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リーダーシップの5つの要件「ビジョンの明確化」

営業は顧客と自分の会社をコントロールしビジネス実現へ導く仕事

2022年6月15日

今日の営業では・・・

自分の会社の商品や技術力も変わっていく。

お客さんの状況や要望も変わっていく。


そのため・・・

自分の会社の商品や技術力に合わせて、お客さんを説得、調整しないといけない。

お客さんの要望に合わせて、社内を説得、調整しないといけない。



WEB会議システムを担当している営業Aさんが、セント商事のBさんと商談していました。



セント商事Bさん

「営業社員向けにWEB会議システムの導入を検討しているんです」

「うちの営業社員は20名いるんですけど、営業会議に使いたくて」


営業Aさん

「そうなんですか、営業会議用に検討しているんですね」


Bさん

「それに、販売代理店向けの商品勉強会もWEBで対応しようと思っているのでウェビナーと録画配信機能も必要なんです」


Aさん

「そうすると、20名分のWEB会議にウェビナーと録画配信機能ですね」


Bさん

「ただ、期初に予算をとっていなかったので200万円しかないんです」


Aさん

「そうなんですか」


Bさん

「それに、営業管理システムを共有しながら営業会議を行っているので、営業管理システムとWEB会議をつなげたいんです」


Aさん

「そうすると、WEB会議システムを導入するだけじゃなくて、連携するためのシステム開発も必要になりますね」


Bさん

「あと、来期にはグループウェアも刷新して、営業社員だけでなく全社員のテレワーク環境を整備する予定なんです」


Aさん

「そうなんですか、WEB会議システムの費用が1名年間10万円だから20名で年間200万円かかるんです」

「それに、ウェビナーと録画配信機能をつけると1名年間15万円になるので、20名で300万円、

あと、営業管理システムとの連携の開発費用もかかるので、ずいぶん高くなってしまうと思うんです」


Bさん

「そうなんですか、今期は予算が厳しくて」


Aさん

「会社に戻って相談してみます」



Aさんは、会社に戻って上司と技術部長に相談・・・


Aさん

「セント商事がWEB会議システムを検討しているんですが、

20名で利用する予定で、ウェビナーと録画配信機能、それに営業管理システムとの連携の開発も必要になります」


上司

「それで、予算はどのくらいなの?」


Aさん

「期初に予算をとっていなかったので200万円しかないみたいです」


技術部長

「それじゃ無理だろう」

「連携の開発どころか、ウェビナーと録画配信機能もつけられないよ」


Aさん

「でも、うちの会社で来期に営業管理システムをリリースするんですよね」

「セント商事にWEB会議を導入できれば、来期に提案できると思うんですが」


技術部長

「そりゃそうだけど、開発だけで150万円はかかるぞ。200万円じゃ完全に赤字だよ」

「それに、営業管理システムとの連携の開発はやったことがない」

「今期中に営業管理システムを完成して、WEB会議システムとの連携は来期に考える予定だから、今期は無理だよ」


上司

「予算がないなら、WEB会議の導入だけで検討できないか聞いてみろよ」

「うちが来期に営業管理システムをリリースすることを伝えて、来期にはWEB会議システムと営業管理システムの連携を提案できるって言って」



そして、Aさんはセント商事のBさんに

「今期はご予算的に難しいと思うので、まずはWEB会議システムの導入だけで検討できませんか?」


Bさん

「営業管理システムとの連携がないと検討できないですよ。営業部長が必要だって言っているので」

「御社では難しそうなので、他の会社に相談してみます」



結局、Aさんは失注し、来期の全社員200名のWEB会議システム3,000万円とグループウェアの刷新2,000万円の案件もすべて競合他社にとられてしまいました。



Aさんはどうすればよかったのでしょうか?


