顧客を知る方法
「知っている人に聞きに行く」が一番早い
2017年6月15日
営業では情報が大切、情報が必要・・・これは誰もがわかっていることでしょう。
しかし、営業現場をみていると情報収集に時間をかけている人は少ない・・・
情 報が大切、必要とわかっているのになぜでしょう?
会社として、組織としても、営業管理システムを導入して情報を共有しようとしたり、毎月メールで成功事例などの情報を配信したり、ミーティングで案件情報を共有しようとしているのになぜ?
答え・・・
情報が大切、必要と言っているわりには情報の収集、共有に手を抜いているから。
マネージャーAさんが営業担当Bさんに指導していたときのことです。
「同業の〇〇社に提案したCさんにどんな課題があったか聞いておくように指示したけど、どうだった?」
営業担当Bさん
「聞いたんですけど、あまり役立ちそうな情報がなくて・・・」
マネージャーAさん
「Cさんは何度か提案していたから情報はあるはずだけど」
「どうやって聞いたの?」
するとBさんはCさんに送ったメールを見せてきました。
Bさんのメール
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Cさん
お疲れ様です。営業1課のBです。
来週、食品業界の△△社に訪問することになりました。
以前Cさんは食品業界の〇〇社に提案していたと思うのですが、
その時に収集した〇〇社の課題や状況などの情報を
教えていただけますでしょうか?
△△社はスマートフォンの購入を検討している顧客で
大いに可能性がある顧客なので
同業他社の情報で何か参考になる情報がありましたら
事前に把握して訪問したいと思っております。
お忙しいところ恐縮ですがよろし くお願いいたします。
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Cさんからの返信メール
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Bさん
お疲れ様です。営業3課のCです。
〇〇社の提案は3年前で参考になるかわかりませんが送ります。
スマートフォンの提案をしたのですが、
予算がとれないとのことで失注になりました。
それまでは個人の携帯電話を使わせていたのですが、
セキュリティ面と業務使用分の通信費の精算の問題により
会社でスマートフォンを支給しようと検討していました。
当時の状況
営業社員の人数は約100名
スマートフォンの用途:
・顧客との連絡(電話、メール)
・上司と部下の連絡(電話、メール)
結局、予算が取れないとのことで
個人携帯をそのまま使わせることになりました。
また、何かありましたらご協力しますので
ご連絡ください。
△△社との商談頑張ってください。
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みなさんは、
このBさんとCさんのメールのやりとりを見てどのように思いますか?
たしかに、
Bさんは○○社の課題や状況を教えてもらおうとしている・・・
そして、
Cさんは知っている情報を教えようとしている・・・
しかし、
スマートフォンの提案として「セキュリティ面と業務使用分の通信費の精算の問題」という課題や「顧客との連絡、上司と部下の連絡(電話、メール)」という用途は一般論であまり役に立たない。
「営業社員の人数は約100名」という状況も△△社の商談には役に立たない。
では、Cさんはこの情報しか持っていなかったのでしょうか?
そんなことはありません。
Cさんは、何度か提案をしているので少なくとも3回以上は訪問しているはずです。
1回1時間面談 していたとすると3時間以上は顧客と会話をしているはず。
3時間以上会話をしてこの情報しか聞いていないということはありえません。
では、なぜこの情報しか教えてくれなかったのでしょうか?
Cさんが顧客から聞いた情報はどこにあるのか?
・Cさん(自分)の手帳
・Cさん(自分)の頭の中
仕事が忙しい中で情報を教えて欲しいというメールが届いたときに過去の手帳から探し出し教えてくれる・・・ここまでやってくれる人は少ないでしょう。
ではCさんの頭の中の情報は?
多くの顧客と会い、様々な会話をしている営業が収集した情報は、
・明確に記憶に残っている情報・・・ほんの少し
・何かのきっかけがあると思い出す情報・・・けっこう多い
・完全に忘れてしまう情報・・・けっこう多い
前例のようにメールで聞いたときに教えてくれる情報(Cさんが教えることができる情報)はこの3つの情報のうちの「明確に記憶に残っている情報」です。
参考になる情報を欲しいのであれば「何かのきっかけがあると思い出す情報」を聞き出さなければなりません。
この「何かのきっかけ」とは、思い出すために必要な具体的な情報や仮説です。
つまり、ホームページや顧客に提出した提案書といった具体的な情報、業務内容や課題などの具体的な仮説です。
つまりCさんに参考になる情報を教えてもらいたいのであれば「状況や課題の情報を教えてください」「何かあれば教えてください」という抽象的なメールでなく、電話をするか、会うかして具体的な情報を見せながら「・・・という状況はなかったですか?」「・・・という課題はなかったですか?」という仮説を使って聞かなければならないのです。
実際に、その後BさんがCさんに聞きに行くと・・・
「〇〇社の営業は、提案力を強化するため、顧客の本部商談以外に主要店舗の情報を収集している」
「本部との商談内容を店舗に定期巡回しているフィールド部隊に徹底させるため電話での指導が必要」
「携帯電話の請求書から業務に使った分だけ申請させているが、忙しいため申請できていない人もいる」
「フィールド部隊が陳列状況や店頭キャンペーンの写真を撮影しメールで送り、営業はノートPCで送られた写真を見ながら指導している」
「ノートPCを持たせないでスマートフォンだけ配布した方が良いのではと考えていた」
といった情報を聞くことができ、
「フィールド部隊への指導内容を聞くと、スマートフォンかタブレットの提案ができるかもしれないよ」
とアドバイスまでもらうことができました。
営業活動で収集している情報量は膨大です。
10人の営業社員がいる会社の場合、
1人1時間の顧客との面談を月に10回した場合、年間で120時間。10人で1,200時間。
10年続いている会社であれば、12,000時間。
12,000時間も顧客と会話し、12,000時間分の情報が蓄積されているのです。
この12,000時間分の情報はどこにあるのでしょうか?
営業社員個人の手帳と頭の中です。しかも大半は「何かのきかけがないと思い出せない情報」「完全に忘れてしまっている情報」です。
つまり、ほとんどが活用されていないのです。
この膨大な量の「何かのきかけがないと思い出せない情報」を活用するためには「直接聞きに行く」が一番早いのです。
そのためには、
・思い出してもらうための具体的な情報や仮説を準備する(どうしたら思い出してもらえるか考える)
・その情報や仮説を持って会いに行き聞く
営業の仕事の中で情報収集は優先順位の高い仕事です。
情報を持っているか否かで成果が変わってしまうのです。
知っていると顧客と会話ができる、知らないと会話ができない。
知っていると提案できる、知らないと提案できない。
知っていると事前にリスクを把握できる、知らないと把握できない。
知っていると対策を考えられる、知らないと考えられない。
労を惜しまず知っている人に聞きに行きましょう。
知っている人は社内だけではありません。
建材メーカーのことであれば、建材メーカーや建設会社で働いている人。
スポーツ用品メーカーのことであれば、スポーツ用品メーカー、販売会社の人、スポーツをしている人。
みなさんの友人や家族に知っている人はいませんか?
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