の活動の課題
どうやってやるか=個々の活動の課題への対策
目的は、
リーディングテクノロジーの研究本部からWEB会議システムの受注を獲得。
この目的に対し前提になるものがお客さんであるリーディングテクノロジーの研究本部の課題とWEB会議システムによる課題解決の提案です。
この提案により受注を獲得するための個々の活動の課題が、
・コンタクト(紹介獲得)できるか
・情報収集できるか
・提案を理解させられるか
・予算をとってもらえるか
・決裁者や関係者を説得できるか
・コンペで勝てるか
・その結果、受注を獲得できるか
そして個々の活動の課題への対策は、
・コンタクト(紹介獲得)する方法
・情報収集する方法
・提案を理解させる方法
・予算をとらせる方法
・決裁者 や関係者を説得する方法
・コンペで勝つ方法
・その結果、受注を獲得する方法(手順やストーリー)
たとえば・・・
できるかどうか?
研究本部のシステム導入を担当している研究推進部と接点のある大阪支社営業企画部長は、組織も本部が異なり、拠点も離れている。
営業企画部長から研究推進部を紹介してもらうのは難しいかもしれない。
どうやって紹介してもらうか?
・大阪支社の営業企画部長から拠点が同じ大阪支社の商品開発部を紹介してもらえないか?
・そして、大阪支社の商品開発部から研究推進部を紹介してもらえないか?
地域別、取引先別の提案力を強化し新製品の販売を促進しているから営業本部と商品開発部が連携して自動車メーカーに提案している可能性があるだろう。
→大阪支社では営業企画部長と商品開発部の接点はあるだろう。
高度化する需要への研究開発を強化しているから顧客の要望に対し開発を行う商品開発部と先進的な研究を行う先端技術研究部の連携は必要だろう。
→大阪支社の商品開発部と先端技術研究部や研究推進部の接点もあるだろう。
できるかどうか?
研究推進部では取引しているIT企業が多い。
大阪支社の商品開発部から単純にお願いして紹介してもらおうとしても「すでに取引しているIT企業がある」と断られるかもしれない。
どうやって紹介してもらうか?
研究推進部が会いたいと思うネタを作らないといけない・・・
高度化する需要への研究開発を強化して、地域別、取引先別の提案力を強化しているから、営業本部と商品開発部と先端技術研究部の情報共有は重要だろう。
単純にWEB会議を紹介したいと言っても断られるかもしれないけど、顧客情報と研究開発情報の共有と有効活 用という提案を切り口にすれば紹介してもらいやすいかもしれない。
できるかどうか?
大阪支社の営業企画部長からしかヒアリングできないから研究本部の情報共有についてはわからない。
どうやって提案を作るか?
まずは、研究本部の情報共有についてヒアリングしないといけない・・・
営業企画部長とは仲がいいから相談して商品開発部を紹介してもらえるようにお願いしよう。
アカウントプランの個々の活動の課題への対策
・大阪支社の営業企画部長から商品開発部を紹介してもらう。
・商品開発部から研究推進部を紹介してもらう。
・紹介してもらうために、営業本部と商品開発部と先端技術研究部の情報共有の提案を作成する。
・提案を作成するために、仲がいい営業企画部長にお願いして商品開発部にヒアリングする場を作ってもらう。
そして、行動計画(アクションプラン)
来週:営業企画部長に相談し商品開発部を紹介してもらえるようお願いする。
5月中旬:商品開発部にヒアリング。
6月上旬:提案を作成して、営業企画部長と商品開発部に提案し研究推進部を紹介してもらう。
6月下旬:営業本部と商品開発部と先端技術研究部の情報共有を切り口に研究推進部と面談し現在使っているWEB会 議システムの問題点をヒアリングする。
7月中旬:・・・・・
Aさんが作ったアカウントプランと比べてみてください。
Aさんは「紹介を獲得」「WEB会議システムを紹介」「WEB会議システムの問題点をヒアリング」「WEB会議システムを提案」と言っていますが、できるかどうかも考えていないし、どうやってやるかも考えていない。
アカウントプランは実行するためのものです。
実行するためには「できるかどうか、どうやってやるか」という個々の活動の課題への対策(個別対策)が必要です。
紹介してもらえるかどうか?
どうやって紹介してもらうか?
・・・アプローチ対策
予算はとってもらえるのかどうか?
どうやって予算をとってもらうか?
・・・予算対策
決裁者は理解してくれるのかどうか?
どうやって決裁者に理解してもらうか?
・・・組織・決裁者対策
競合に勝てるかどうか?
どうやって競合に勝つか?
・・・競合対策
いつ何をするかという計画はこれらのアプローチや予算や組織、競合など個別対策を考えた後で考えるものです。
実行し成果を上げるためのアカウントプランを作成するのであれば・・・
①.お客さんの情報を収集しましょう。
②.収集した情報からターゲット(部門やテーマなど)、課題と提案を考えましょう。
③.課題と提案を考えたらアプローチや予算や組織、競合など個別対策を考えましょう。
④.個別対策を並べて受注を獲得するためにいつ何をするかというストーリーを考えましょう。
③の個別対策について考えていない、考えていても浅いアカウントプラン が多く見受けられます。
受注を獲得する計画であるアカウントプランで最も大切なものは、一般的な営業プロセスの羅列でなく、受注獲得に対する課題と対策(個別対策)である「できるかどうか、どうやってやるか」にこだわり、考えることです。
この最も大切な個別対策をこだわらず、考えずにアカウントプランを作成しても意味がありません。
アカウントプランは、アプローチ、予算、組織、競合・・・「できるかどうか、どうやってやるか」にこだわり、悩み、考えることに価値があるのです。
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