コスト・人員・工数削減の伝え方
「どのような削減か?」と「削減して実現することは?」の2つを考え具体的に伝える
2023年10月15日
「コスト削減」「人員削減」「工数削減」「業務負担の削減」・・・
法人営業ではよく見かける言葉で、多くの営業担当者がお客さんのメリットとして提案しています。
「ノンコア業務を削減してコア業務に集中」「業務を効率化し運用コストを削減」・・・
しかし、なかなか響かない、理解してくれない。
販売管理システムを売っているセントテクノロジーの営業担当Aさんが、リーディングカンパニーに提案していました。
Aさんが提案する販売管理システムは、営業計画と見込み情報や受注情報を一元管理できて、請求管理システムと連携できるシステムです。
特徴として、
・受注情報を登録するだけで営業会議の報告書が自動で作成できる。
・営業部長、マネージャー、担当者など営業部全員がリアルタイムに見込み情報や受注情報を共 有できる。
・請求管理システムと連携していて受注情報を登録するだけで請求処理までできる。
その結果、営業社員の業務負担を削減できるシステムです。
そこでAさんはリーディングカンパニーの営業企画担当Bさんに提案しました。
各社の販売管理の状況や背景やシステムの機能、競合他社との違いを説明した後に・・・
特徴として、
・報告書が自動で作成できる。
・営業部全員がリアルタイムに見込み情報や受注情報を共有できる。
・受注情報を登録するだけで請求処理までできる。
メリットとして、
・業務負担を削減することでコア業務である営業活動に専念させることができる。
・営業アシスタントなどの人件費を削減することができる。
Aさんが提案したあとにBさんは、
「ありがとうございます、営業部と検討してみます」
「検討に2週間ぐらいかかりますが、ご連絡させていただきますので少々待ちください」
そして2週間後・・・
Bさんから電話がかかってきて、
「申し訳ないのですがお断りさせてください」
「営業アシスタントを1名増やそうと思っているので予算がとれないんですよ」
「たしかに営業社員の負担は大きいんですけど、今期は販売管理システムよりも昨年リリースした新商品の営業に力を入れないといけないので」
営業アシスタントを1名増やそうと思っているので予算がとれないって言うけど、「人件費を削減できる」って提案したのに・・・
新商品の営業に力を入れないといけないって言うけど、「コア業務である営業活動に専念させることができる」って提案したのに・・・
具体的に削減できる金額を提示できなかったからダメだったのか・・・
でも、削減できる金額がわからないからしょうがない。
新商品の営業戦略の検討や営業担当者への提案指導で忙しいんだろうな・・・
時期が悪かったんだろう、しょうがない。
本当に「しょうがいない」のでしょうか?
Aさんの提案で何が良くなかったのかみなさんも考えてみてください。
Aさんの同僚の営業担当Cさんがアドバイス商事に提案していました。
Cさんの提案書は、特徴までAさんと同じですが、メリットを下のように書いてありました。
「業務負担を削減することでコア業務である営業活動に専念させることができる」
貴社の場合は以下の業務負担を削減
・毎週作成しているチームの営業会議の報告書作成業務を削減できる。
・毎月作成している営業部の会議の報告書作成業務を削減できる。
・月末月初の忙しい時期に経理部に提出している売上報告書作成業務を削減できる。
これらの負担を削減することで以下のメリットを実現
・現在、注力している新商品の営業活動の行動量を向上。
→既存顧客への提案件数を増加、テレアポ等の新規アプローチ量を増加。
・営業会議で報告の時間を短縮し、戦略や個人の課題の議論に時間を費やせる。
→ターゲットや提案の精度が重要な新商品の戦略や個人の営業レベルを向上できる。
「営業アシスタントなどの人件費を削減することができる」
貴社の場合は以下の体制で新商品の営業活動を推進
・営業アシスタントが複数チームを担当することで1名分の人件費を抑えることができる。
1名分の人件費を抑えることで以下のメリットを実現
・新商品の営業活動で必要なWEBや展示会の出展などプロモーションに投資し引き合いを増やすことができる。
そして2週間後・・・
アドバイス商事の営業企画担当Dさんから電話がかかってきて
「今期は販売管理システムを検討していなかったんですが、営業部に話したら検討することになりました」
「詳細についてお打ち合わせをお願いしたいのですが」
Cさんはアドバイス商事から販売管理システムを受注することができました。
なぜ、Aさんは失注したのでしょうか?
