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営業強化の問題点③

顧客視点のビジネスではトップと現場が一緒に営業強化を考え推進する

2022年10月13日

営業は顧客接点を担う仕事・・・

営業が弱いと変化する顧客の情報が会社の中に入ってこない。

変化する顧客の情報が会社の中に入ってこないと商品や技術が顧客の変化についていけない。


世の中(市場や顧客)の変化が早い今日、顧客視点のビジネスでは顧客接点を担う営業の役割は重要です。

しかし、なかなか営業強化が進まない。



システム開発会社セントカンパニーの経営会議で・・・


社長

「なんで新規マーケットの案件が増えないんだ」

「中期計画でも言っているけど既存事業だけじゃだめなんだ。新しいマーケットに進出しないとじり貧になる」

「営業はどうなっているんだ?」


営業役員

「昨年からソリューション営業部を作って提案を進めているんですが、今期の売上のための既存顧客対応で手いっぱいで・・・」


社長

「ソリューション営業部まで作ったのに案件が増えないと意味ないだろう」

「ちゃんと提案してるのか?」


営業役員

「ソリューション営業部のマネージャーAさんに部下に指導するように指示して進めているんですが、A自身も売上を上げるために営業していることが多くて」


社長

「Aさんは、自分で営業していると指導できないのか?」


営業役員

「ほとんど外出で部下の指導ができていないようです」


社長

「そうしたら外出先でも指導できるように、情報共有できる環境を整備しないと」

「予算をとって営業管理システムの導入を検討しなさい」


営業役員

「わかりました」

「営業企画部長、営業管理システムの導入を進めてくれますか?」


営業企画部長

「はい、営業企画部で営業管理システムを探してみます」


そして、営業企画部が営業の進捗や商談議事録を共有できる営業管理システムを探して導入しました。



翌年の経営会議・・・


社長

「なんで新規マーケットの案件が増えないんだ」

「中期計画でも言っているけど既存事業だけじゃだめなんだ。新しいマーケットに進出しないとじり貧になる」

「営業はどうなっているんだ?」


営業役員

「営業管理システムを導入してマネージャーのAさんを中心に進めているんですが・・・」

「Aさん、どうなってる?」


Aさん

「指導してるんですけど、うちの営業は引き合い対応中心にやってきたので提案力が弱いんです」

「それに、昨年は売上目標が厳しかったから既存顧客の営業に注力せざるを得なくて」


社長

「いつになったら新規マーケットの拡大が進むんだ」


営業役員

「Aさん、今年は新規マーケットの営業に注力できそうか?」


Aさん

「今期は売上目標に対して見込み案件が多いので大丈夫だと思います」


営業役員

「そうしたら、営業企画部と連携して提案力の教育を進めてください」


Aさん

「わかりました」



そして、翌々年の経営会議・・・


社長

「なんで新規マーケットの案件が増えないんだ」

・・・・・



なぜ、セントカンパニーは新規マーケットの案件が増えないのでしょうか?

経営会議の会話からセントカンパニーの問題点を考えてみてください。



営業という仕事は様々なことが絡み合って影響します。


提案活動は、

営業担当者のスキルだけじゃなく、部長や課長個々の考え方や意識、目標や他のミッションも絡み合って影響。


新規マーケットの営業は、

売上目標だけじゃなく、体質や個々のスキル、企画部や技術部の協力、組織の力関係も絡み合って影響。


営業の指導は、

情報共有だけでなく、環境や業務量、営業担当者の体質やモチベーションも絡み合って影響。



セントカンパニーは、営業管理システムを導入しマネージャーAさんの指導を促進、そして翌年には提案力の教育を行い新規マーケットへの営業を進めようとしました。

しかし、営業現場の実態は・・・



営業現場の実態①


新規マーケットへの営業活動をスタート・・・


営業担当者

「新規マーケットのお客さんに訪問したけどニーズがないですよ」


マネージャーAさん

「何件、訪問したんだ?」


営業担当者

「3件訪問しましたけどすべてニーズがなかったです」


マネージャーAさん

「あきらめるのは早いだろう。もっと訪問しないと」

「それに、今までの引き合い対応から営業を変えないといけないだろう」

「商品紹介ばかりじゃなくて、お客さんの課題を聞いてこないと」


営業担当者

「聞いてるんですけど、お客さんに課題がないんですよ」



営業現場の実態②


営業担当者ががんばって新規マーケットの案件を獲得してきました。

ところが・・・


提案について技術部に相談すると技術部長は

「うちはそういう案件をやったことがないから難しい」


営業担当者

「でも、会社として新規マーケットを進めないといけないじゃないですか」

「新しいことにチャレンジしないと新規マーケットの拡大は進まないですよ」


技術部長

「経験がないからトラブったときのリスクを考えると対応できない」



営業現場の実態③


営業会議で・・・


営業部長

「このままじゃ今期の目標が達成できないから既存顧客の営業に注力しないと」


マネージャーAさん

「でも、うちの会社として新規マーケットの拡大を進めないといけないですよね」


営業部長

「そもそも、毎年新規マーケットの拡大って言ってるけど売上が上がらないじゃないか」

「今期の売上を優先しないといけないだろう」



営業管理システムを導入して情報共有を促進しただけで提案が増えるでしょうか?

