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顧客課題を考える方法(ESLPIプロセス)

顧客の課題は市場環境や戦略、経営課題から考える

2017年1月1日

御用聞き営業、商品案内営業から脱却できない理由の1つは顧客の課題を考えられない、想定できないことです。


顧客の課題を考えられない、想定できないと・・・

・単純に何か課題があるか聞く=すでに検討していることを聞く

・商品を案内して検討できるか聞く=課題に関係なく商品が必要か否かを聞く

という営業しかできません。


顧客に対して、「単純に何か課題や要望があるか聞く」または「商品を案内して検討できるか聞く」という活動に慣れてしまい、顧客の課題を考えられない営業社員は多いものです。


では、どうしたら顧客の課題を考えられるのでしょうか?



2つの例で顧客の課題を考える方法について比較してみましょう。

下着メーカー〇〇社にノートPCやタブレットを提案したいという状況で課題を考えてもらいました。



Aさんの場合・・・


〇〇社の課題は何ですか?

「外出の多い営業社員の業務効率です。」


では、〇〇社の営業社員が外出が多くて困っている仕事は何ですか?

「えーと・・・資料作成」


どんな資料を?

「・・・わからない」


では、その仕事を外出先でしないといけない理由は?

「営業は外回りが多くて社内にいる時間が少ないから」


〇〇社の営業社員の外出の量はどのくらい?社内にいる時間はどのくらい?

「・・・わからない」」


では、外出中に資料を作成できないと困る理由は?

「えーと・・・顧客対応が遅れる」


どのくらい遅れる?遅れると何が困る?

「・・・わからない」



次にBさんの場合・・・


〇〇社の課題は何ですか?


〇〇社の状況は、

「下着は、伸縮性や吸湿性、耐久性など繊維素材の高機能化が進んでいる」

「競合の△△社も素材の高機能化を進めていて、専門店を中心に展開いている」

「スーパーも売り場のスペースが限られている中で、専門店との競争にさらされているため

売れる商品を選んで仕入れている」


「そのため、〇〇社も素材の高機能化を進めている」

「〇〇社は、専門店ではなく今までの関係のあるスーパーを中心に営業している」


そうすると〇〇社の営業は、

「〇〇社の営業は、スーパーのバイヤーに対し伸縮性や吸湿性、耐久性のデータを提案しているかもしれない」

「サンプルを用意し素材の実物を見せて提案しているかもしれない」

「店舗で売ってもらうため、本部のバイヤー以外に売り場担当者にも説明しているだろう」

「大型店は郊外のショッピングセンターも多いので本部と売り場を訪問するのも大変だろう」

「〇〇社は、業績が良くないので営業を増やせないので、直行直帰も多いだろう」


そうすると〇〇社の問題は、

「バイヤーへの提案に、素材のデータやサンプルも必要なので提案前の準備に困っているのでは」

「バイヤーとの提案日時の調整も苦労しているのでは」


そのため、〇〇社の課題は、

「外出している時間に、商品の素材データをまとめた提案を作成したり、サンプルの準備を社内に依頼したり、バイヤーとの商談日時の調整をする必要があるのでは」


今のままだと、

「バイヤーへの提案が遅れて、売り場スペースを競合他社にとられることもあるのでは」

「そうすると、いい商品を作っても売り場におけず売上を伸ばせないのでは」



Aさんが考えられた〇〇社の課題は、

「外回りの多い〇〇社の営業社員は、資料作成する時間がとれず、顧客対応が遅れる」です。


Bさんの場合は、

外出先でできずに困る仕事、作成する資料を考えられています。

「提案したい商品の素材データをまとめた提案の作成」「サンプルの準備を社内に依頼」「バイヤーとの商談日時の調整」


そして、その仕事を外出先でしないといけない理由を考えられています。

「バイヤーに対して素材データとサンプルで提案している」「本部のバイヤー以外に売り場担当者にも説明している」「本部と郊外の売り場を訪問し、直行直帰も多い」


また、外出中に資料作成やバイヤーとの日程調整ができないと困ることも考えられています。

「早めに提案しないと売り場スペースを競合他社にとられてしまう」「いい商品を作っても売り場におけず売上を伸ばせない」



Aさんの場合、〇〇社に対しできることは、「資料作成する時間がとれずに顧客対応が遅れるという問題はありませんか?」と抽象的に聞くことです。

しかも、「資料作成する時間がとれない」ということも「顧客対応が遅れる」ということも単なる一般論で考えた根拠のない当てずっぽうです。


Bさんの場合は、

外出先でする必要がある仕事や作成する資料、外出先でしないといけない理由や困ることを具体的に提案できます。

仮に、Bさんが考えた課題(仮説)が外れていたとしても、具合的な内容を提案しているので顧客からの提案に対する反応として具体的な情報を収集することができ、別の提案を考えることができるでしょう。



では、AさんとBさんの顧客の課題を考える方法の違いは何でしょうか?


Aさんは、

ノートPC、タブレットに関する一般的な課題を言っただけです。そして、いきなり漠然と「課題は何だろう?」と考えています。

下着メーカー〇〇社の状況を考えていません。


Bさんは、

➀.〇〇社の市場環境や競合の状況(Environment)

➁.➀に対する〇〇社の戦略や経営課題、事業構造・特性(Structure)

➂.➁に対する営業の実態や内情(Lower Situation)

➃.➂に対する問題や課題(Problem)

➄.➃が解決しないことによる悪影響(Implication)

この➀~➄の順番(ESLPIプロセス)で顧客の課題を考えています。



経験のある上司から「うちの部下は顧客の課題を考えられない」という相談を受けることが多いのですが、上司は、多くの経験により顧客(業界)の市場環境や競争環境、戦略や経営課題、事業構造・特性の情報・知識があり、そこから感覚的に実態や内情、課題を考察する力を身につけているのです。


その上司が、経験のない、少ない部下に対して、顧客の課題を考えろという指導をしても情報・知識のない、または少ない部下、実態や内情を考える力が身についていない部下には難しいのです。



顧客の課題を考えるためには、市場環境や競合状況、戦略や経営課題、事業構造・特性の情報が必要で、その情報に対して顧客の実態や内情を考え、その後に課題と解決しないことによる悪影響を考えるというESLIPプロセスが必要です。


インターネットが普及した今日では顧客の市場環境や競合状況、戦略や経営課題、事業特性はホームページやIR資料、インターネット検索で調べられます。


顧客の課題を考えられるようになるためには、日ごろから顧客の市場環境や競合状況、戦略や経営課題、事業特性を調べ、実態や内情を考えることが必要なのです。


また、市場環境や競合状況、戦略や事業構造・特性を知識として蓄積するため、毎日、新聞を読むことも大切です。






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