なぜ、Cさ んが受注できたのでしょうか?
AさんとCさんの提案を比べてみましょう。
Aさんの提案は、
「報告書が自動で作成できる」
「営業部全員がリアルタイムに見込み情報や受注情報を共有できる」
「受注情報を登録するだけで請求処理までできる」
Cさんの提案は、さらに
「毎週作成しているチームの営業会議の報告書作成業務を削減できる」
「毎月作成している営業部の会議の報告書作成業務を削減できる」
「月末月初の忙しい時期に経理部に提出している売上報告書作成業務を削減できる」
Aさんの提案は、
「業務負担を削減することでコア業務である営業活動に専念させることができる」
Cさんの提案は、
「既存顧客への提案件数を増加、テレアポ等の新規アプローチ量を増加」
「ターゲットや提案の精度が重要な新商品の戦略や個人の営業レベルを向上できる」
Aさんの提案は、
「営業アシスタントなどの人件費を削減することができる」
Cさんの提案は、
「新商品の営業活動で必要なWEBや展示会の出展などプロモーションに投資し引き合いを増やすことができる」
みなさんがお客さんだったらAさんとCさんのどちらに説得されますか?
「コスト削減」「人員削減」「工数や業務負担の削減」
多くのお客さんが必要と言っていることで、求めていることです。
しかし、「コスト削減」「人員削減」「工数や業務負担の削減」という言葉では、本当に削減できるのかを理解させることはできません。
また、「コスト削減」「人員削減」「工数や業務負担の削減」はお客さんにとって目的ではなく、削減した結果「実現できること」が目的です。
この目的がない、または、わからないまま「コスト削減」「人員削減」「工数や業務負担の削減」を検討することはありません。
お客さんは、
「ただ、使うお金を減らしたい」から検討するのではなく「使うお金を減らして、やりたいこと、実現したいことがある」から検討する。
「ただ、人員削減したい」から検討するのではなく「人員削減して、やりたいこと、実現したいことがある」から検討する。
「ただ、 工数や業務負担を削減したい」から検討するのではなく「工数や業務負担を削減して、やりたいこと、実現したいことがある」から検討する。
抽象的に「コスト削減」「人員削減」「工数や業務負担の削減」と書き、提案している営業担当者が多く見受けられます。
みなさんの提案はいかがでしょうか?
「コスト削減」「人員削減」「工数や業務負担の削減」を提案するのであれば、下の2つをセットで書き、説明しなければなりません。
「どのような削減か?」・・・削減する内容
「削減して実現することは?」・・・削減する目的
「ノンコア業務を削減してコア業務に集中」という提案をよく見るのですが・・・
「どのような削減か?」・・・削減する内容であるノンコア業務とは?
「削減して実現することは?」・・・削減する目的であるコア業務とは?
この2つを伝えて明確にしなければ「ノンコア業務を削減してコア業務に集中」を検討してもらえません。
「コスト削減」「人員削減」「工数や業務負担の削減」を提案するときは、
「どのようなコストを削減?」「どのような人員を削減?」「どのような工数や業務を削減?」を考えて伝えましょう。
そして、「コストを削減して実現することは?」「人員を削減して実現することは?」「工数や業務負担を削減して実現することは?」を考えて伝えましょう。
「コスト削減」と提案しながら「自分の商品にお金を使ってください」という提案・・・
「どのようなコストが削減できるのか?」「コストを削減して実現することは?」が明確でないのに通用するわけありません。
「どのような削減か?」という削減する内容
「削減して実現することは?」という削減する目的
この2つを具体的に伝え明確にしてはじめてお客さんの検討が始まるのです。

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