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決裁者を説得する提案書の表現

会えない決裁者を説得するためには提案書で伝えたいことをストレートに書く

2017年1月1日

担当者は欲しいと言ってくれるけれど決裁者に理解してもらえない・・・

担当者では話が進まないんだけれど上司と会えない・・・

みなさんの営業活動でもこのようなシーンが多いことでしょう。


今回は、会えない上司や決裁者を説得するための提案書の表現方法についてお話ししましょう。


多くの会社の営業に関わっているとこのような営業が多い・・・

・面談相手に理解してもらうことばかり考えて提案書を作っている

・商品パンフレットと口頭での説明で商談を行い、あとは顧客社内での決裁を待っている


この営業は面談相手である担当者に理解してもらい、「上司や決裁者の説得は私の仕事ではありません。会えない上司や決裁者の説得は担当者の仕事です。」という営業です。


ただ、営業では担当者が上司や決裁者にきちんと説明できる、うまく説得できると思わない方がよいのです。

みなさんにとってみなさんの上司や決裁者を説得することは簡単ですか?

現場で欲しいものがあっても上司や決裁者に理解されない、説得できないということは日常茶飯事です。面談相手の顧客担当者も同じです。


顧客担当者の上司や決裁者の説得も営業の仕事なのです。


実は、担当者では理解されない、説得できない上司や決裁者の説得には提案書が有効です。

この会えない上司や決裁者を説得するための提案書にはいくつかのポイントがありますが、今回は表現方法についてお話しします。



ある営業社員が作成した提案書を見たときのことです。


提案書を作成した営業社員に聞いてみました

「この提案書の目的は?」

営業社員は

「顧客担当者に上司を説得するから提案書をまとめて欲しいと言われたので、担当者が上司を説得するための提案書です。」


提案書には、顧客の商品と競合商品の機能、価格の比較を図でまとめてありました。


縦軸が機能、横軸が価格によるマトリックス図。

・競合商品Bは、機能は「中」で価格は「中の低」

・競合商品Cは、機能も価格も「低」

・競合商品Dは、機能は「低」で価格は「中」

・顧客(提案相手)の商品Aは現在、機能も価格も「高」

・商品Aに矢印で機能が「高」のまま、価格を「高」から「中」へ移動


そして、図の上に、

「商品Aの価格低減による競争力の向上」と目立つように書いてありました。


みなさんが顧客だったらこの情報で何を考ますか?何を思いますか?

・商品力を強化してきたのでやはり機能は競合他社に勝っている

・高機能だから価格が高いのは当然、販促や営業を強化するべき

・競合商品Bとの価格差はどのくらいなのか?

・価格を下げるために機能を落としてもよいのでは?


営業社員に聞いてみました。

「この図でお客さんに伝えたいことは何ですか?」「つまり、顧客担当者の上司を説得するために伝えたいことは?」


すると営業社員は

「商品Aは競合商品にない〇〇の機能がついているので価格が高い。この〇〇の機能は競合商品に勝てる部分なのでなくすわけにいかない。ただ、機能面で競合相手になりやすい商品Bとの価格差が1.5倍なので、これではさすがに〇〇の機能があっても販促や営業努力だけでは厳しい。機能を落とすわけにいかないので、仕入や生産の効率化で商品価格を抑えることが必要ということです。」


とすると、顧客担当者の上司を説得するために伝えたいことは

「競合商品を考慮すると優位性を維持できる〇〇の機能はなくせない」

「競合商品Bとの価格差が1.5倍もあると販促や営業努力では勝てない」

「機能を落とすわけにいかないので、仕入や生産の効率化で商品価格を抑えることが必要」


この中で最終的に伝えたいことは「仕入れや生産の効率化で商品価格を抑えることが必要」ということです。


しかし、

この提案書では「商品価格低減による競争力の向上」と書いてある・・・

そして、「競合商品を考慮すると優位性を維持できる〇〇の機能はなくせない」

「競合商品Bとの価格差が1.5倍もあると販促や営業努力では勝てない」

「仕入れや生産の効率化で商品価格を抑えることが必要」が書いていない・・・


そのため、この提案書では

・商品力を強化してきたのでやはり機能は競合他社に勝っている

・高機能だから価格が高いのは当然、販促や営業を強化するべき

・競合商品Bとの価格差はどのくらいなのか?

・機能を落としてもよいのでは?

と理解される可能性があります。



実は、このような提案書が多いのです。


面談相手には提案書を見せながら口頭で説明しています。

そして、面談相手はこの提案書で上司に説明、その上司は決裁者に説明・・・


面談相手には書いていないことを口頭で説明し、説得したり理解のズレを調整することができます。

そのため、「競合商品を考慮すると優位性を維持できる〇〇の機能はなくせない」や「競合商品Bとの価格差が1.5倍もあると販促や営業努力では勝てない」「仕入れや生産の効率化で商品価格を抑えることが必要」と本当に伝えたいことを説明し理解させることはできるでしょう。


しかし、伝えたいことが書いていない、ズレている提案書で面談相手である顧客担当者は上司に対し的確に説明し説得できるでしょうか?

顧客担当者から説明を受けたその上司は決裁者に的確に説明し説得できるでしょうか?


顧客担当者はじっくり説明する時間をもらえないかもしれません。

顧客担当者がきちんと理解しておらず、ちゃんと説明できないかもしれません。

顧客担当者にとって上司は話しにくい相手かもしれません。

上司は顧客担当者のことを信用していないかもしれません。

顧客担当者の説明を聞いた上司が、決裁者にちゃんと説明できないかもしれません。



提案書とは、会って説得できない上司や決裁者に対して、顧客担当者に依存せず営業が直接説得する方法でもあります。


そのためには、

・上司や決裁者に伝えたいことをストレートに書く

・上司や決裁者に理解してもらうため伝えたいことの理由をストレートに書く

・そのために、上司や決裁者に対して本当に伝えたいことは何なのか?を明確にする

が必要です。


図や表は伝えたいことに対する間接的な表現です。

その間接的な表現は人により見方が異なるため、伝えたいことが伝わらないことも多いのです。


この図や表に対して、文章は伝えたいことに対する直接的な表現です。

提案書で長い文章はあまり良くないのですが、会えない相手を説得するためには直接的に表現する短い文章が重要です。


面と向かって説明せずに(会わずに)気持ちや考えを伝える手紙を図で書く人はあまりいないでしょう。

社内の関係者を書類で説得するための稟議書は図でなく文章表現が大半をしめています。



「商品価格低減による競争力の向上」でなく、「仕入れや生産の効率化で商品価格を抑えることが必要」と書くのです。

そしてその理由として、「競合商品を考慮すると優位性を維持できる〇〇の機能はなくせない」

「競合商品Bとの価格差が1.5倍もあると販促や営業努力では勝てない」を書くのです。



伝えたいことが書いていない、伝えたいことと書いてあることがズレてしまう原因は、

・視覚的な印象を意識しすぎて伝えたいこととズレてしまう。

・そもそも、図や表を通して伝えたいことが明確になっていない。

の2つです。


「きれいにまとめよう」「かっこよく作ろう」「インパクトのあるものを」「図や表ばかり意識して、何を伝えようとしているかわからなくなる」

その結果、伝えたいことが書いていない、ズレてしまう・・・


会えない上司や決裁者を説得するための提案書は、

この提案書で何を伝えたいか?

このページで何を伝えたいか?

この図や表で何を伝えたいか?

を考え、ワンフレーズで言えるぐらい明確にして、ストレートに書きましょう。


意思(伝えたいこと)のない、明確でない提案書は伝わりません。

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