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限定質問で顧客の情報を聞き出す

「でしょうか?」でなく限定質問の「ですよね」が会話を雑談にする

2021年10月15日

課題や内情、予算や競合・・・

営業では必要だけどなかなか教えてもらえない情報がたくさんあります。


お客さんの情報をすべて把握できれば「何をどのように伝えたら理解してもらえるか」を考えられる・・・提案も交渉も説得も競合他社に勝つ方法も考えられる。

でもなかなか教えてもらえない・・・


営業はお客さんのことがわからないから難しいのです。



ある求人広告会社の営業担当Aさんが上司から指導されました。


「採用状況や求人広告が必要かだけじゃなくて、お客さんの戦略も聞いてくるように」

「そのために、訪問する前にお客さんの戦略や事業について調べていくように」

「単純に「御社の戦略を教えてください」とか「どのような課題がありますか?」と聞いても教えてくれないから、調べた情報を話しながら聞くんだよ」



ある日、Aさんは飲食チェーンの会社に訪問しました。

面談相手は、採用担当のBさんです。


事前にお客さんの戦略について調べると・・・


・都心の駅近くの店舗が多かったけれど、最近は郊外のロードサイド店を増やしている。

・都心の店舗は飲食だけでなく宅配事業も強化している。


Aさんは調べただけではなくお客さんの状況を想像しました。


・コロナ禍によって営業時間やお酒の提供などを制限されて売上が下がっているから生き残りのために宅配事業を強化しているんだろう。

・在宅勤務が進んだので都心より郊外で自宅近くの店舗の来店数が増えるのかも。


そしてAさんはお客さんを訪問しました。

採用したい人材や採用の計画を聞いて見積を提出することになりました。


一通り用件が済んだので、その後・・・


Aさん

「御社のことを調べたら、郊外のロードサイド店を増やしているようですが、郊外に力を入れているのでしょうか?」


採用担当Bさん

「そうですけど・・・」


Aさん

「やはり、郊外の店舗に力を入れているんですね」

「それは、コロナ禍で在宅勤務が増えているので都心の店舗が厳しくて、働く人の自宅近くの需要が増えているからでしょうか?」


採用担当Bさん

「いえ、違います」

「コロナ前から郊外の店舗を増やす計画だったので郊外の出店を増やしているんですけど・・・何かあるんですか?」


Aさん

「いや、何かというわけじゃないんですが、御社の戦略を知っておきたくて」

ちょっと引かれていると思いながらも・・・

「そうなんですか、コロナ前から郊外の出店を増やす計画だったんですね。それは何か理由があるんでしょうか?」


採用担当Bさん

「今、販売促進部の採用を検討していて御社に相談しているんですけど、何か関係があるんですか?」

「私は採用担当なので詳しく知りません」


Aさん

「いや、すみません、失礼しました」

「では、明日にはお見積りをお送りさせていただきます」



Aさんは会社に戻って上司に・・・

「戦略について話してみたんですけど引かれてしまいました」

「採用担当のBさんはドライな人なので、あの人に教えてもらうのは無理です」



ここで問題です。


なぜ、Aさんは戦略について教えてもらえなかったのでしょうか?

教えてもらえなかったのはBさんの人柄が原因だったのでしょうか?