提案力の教育をしただけで新規マーケットの拡大は進むでしょうか?

経営会議で新規マーケットの拡大を進めろと言っても進められるでしょうか?



様々なことに影響される営業強化は下のすべてを考えながら進めなければなりません。



「営業強化の要件」


直接的に強化・改善したいこと

・営業戦略や計画

・営業業プロセスや営業のやり方

・営業スキル

・営業体制や人数

・販促施策との連携や営業ツール

・情報共有や指導方法

・個人の体質やモチベーション


直接的に強化・改善したいことに影響すること

・会社の考え方(方針)、本部長や部長、様々な人の考え方

・会社の中での営業の役割や位置づけ

・会社の体質や視点

・業務環境や業務量

・企画や技術など他部門の理解や協力

・短期的な視点(今期の売上目標)と長期的な視点のバランス



経験に依存してきた営業はひとり一人の考え方が異なるケースが多い。

営業現場が一生懸命に進めようとしても、本部長や部長の考え方が異なれば進められません。


体質とは会社の中の長い間の経験や環境によって作り上げられるもの。

いきなり営業部の中だけで変えろといっても変えられません。


顧客のニーズに合わせた商品や技術の提案は企画部や技術部との協力が必要。

営業部の中だけで考えて進められるものではありません。


そして、直接的に強化・改善したい提案も・・・

営業担当者ひとり一人のアプローチ力、顧客の課題や提案を考える力、課題を聞き出す力、提案書を作成する力、プレゼンテーション力など様々なことが必要。

そして、情報共有や上司の指導、体質やモチベーション、体制や人数も影響します。

・・・様々なことを改善しなければなりません。


一朝一夕、簡単にできることではなく時間と労力のかかることです。

そのため、今期の売上目標ばかりでなく、来年や再来年を踏まえて長期的に考えなければならないことです。



営業部だけではなく、会社の体質や視点の改善

営業部の中のことだけではなく、企画部や技術部の協力の促進

営業現場だけではなく、本部長や部長の考え方の改善

営業部のミッションである今期の売上と長期的な視点での活動の調整


これらを改善、調整、促進できるのは誰でしょう?


営業マネージャーや営業現場だけでは無理です。

組織として横から支援する営業企画部や人事部だけでは無理です。


会社全体について考えられ、調整できる人

会社の方針や戦略から関係する人すべての考え方を統一できる人

今期の売上だけでなく長期的な視点で考え、調整できる人


そして、営業現場の実態をわかる人は誰でしょう?


実際に営業活動に携わっていない社長や営業役員ではわかりません。


営業活動を行った人、または営業現場で部下を指導した人

技術部や企画部と獲得した案件について調整してみた人

他の部長、課長と計画やミッションについて調整してみた人



属人的な営業から組織的な営業への変革

商品案内営業や御用聞き営業から課題解決型営業への変革

場当たり的な営業から戦略営業への変革

既存事業中心の営業から新規マーケットを拡大する営業への変革


営業現場では様々な変革が求められています。

しかし、多くの会社では、方針だけ示してあとは営業現場に任せて進めています。

そして、営業現場では支障を感じながらも自分たちのできる範囲で考えて進めています。

その結果、様々な障壁により停滞してしまう・・・。



トップは、方針を示して任せるだけでなく、現場と一緒に障壁について考えなければなりません。

営業現場は、自分たちのできる範囲で考え進めるだけでなく、トップに障壁を理解させなければなりません。


営業強化の障壁について現場と一緒に考えるのもトップの仕事です。

営業現場の実態や障壁についてトップに理解させるのも営業現場の仕事です。



顧客が変化している今日では、商品や技術を顧客の変化に合わせていかなければなりません。

顧客の変化に対応する顧客視点のビジネスにとって、顧客と直接かかわり、顧客の変化を肌身で感じることができる営業は重要です。


この顧客視点のビジネスを実現するために重要な営業強化は、トップが方針を示し営業現場に任せるだけでなく、トップと営業現場が一緒に考え進めましょう。


営業強化は、会社として顧客視点のビジネスを強化することになるのです。

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