顧客満足度を上げるMSEC
顧客との関係のうえで成り立つ営業では期待以上が大切
2019年5月15日
多くの会社で顧客満足度調査(CS調査)を実施していますが、その回答を見てみると・・・
・提案が少ない
・情報提供が少ない
・要求には応えてくれるがアドバイスがない
営業部にフィードバックしても、提案しない、情報提供しない、要求に応えようとするばかり・・・顧客が求めているのになぜ?
顧客の営業企画担当者から問い合わせが入り、営業担当Aさんが訪問しました。
WEB会議の導入を検討しているとのこと。
・営業部で使いたい
・今期の方針として、営業の組織力強化、新商品の提案を促進
・営業担当者には、外出時にノートPCを持たせている
Aさん
「営業部でWEB会議の導入を検討されているとのことですが、どのような目的に利用されるのですか?」
営業企画担当者
「直行直帰や出張が多いので外出先から営業会議に参加できるように。それと、新商品を提案させるために上司や商品企画部の指導が必要なので」
「先日、営業部と商品企画部のミーティングでWEB会議を導入しようということになって、私の方で探しているんです」
Aさん
「そうなんですか、直行直帰や出張が多いと会議や指導がやりにくいですよね」
営業企画担当者
「一昨年に拠点を集約してから直行直帰や出張が増 えて、営業会議に参加できない人もいるみたいで」
「それに、新商品の提案が進まないんですよ。提案には商品の機能や性能の知識も必要なのに、商品の種類が多いからみんな覚えられないみたいで」
Aさん
「WEB会議で使う資料はどのようなものが多いんですか?」
営業企画担当者
「営業会議では、Excelの営業進捗表と商談履歴、新商品の提案指導では、PDFの商品カタログ、それと機能や性能をまとめた商品マニュアルを使っています」
Aさん
「商品の種類が多いってどのくらいあるんですか?」
営業企画担当者
「現在、売っているものだけで100種類以上、それに、納品して廃版になっているものもあるので150種類ぐらいはあるんじゃないかな」
Aさん
「そんなにあるんですか、それじゃ営業の人も覚えきれないですよね」
営業企画担当者
「そうなんです。私も昨年まで商品企画部にいたんですが、営業からの問い合わせが多くて、いつも資料を探してメールで送り電話で指導していたんです」
「うちの業界は商品のライフサイクルが短いので、もっと新商品の企画に注力しないといけないのに」
Aさん
「そうなんですか、商品企画部の人も大変です ね」
「すると、条件はノートPCでExcelやPDFファイルを共有しながら会議ができるということですね」
「利用人数は営業部、商品企画部あわせて○○人ぐらいですか?」
営業企画担当者
「そう、○○人」
「あとは、自宅や出張時のホテル以外に喫茶店で使うことも考えてチャット機能も必要」
「それと期初に予算をとっていなかったので、100万円以内で探していて」
Aさん
「わかりました。当社のWEB会議は・・・(商品説明)」
Aさん
「それと、当社のWEB会議はノートPC以外にタブレットにも対応していて・・・」
営業企画担当者
「それは、必要ありません。ノートPCを配布しているので」
Aさん
「他に何か条件やご要望はありますか?」
営業企画担当者
「来月には導入したいと言われているのでなるべく早く提案してください」
「それに、評価制度の見直しもあって忙しいので早めに決めたいと思っています」
会社に戻って・・・
上司
「150種類もあるんだったら、マニュアルをWEBで管理して簡単に検索できるシステムも必要なんじゃない?」
Aさん
「そうかもしれませんが、お客さんの要求に入っていないし」
上司
「その話はした?」
「同業他社の事例もあるし、ずいぶん負担が減って評価されているよ」
Aさん
「いいえ、話さない方がよいと思って」
「予算が100万円しかないのでオーバーしてしまうし、営業部と商品企画部のミーティングで決まっているようなので」
上司
「言うだけ言ってみればいいじゃん」
「お客さんのためになることだから情報提供ぐらいした方がいいんじゃない?」
Aさん
「評価制度の見直しもあって忙しいみたいだし、それに、提案を受け入れてもらえるタイプじゃないので」
言うだけ言ってみればいいのに、なぜ言わない?
