決裁者に興味を持たせる方法
一般的なお偉いさんでなく、個人の立場から重視していることを考える
2021年1月15日
「ずいぶん成果を上げてもらっているので、うちの取締役を紹介しますよ」
テレアポ代行サービスの営業担当Aさんは、取引先の中堅システム会社○○社の担当者Bさんから営業担当役員の取締役Cさんと面談する機会をもらいました。
そして、担当者Bさん、取締役Cさんと面談し、Bさんから紹介してもらうと・・・
取締役Cさん
「いつもお世話になっております。担当のBから御社の成果を聞いています。
当社は、技術力で伸ばしてきた会社なので営業が弱く、特に新規開拓ができないので、御社のテレアポ代行サービスは非常に助かっています」
営業担当Aさん
「こちらこそ、Bさんにはいつもリストのご準備やスタッフのモチベーションアップ施策などご協力いただき感謝しています」
「御社のご協力がアポイント獲得量につながっていると思っています」
Cさん
「テレアポはモチベーションも重要でしょうからね。うちの社員ではやれなくて・・・」
「御社は、テレアポを中心に支援しているんですか?」
Aさん
「テレアポを支援するケースが多いのですが、その他にもリード顧客の囲い込み支援として・・・」
「少し、当社の説明をさせていただきます」
会社案内、サービス紹介資料、実績資料を渡し、
「当社は設立15年になるのですが、大手広告代理店△△のCRM専門会社として独立し、・・・」
「元々、広告代理店のCRM部門でしたので、アプローチ施策に関する総合的なノウハウを強みに展開しています」
サービス紹介資料を見せながら、
「そのため、テレアポなどを提供するアプローチ支援、リード顧客に対する囲い込み支援の2つの柱で事業を運営しています」
「アプローチ支援は、電話以外にもメールによる・・・、電話とメールを組み合わせた・・・」
「囲い込み支援は、メール配信に対する閲覧履歴を収集し・・・」
Cさん
「テレアポの他にセミナーや展示会の来場者フォローもやっているんですか?」
Aさん
「そうなんです、最近は囲い込み支援の割合が増えていまして」
実績資料を見せながら
「大手食品メーカー様では、会員への新商品紹介やキャンペーンなどのメルマガ配信、また、大手製造装置メーカー様では、展示会の来場者へのお礼メールからアポイントの獲得、メルマガ配信までを支援しています」
「システム会社様の実績が一番多く、テレアポの他にセミナーへの来場促進、リード顧客への新商品のインサイドセールス、その他に・・・」
Cさん
「当社も、定期的に展示会に出展しているんだけど、営業社員がフォローできなくて」
「既存顧客の対応で忙しいようで」
Aさん
「そうなんですか、たしかに御社の営業の方はお忙しそうですし、展示会のフォローまで手が回らないのでしょう」
「当社では、展示会の来場者フォローの実績も 多いので、ぜひお手伝いさせてください」
Cさん
「そうですね、検討する際にはBから相談させていただきますので、その際にはよろしくお願いします」
後日、Aさんは担当者Bさんに聞いてみました。
「あの後、取締役Cさんは何か言っていました?」
Bさん
「何も・・・」
その後、展示会の来場者フォローの相談はありませんでした。
また、面談後に取引が発展することもなく、取締役Cさんと再び会うこともありませんでした。
せっかく決裁者である取締役に会えたのに・・・
ここで問題です。
Aさんは何が良くなかったのでしょうか?
