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クロージング力の強化③

自社を攻略する方法ではなく顧客を攻略する方法を考える

2020年2月15日

期末が近づき受注を獲得しようと頑張っている人が多い時期でしょう。


しかし・・・

予算をとってもらえない。

決裁者が理解してくれないので案件が進まない。

お客さんが調整に時間がかかっていて、来期になってしまいそう。



ある会社の営業部長Cさんから相談を受けました。

「うちの会社の営業は、案件はとれるんだけど、クロージングが弱い」

「どうしたらクロージング力を強化できるのでしょうか?」



その会社の営業担当者Aさんが広告会社〇〇社への提案を終えて上司に相談していました。


Aさん

「先方の予算に合わせて定価の120万円を100万円に値引きして提案したのですが、もう少し価格を下げないと難しそうです」


上司Bさん

「なんで?理由を聞いた?」


Aさん

「他の検討事項で思ったより費用がかかり、そっちに予算をまわさないといけなくなったらしくて」


Bさん

「すでに値引きして出した価格じゃないか」

「どのくらい下げれば買ってくれるの?」


Aさん

「お客さんは、あと10万円ぐらい下げないと難しいと言っています」


Bさん

「10万円下げたら買ってくれるの?」

「しょうがないな、部長と商品企画部に掛け合ってみるよ」



そして、上司のBさんは営業部長Cさんに相談


Bさん

「〇〇社の件ですが、この案件が決まると今期の売上予算を達成できるので何とか取りたいんですけど、価格をあと10万円下げて90万円にしないと難しいようなんです」

「なんとかあと10万円の値引きをお願いできませんか?」


営業部長Cさん

「なんで?100万円なら大丈夫って言ってたじゃないか」


Bさん

「〇〇社の状況が変わって他に予算をまわさなくちゃいけなくなったみたいで」


Cさん

「しょうがないな、粗利が下がるから俺が商品企画部を説得しておくよ」

「90万円で再度提案して受注するようにAさんに伝えておいてくれ」



そして、〇〇社から90万円で受注を獲得し、今期の売上目標を達成しました。



しかし・・・


「どうしたらクロージング力を強化できるのでしょうか」

と営業部長Cさんは悩んでいましたが、はたしてこの会社はクロージング力を強化できるでしょうか?


答え・・・「できません」



そもそもクロージング力とはどのような力なのか?


営業活動におけるクロージング=受注の獲得は、顧客が発注を決めること。

つまり、クロージングとは顧客に発注を決めさせること(購入を判断させること)。


顧客は様々な要因に影響され調整しながら購入を判断します。

課題や効果に対する理解、決裁者や関係者の意向、予算や時期・・・


とするとクロージング力とは、顧客を説得し、様々な要因に対し調整するよう促し、顧客に購入を判断させる力です。



では、AさんやBさん、Cさんは、誰を説得し、調整しているのでしょうか?

みなさんも一緒に考えてみてください。



提案の前に〇〇社から「予算は100万円」と聞いて、100万円に値引きして提案。

そして、提案時に「10万円下げないと難しい」と言われて、90万円に値引きして再度提案。


その反面、

120万円という定価に対し社内を調整して100万円に値引き。

そして、

Aさんは、上司のBさんを説得して値引きできるよう調整しようとし、

Bさんは、営業部長Cさんと商品企画部を説得し調整しようとし、

Cさんは、商品企画部を説得し調整しようとしています。


つまり、AさんもBさんもCさんも顧客を説得し調整を促そうという考えや行動をまったくせず、すべて自分の会社を説得し調整しよう考え行動しています。



クロージング活動の対象は、自分の会社ではありません。顧客です。


クロージングにおける営業の役割は、自分の会社を説得し調整するという「自社攻略」ではなく、顧客に対して説得し、調整を促し、購入を判断させるという「顧客攻略」です。


・顧客から予算を聞いて値引きする

・顧客担当者が決裁者や関係者を説得してくれるのをただ待つ

・自分の会社の商品を説明し顧客に選んでもらうのを待つ

というのであればクロージング力は必要ありません。商品力や運で受注を獲得するということです。



顧客を説得し、調整を促し、顧客に購入を判断させるというクロージング力は、顧客を説得しようとし、調整を促そうとし、購入を判断させようとするから身につくのです。



このクロージング力を強化するために必要なことが3つあります。


①.あらかじめ顧客を知る(把握し、想定する)

②.策を考える(説得する方法、調整を促す方法)

③.実行方法を考える(策を実行する方法)


①.あらかじめ顧客を知る


「他の検討事項で思ったより費用がかかり、そっちに予算をまわさないといけなくなった」

と顧客に言われてからでは遅いのです。あらかじめ顧客を把握し想定しておけば、事前に対策を考え、手を打つことができるのです。


②.策を考える


「他の検討事項で思ったより費用はかかるけど、100万円の予算を確保しよう」「100万円の予算はさらに他の予算を削り確保しよう」

と説得したり、調整を促すためには、そのノウハウが必要です。

予算を確保させるノウハウ、決裁者や関係者を説得するノウハウ、競合と比較し選ばせるノウハウ・・・、なんのノウハウもなくできることは、聞いてくる、待つ、お願いするだけです。


③.実行方法を考える


「100万円の予算はさらに他の予算を削り確保しよう」

と調整を促すためには、②で考えた説得する方法、調整を促す方法に対し、どのような情報を使い、どのように説明するべきか、どのような資料やツールが必要か、など実行する方法を考えなければなりません。

「お客さんは経営課題に書いてある×××に注力しているから、×××に関するメリットを理解させて予算を確保させよう」

と上司に相談しながら策を考えても、説明の仕方や資料で失敗して、説得できないというケースが多く見受けられます。



「商品が良ければ買ってくれる」という時代であればよいのですが、今日の営業はそう簡単ではありません。

顧客の戦略や課題も複雑で変化し、計画や予算も様々な検討事項を考慮しながら、様々な人(決裁者や関係者)が関わり判断する。そして競争も激しく単純な商品の差(強み)だけで勝てるわけでもありません。


そのため、自分の会社でなく顧客を攻略するという考え方と顧客を「知る」「策を考える」「実行方法を考える」という3つの強化が必要です。



「営業は、社内営業が大切」という言葉をよく聞きます。

たしかに売上を上げるために社内営業も必要ですが、その前に顧客を説得し調整を促そうとしなければなりません。営業の仕事の本分は自社攻略ではなく、顧客攻略です。


顧客を攻略しようとする努力の結果がクロージング力です。自社を攻略しようとしてもクロージング力は強化できません。

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