顧客満足度を考える時に以下の3つの基準が必要です。
顧客の期待(要求)に対して・・・「以上」「同等」「以下」
「以下」は当然ですが顧客満足度を下げる
「同等」は維持、つまり顧客満足度は上がらない
「以上」は顧客満足度を上げる
つまり、顧客満足度を上げるためには、顧客の期待(要求)以上の提案や情報提供、意見やアドバイスが必要なのです。
しかし、ほとんどの営業が「同等」を目指している・・・
顧客の要求以上のことを考えるのではなく、顧客の要求を聞き、要求に対して忠実に応えようとする営業。
Aさんも、顧客の要求である「ノートPCでExcelやPDFファイルを共有できるWEB会議」「100万円の予算」「早く提案してください」に応えようと「同等」を目指していますが、それ以上のことを考えていない、やろうとしていない・・・
なぜ、「同等(顧客の要求を聞き、要求に対して忠実に応えようとする営業)」を目指すのでしょうか?
理由は3つあります。
1つ目は、要求してもらう意識ばかりで、自ら提案して理解させ売上を上げるという意識が低いこと。
2つ目は、忙しい、余裕がない・・・要求に応えることで精一杯。
3つ目は、余計なことを言うと嫌われる、忙しいのに手を煩わせ ると嫌がられるという意識。
顧客満足度を上げるためには4つの視点から考える必要があります。
※ MSECフレーム(資料ダウンロード)
①.Mission(ミッション)
ミッションに対する課題や悩み
②.Subjectivity(主観)
経験等から派生する個人の主観や見解、考え
③.Environment(環境)
組織内の立ち位置や人間関係、業務状況に対する苦労や忙しさ
④.Character(性格)
意見されるのが嫌い、決めたことをぶり返されるのが嫌い、など個人の好き嫌い
この4つのうち・・・
①と③は、会社・組織の視点から考えること
②と④は、個人の視点から考えること
そして、
①と②は、顧客満足度を上げるために何をしてあげるかを考えるもの(ポジティブファクター)
③と④は、顧客満足度を下げないための方法を考えるもの(ネガティブファクター)
Aさんに対する営業企画担当者の顧客満足 度を考えると・・・
①に対して
ミッションはWEB会議の導入ではなく、営業の組織力強化や新商品の提案を促進するための環境整備です。
すると、「商品企画部が多くの資料の中から該当する商品マニュアルを探して指導する」ということもAさんに要求していない営業企画担当者の課題や悩みです。
②に対して
「もっと新商品の企画に注力しないといけない」というのは、商品企画部を経験した営業企画担当者の個人の見解です。
つまり、営業企画担当者が個人的に課題と思っていること、興味を持つことです。
①②を考えると、WEBで管理して簡単に検索できるシステムの提案や事例などの情報提供は、Aさんにとって要求されていないけれど顧客のこと を考えたら役に立つもの、つまり顧客満足度を上げる(期待以上)ものです。
そして、
③の「100万円の予算」「営業部と商品企画部のミーティングで決まっている」「評価制度の見直しもあって忙しい」という環境。
④のタブレット対応を紹介したときに「必要ありません」と拒絶され感じた「提案を受け入れてもらえるタイプじゃない」という性格。
この③④に対し、提案や事例などの情報提供を、顧客満足度を下げずに行う方法を考えるのです。
・忙しいのであれば資料として渡す、送る。
・すでに決まっているのであれば、今回の検討事項への提案でなく今後の参考として説明する。
余計なことを言うと嫌われる、忙しいのに手を煩わせると嫌がられるという意識になるということは・・・
MSECのEnvironment(環境)、Character(性格)ばかりに目がいきMission(ミッション)とSubjectivity(主観、考え)を考えない。
または、考えてもEnvironment(環境)、Character(性格)を意識して行動できなくなるということです。
顧客満足度を上げるためには大切なことは・・・
Mission(ミッション)とSubjectivity(主観、考え)に対して「何をしてあげたら」期待以上の満足が得られるのかを考えることです。
その後で「何をしてあげたら」に対してEnvironment(環境)とCharacter(性格)を踏まえて方法を考えるのです。
営業は、顧客との関係のうえで成り立つ仕事です。
その顧客との関係を強化、改善するためには要求に応えるという「同等」も大切ですが、「期待以上」により顧客満足度を上げることも大切です。
要求に応えるという「同等」を目指すのではなく、「期待以上」を目指してMission(ミッション)とSubjectivity(主観、考え)に対し「何をしてあげたら」を考えましょう。
人は、自分のために一生懸命に考えて言ってくれたこと、やってくれたことに感謝することはあっても嫌がらないものです。

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