AさんとBさん、Aさんと上司、技術部長の会話から考えてみてください。



Aさんが失注したセント商事のWEB会議システムは、競合他社の営業Cさんが受注していました。


(Cさんの会社の状況は、価格、技術力、営業管理システム事業の立ち上げなどAさんの会社と同じ状況としてCさんの会話を読んでください)


Cさんはセント商事のBさんとの商談後、会社に戻って上司と技術部長に相談・・・


Cさん

「セント商事がWEB会議システムの導入を検討しているんです」


上司

「そうなんだ、検討内容は?」


Cさん

「20名の営業社員に導入、そして営業管理システムとの連携で開発が必要になると思います」

「あと、ウェビナーと録画配信機能も必要みたいです」

「それに、営業会議で使うらしいんですが、WEB会議だと現在の情報管理方法では対応できなくなるから、来期以降に営業管理システム見直し案件が出てくると思うんです」


技術部長

「なるほど、そうかもしれない」


Cさん

「今回のWEB会議システムを導入できれば、来期にリリースするうちの営業管理システムを提案できると思うんです」


上司

「たしかに、チャンスではあるな」


Cさん

「セント商事の場合は、来期に見直しを始めるので、検討段階から入り込んで一緒に考える流れを作れると思うんです」

「そうすれば、うちの会社に営業系システムのノウハウを蓄積できますよ」

「セント商事で営業系システムのノウハウを蓄積できれば、他の会社への提案も促進できると思うんです」


技術部長

「それに、来期から業界別に営業管理システムの商品ラインナップを整備するからノウハウの蓄積は商品開発にも必要だよ」


Cさん

「この間、社長も言ってましたけど、営業管理システムを含めたCRM領域はこれから市場が拡大すると思うんです」

「セント商事の案件は、CRM領域の事業を拡大するための大きなきっかけになりますよ」


上司

「ところで、セント商事は予算どのくらいあるの?」


Cさん

「今のところ200万円しかないようです」


上司

「200万円じゃ無理だな」

「来期に営業管理システムの見直しを一緒にやらせてもらえるなら多少値引きしてもいいけど、どうにかならないの?」


技術部長

「技術部としては、実績がないから難しいけど、セント商事がOKなら何とかするよ」


Cさん

「わかりました」



そして、Cさんはセント商事のBさんと商談。


Cさん

「事務所で働くことに慣れている社員のテレワーク環境を整備するって大変ですよね」

「うちもテレワークを推進してますけど、出社しないと仕事ができないって言う社員が多くて、システムの見直しはずいぶんやりましたよ」


Bさん

「やっぱりそうですか」

「うちの社員は特にアナログだから大丈夫かな・・・」


Cさん

「だけど、御社では海外進出も進めているようですし、拠点や部門の業務に合った遠隔での業務環境は必要ですよね」

「各現場で遠隔業務を推進できれば、拠点を増やさずに海外進出を進めやすくなりますからね」


Bさん

「そうなんです、常務の桜井もグローバル展開を進めるためには遠隔で仕事ができる環境は必須だって言ってました」


Cさん

「だとしたら、今期は来期に整備するためのトライアンドエラーの1年にした方がいいんじゃないですか?」


Bさん

「トライアンドエラーの1年って?」


Cさん

「はじめての導入になるので、現場では多少混乱したり不満が出てきたりすると思うんですよね」

「それに、会議での使い勝手や営業管理システムとの連携方法、お客さんとの打ち合わせでの使い方や他の部とのミーティング方法など、後から見直さないといけないことが出てくると思うんです」


Bさん

「そうですよね」


Cさん

「小規模にスタートして、検証しながら進めた方が良いのではと思いまして」

「おそらく営業管理システムとの連携は必要だと思うので、機能を絞って少人数でスタートして、検証しながら運用方法をかためて、そのあとに営業社員20名に導入した方が良いのでは」



その結果、Cさんは来期に営業管理システムとの本格的な連携と連携にともなう営業管理システムの見直しを来期に行うという前提で受注しました。


今期の受注内容

・営業社員10名へのWEB会議システム=100万円

・営業管理システムとの連携開発=150万円

→合計250万円を20万円値引きして230万円で受注



AさんとCさんの違いは?