Aさんに取締役Cさんとの面談で意識したことを聞いてみると・・・
「細かい説明より会社全体をアピールした方が良いと思い、大手広告代理店△△というバックグラウンドや2つの柱というサービス構成を理解してもらうこと」
「それと、信用してもらえるよう実績の説明を意識し 、大手企業との取引をアピールしました」
答え
Aさんは、Cさん個人を見ているのではなく「一般的なお偉いさん」としか見ていないこと。
一見するとAさんが意識したことは良さそうな気がします。
相手が取締役なので「細かい説明より会社全体をアピール、信用してもらえるよう実績の説明」
しかし、Aさんの説明は、システム会社でなく、食品メーカーでも製造装置メーカーの取締役だとしても変わらないでしょう。
また、中堅でなく大手企業でも変わらないし、取締役でなく部長でも同じような説明をするでしょう。
つまり、「細かい説明より会社全体をアピール、信用してもらえるよう実績の説明」は、お偉いさんなら誰でも同じ。
しかし、お偉いさんが興味を持つこと、重視していることは、会社や立場によって異なります。誰でも同じではありません。
中堅システム会社の営業担当役員であるCさんが重視していることは?
中堅システム会社〇〇社の経営課題を調べてみると
「クラウドやAI、RPAが拡大する中で、ビジネスモデルを変革し新商品の営業を促進する」
この経営課題に対して営業担当役員である取締役Cさんが重視していることは?
・今までのビジネスと異なるため、提案力を強化しなくてはいけない
・新商品を販売するために、今までと異なるターゲットへアプローチしないといけない
・少ない営業社員で、既存顧客営業と新商品の営業を両立しないといけない
Cさんが重視している「提案力の強化」「異なるターゲットへのアプローチ」「既存顧客営業と新商品の営業を両立」に合わせて、会社や事業、サービスを説明していたら、もっと興味を持ってもらえていたでしょう。
「元々、広告代理店のCRM部門」「2つの柱で事業を運営」という一般的な説明をするだけではなく・・・
「クラウドやAI、RPAが拡大しているので、ビジネスモデルの変革を進めている会社が多いようですが、新商品や新規マーケットへの営業では、提案力強化のために顧客情報の収集も強化しないといけないし、また、アポイント獲得以外にも案件化するまでのフォローを既存顧客営業と並行しながら行わないといけない、など課題が多々あると思うのですが」
とサービスや実績の説明の前に話していたらどうなっていたでしょう?
また、「展示会に頻繁に出展しているんだけど、営業がフォローできなくて」というCさんの発言に対し、単純なサービス説明やお願いするのではなく・・・
「ビジネスモデルの変革を進めているようですけれど、展示会は新商品の販売促進のためですか?」と突っ込んでいたらどうなっていたでしょう?
「システム開発だけでは事業を拡大できないので展示会に出展して新商品の販売を進めている」
「名刺は集まるけど、待ち受け型の営業しかやってきていないから、提案や顧客の課題を考えられない」
など、営業担当役員である取締役Cさんが課題や悩みを言ってくれたかもしれません。
法人顧客は組織で判断するものです。
そのため、担当者に理解してもらうだけでなく、組織の判断にかかわる決裁者や関係者それぞれの人を説得する必要があります。
決裁者や関係者を説得するためには、相手の立場から重視していることを考え、重視していることに合わせて説明やヒアリングすることが大切です。
この相手が重視し ていることに合わせて説明やヒアリングするためには・・・
①.会社全体の課題である経営課題を把握する。
②.経営課題が組織内のそれぞれの立場に対し、どのように落とされているかを考える。
③.その結果、相手が何を重視しているのか?を考える。
○○社の経営課題「ビジネスモデルを変革し新商品の営業を促進する」
営業担当役員には、
営業部長には、
商品企画担当役員には、
販売促進部長には、
・・・どのように落とされ、その結果、各々が何を重視しているのか?
決裁者や上層部の人と会える機会は、顧客組織に判断させる法人営業にとって大きなチャンスです。
「お偉いさんが同席する」と漠然と考え、「会社全体をアピール」や「信用してもらえるよう実績の説明」・・・
この大きなチャンスに「粗相なく」そして「成果もなく」終わらせている営業が多く見受けられます。
一般的なお偉いさんではなく、お偉いさん個人の立場から重視していることを具体的に考え、話しましょう。
そしてこの大きなチャンスに「粗相なく」ではなく「成果」を上げましょう。
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