上の会話を読んでBさんになったつもりで想像してみてください。



別の日にAさんの競合会社の営業担当Cさんが採用担当Bさんと面談していました。


Cさん

「最近、御社では郊外のロードサイド店を増やしているみたいですね。うちの近くにも御社の店舗が出店していましたよ」


採用担当Bさん

「そうなんですよ、うちは都心の駅近くの店舗が多かったんですが一昨年から郊外の出店を増やしているんですよ」


Cさん

「そうなんですか、一昨年からですか。私はてっきりコロナ禍で都心の駅近くの店舗が厳しいから郊外に増やしているのかと思っていました」

「でも、コロナ禍だと在宅勤務が増えているから職場近くよりも郊外の自宅近くの店舗の方が来店数も増えそうですよね」


採用担当Bさん

「そうみたいですよ、一昨年から郊外の出店を増やしていてよかったみたいです」

「コロナ禍なのでお店で飲食する人は郊外も減っているみたいですけど、その代わり持ち帰りのお客さんが多いみたいで」


Cさん

「たしかに・・・、私も仕事中に自分で作るのは大変なので昼ごはんを外に買いに行ってますよ」

「でも、都心のお店はどうです?」

「サラリーマンのランチが減っているみたいですし、やはり厳しいんですか?」


採用担当Bさん

「私は採用担当なので詳しいことはわからないんですけど、お店での飲食が減っているので宅配に力を入れているみたいですよ」


Cさん

「そうなんですか、でも大変じゃないですか?宅配のスタッフとか必要になりますよね」

「売上が上がらないとスタッフの採用もしにくいでしょうし」


採用担当Bさん

「いや、その点は大丈夫みたい。ウーバーイーツさんにお願いしているみたいなので・・・」

「おそらく、コロナ禍の後も以前の状況には戻らないだろうから、これから宅配に力を入れていくみたいですよ」

「まだ、社名は言えないですけど、大手外食企業との協業で宅配を広げていくみたいです」



同じ採用担当Bさんから・・・


Aさんは、

「・・・何かあるんですか?」「採用担当なので詳しく知りません」と引かれてしまい教えてもらえませんでした。


しかし、Cさんは、

「社名は言えないですけど、大手外食企業との協業で宅配を広げていく」という情報まで聞き出しています。



AさんとCさんの違いは?


AさんもCさんも同じく「郊外のロードサイド店を増やしている」という情報から会話に入っています。

しかし、Aさんは引かれている、Cさんは盛り上がっている・・・


Cさんは「うちの近くにも御社の店舗が出店していましたよ」とか「昼ごはんは外に買いに行ってますよ」と自分のネタを使い会話をラフにしていますが、他にも大きな違いがあります。



答えは話の語尾。


Aさんは「でしょうか?」

Cさんは「みたいですね」「なりそうですよね」



Aさんは、準備した情報を話したあとBさんに質問しています。

Cさんは、準備した情報を話しながらBさんに振っているのです。



出店戦略の話は、採用担当であるBさんにとって直接的に関係ないことで、また面談の目的である「販売促進部の採用」や「求人広告の掲載」にも直接関係しないことです。


「販売促進部の採用」や「求人広告の掲載」について考えているときに「御社の戦略を知っておきたくて」と関係ないことを質問されても、不信に思い引く、また積極的に答えようという気持ちにはなりません。


また、詳しく知らないことに対して「郊外に力を入れているのでしょうか?」とまじめに質問されると、正確に知っているわけではないため答えにくくなります。



そのAさんに対しCさんの会話はBさんにとって気軽な雑談になっています。


CさんとBさんがお互い知っていることを自然に話し合っているだけ。つまり、採用担当Bさんにとっては目的や意図を意識しない単なる雑談。


Cさんが準備した(知っている)ことを話し「みたいですね」とBさんに振って、振られたBさんが知っていることを話す・・・


この目的や意図を意識させない雑談の中で自然と相手の情報を聞き出しているのです。



お客さんを訪問する前に一生懸命お客さんのことを調べても「お客さんのことはお客さんに聞く、教えてもらう」という意識で「でしょうか?」と質問してしまう。

その結果、せっかくいろんな情報を準備してもお客さんに教えてもらえないという営業担当者が多く見受けられます。

聞き方で失敗している営業が・・・


商談に直接的に関係ないことや言いにくいことを質問されても答えにくいし、教えてもらいにくいのです。


しかし、雑談は目的や意図を意識させないため様々な情報を聞き出すことができます。


経営課題や戦略など商談の目的と直接的に関係ないこと、また、内情や予算、競合など言いにくいことは、質問し「教えてもらう」のではなく、目的や意図を意識させない雑談の中で「聞き出す」のです。


そのためには、お客さんのことはお客さんに「でしょうか?」と質問するのではなく、お客さんのことを知ったかぶって話し限定質問で「ですよね」と振りましょう。



※限定質問・拡大質問

限定質問は相手にYesかNoで答えさせる質問、拡大質問は相手に話をさせる質問。限定質問と拡大質問を繰り返し進めることで会話を円滑にし、会話を発展させたり、深掘りする。

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