セント商事Bさんとの会話、上司や技術部長との会話を比べてみてください。


Aさんの場合

お客さん(セント商事)の要望と予算や価格ばかりの会話。


Cさんの場合

自分の会社やお客さんのビジョンについて会話をしてから要望と予算や価格の話。


上司と技術部長に対し、

「来期以降に営業管理システム見直し案件が出てくる」

「営業系システムのノウハウを蓄積できれば、他の会社への提案も促進できる」

「業界別に営業管理システムの商品ラインナップを整備するからノウハウの蓄積は商品開発にも必要」

そして、

「セント商事の案件は、CRM領域の事業を拡大するための大きなきっかけになる」


また、お客さんに対し、

「海外進出も進めているようですし、拠点や部門の業務に合った遠隔での業務環境は必要」

「各現場で遠隔業務を推進できれば、拠点を増やさずに海外進出を進めやすくなる」

と会話してから進め方の提案をしています。



それぞれの要望や条件は・・・


お客さん

・営業社員20名に営業会議で使わせたい

・販売代理店向けの勉強会に使うためウェビナーと録画配信機能が必要

・営業管理システムとの連携のため開発が必要

・今期の予算は200万円しかない


自分の会社

・WEB会議システム、ウェビナーと録画配信機能が1名年間15万円、20名で300万円

・営業管理システムとの連携のため開発で150万円

・合計で、450万円

・営業系システムの実績がなく今期の開発は難しい


それぞれの要望や条件に対し調整・・・


お客さんを調整

・今期は10名に導入し、営業社員20名の導入は来期に調整

・ウェビナーと録画配信機能を今期でなく来期に調整

・200万円の予算に対し230万円を捻出するよう調整


自分の会社を調整

・250万円の価格を20万円値引きし230万円に調整

・実績がなく難しいと言っている技術部を調整


このように双方を調整しセント商事の受注を獲得したのです。


双方を調整し受注を獲得できた理由は、ビジョンの会話です。

ビジョンの会話により双方を前向きに進めたいと動機付けできたことです。

「CRM領域の事業を拡大」

「海外進出も進めているようですし、拠点や部門の業務に合った遠隔での業務環境は必要」


その結果・・・

お客さんと上司、技術部長を説得し230万円で受注。


そして、来期・・・

全社員200名のWEB会議システム3,000万円とグループウェアの刷新2,000万円の案件を受注。



はじめからお客さんと自分の会社の要望や条件がぴったりあっていることはほとんどありません。

・商品の機能や技術力とお客さんの要望

・商品の価格とお客さんの予算

・納期

・ ・・・・・


今日の営業では、この異なる要望や条件の間に立って、双方をコントロールしお互いを合意に導く力が必要です。


お客さんの担当者や決裁者、現場、自分の会社の上司や技術部、企画部・・・それぞれの立場で異なる見解を持つ人々をコントロールしてまとめあげ導く力であるリーダーシップ。


このリーダーシップは下の5つの要件から成り立ちます。

・ビジョンの明確化

・目的と目標の明確化

・関係する名たちに関する理解

・関係する名たちの調整

・関係する名たちの行動促進


この5つの要件のうち、ビジョンの明確化によって、異なる見解を持つ人々を同じ方向に向かって前向きにするという動機付けができるのです。



商品の機能とお客さんの要望、価格と予算、納期・・・

お客さんや自分の会社を説得するときに、直接的に価格と予算という要望や条件ばかり話し理解してもらえず苦労している人が多く見受けられます。


お客さんの担当者、決裁者、現場、自分の会社の上司、技術、企画、経営者・・・

それぞれ立場が違うため要望や条件が異なるのは当たり前です。


異なる要望や条件を調整し受注を獲得するためには、ビジョンについて会話し共有しましょう。


そのためには、異なる要望や条件、案件のことばかりでなく、自分の会社にとってのビジョン、お客さんにとってのビジョンを考えましょう。

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