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クロージング力の強化①

予算・決裁者・競合…理由でなく原因と背景から対策を考える

2018年2月15日

見込案件を獲得したけれど、なかなか決裁してくれない、予算をとってくれない・・・

結果、受注できると思っていたのに失注した・・・


3月末に近づき今期の目標達成のためにクロージングしようと頑張っているころでしょう。



ある日、営業担当Aさんは、営業管理システムを受注できると思っていた案件を失注してしまいました。

3か月前に提案した案件が失注。


その案件は・・・

情報システム部の担当者が社長から営業管理システムを導入しろと言われ検討していた案件。

社長が、

「うちの営業はマネジメントがなっていない。上司が部下の指導をできていないから失注が多いんだ。

日報もちゃんと作らせていないし、作っても上司がチェックしていない。

予算をとっていいから、部下の商談や案件の状況を上司が把握できるよう営業管理システムを導入しろ」

と言っていたそうです。


そして、Aさんは情報システム部の担当者と営業部長に提案・・・

価格は他社より安く使い勝手も良いという評価をもらい、提案から会社に戻ってきたときには「社長から指示された案件で、予算もとってもらえるし、提案の評価も良かったので受注できそうです!」

と喜んでいました。


それから、2か月後・・・

なかなか返事が来ないので、情報システム部の担当者に会いに行ったところ、営業現場が反対していて進まないとのことでした。

「今でも忙しいのに、営業管理システムを導入したら余計忙しくなるし、使いきれない」

と言っていたそうです。


そして、Aさんは担当者にお願いして営業現場に直接説明する機会をもらいました。


営業現場に説明・・・

「情報共有の必要性やメリット」

「営業管理システムの機能」

「入力の簡単さや使いやすさ」

「他社の事例」

を一生懸命説明しアピールしました。


その後、1か月が経ち、担当者から・・・

「情報共有が必要ということはわかっているのですが、その前にやらないといけないことが多いので、申し訳ないのですがお断りさせてください」


Aさんが週末の営業会議で報告したところ上司は、

「営業現場にまで説明してダメだったならしょうがない」



Aさんは、なぜ失注してしまったのでしょうか?

本当に、上司が言うようにしょうがなかったのでしょうか?

社長からの指示で予算もとってもらえる案件を・・・


Aさんのどこに問題があったのか考えてみてください。



その後、失注の理由や原因を聞きに行ったところ営業現場からこのような話が出ていたそうです。


「情報共有や上司の指導が重要なのはわかるけど、今期は日報や情報共有よりも顧客訪問の件数を重視して増やそうとしている」

「昨年、あまり訪問しなかったために顧客との関係が作れず、競合他社にとられてしまった既存顧客が数社あった」

「元々、技術者出身の営業が多いから積極的に顧客訪問しないし、関係も作れない人が多い」

「そんな状態で営業管理システムを導入して事務作業が増えたら益々顧客訪問しなくなる」



答え・・・


提案の2か月後に情報システム部の担当者に会いに行ったときに、営業現場が反対している原因を把握できなかったところ。


もし営業現場が反対している原因を把握していたら、

営業現場への説明で「情報共有の必要性やメリット」「入力の簡単さや使いやすさ」

ではなく、

「PC以外にモバイルで商談情報を入力することで、帰社後の事務作業が楽になる」

「事務作業が楽になることで、訪問件数を増やせる」

「その結果、営業管理システムで上司と情報を共有し指導を受けながら、訪問件数を増やし顧客との関係を強化できる」

と説得していたかもしれない・・・



現在、多くの会社で上司が「原因や理由を聞くように」という指導をしています。


「なぜ、予算をとれないのか?」

「なぜ、決裁者が承認してくれないのか?」

「なぜ、・・・」


Aさんの上司も「原因を聞いてくるように」という指導はしていました。

それなのに、なぜ聞いてこなかったのでしょうか?



Aさんの場合


提案の検討状況

「営業現場が反対している」


その原因(理由)

「今でも忙しいのに、営業管理システムを導入したら余計忙しくなるし、使いきれない」


ととらえていました。

だから、「入力の簡単さや使いやすさ」をアピールしたのです。



しかし、以下のようにとらえていたらどうだったでしょう?


提案の評価

「営業現場が反対している」


提案の検討状況(=評価の理由)

「今でも忙しいのに、営業管理システムを導入したら余計忙しくなるし、使いきれない」


その原因

「情報共有や上司の指導も重要なのはわかるけど、今期は日報や情報共有よりも顧客訪問の件数を重視して増やそうとしている」


その背景

「昨年、あまり訪問頻度が低く顧客との関係が作れなくて競合にとられてしまった既存顧客が数社あった」

「元々、技術者出身の営業が多いから積極的に顧客訪問しないし、関係も作れていない人が多い」


とすると前述したとおり

「PC以外にモバイルで商談情報を入力することで、帰社後の事務作業が楽になる」

「事務作業が楽になることで、訪問件数を増やせる」

「その結果、営業管理システムで上司と情報を共有し指導を受けながら、訪問件数を増やし顧客との関係を強化できる」

と説得していたかもしれない・・・



Aさんは、検討状況(=評価の理由)を原因ととらえ、原因を把握していたつもりになっていたのです。

そのため、提案の評価の理由である検討状況に対策を考えアピールしたのです。



本当の原因は、評価の理由である検討状況ではありません。

検討状況の原因であり、その背景です。


そして、予算や決裁者、競合などクロージングの障壁への対策を考えるときは、検討状況の原因とその背景から考えなければなりません。


クロージングの対策は、商品や提案に対する評価や検討状況(=評価の理由)からではなく、検討状況の原因と背景から考えるのです。


「予算をとれない」という商品や提案の評価に対して、

「今期は業績が悪いから予算をとれない」という検討状況を原因として判断しているケースが多く見受けられます。


「今期は業績が悪いから予算をとれない」は評価の理由であり、検討状況です。

「今期は業績が悪いから予算をとれない」で終えずもう一歩踏み込み、その原因や背景を考え、把握しましょう。


すると、

「○○には予算をとれないが、△△の内容やテーマであれば予算をとりやすい」

「A事業部でなく、B事業部に紹介したら予算をとってもらえるかもしれな」

など様々な対策を考えることができるでしょう。



そのためには、「なぜ、なぜ、・・・」を繰り返すことが大切です。



(参考)「理由」と「原因」の違い


「理由」=物事がそうなった、また物事をそのように判断した根拠。

「営業管理システムに反対」と言っている根拠


「原因」=ある物事や、ある状態・変化を引き起こすもとになること。また、その事柄。

「今でも忙しいのに、営業管理システムを導入したら余計忙しくなるし、使いきれない」という状態を引き起こすもとになること





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