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営業部と技術部の連携

営業は顧客視点、技術は技術視点…それぞれを促進する体制

2021年3月15日

「仕事量が多い、部内の共有ができていない、他の部との連携がうまくいっていない」

現場の問題を改善しようと体制を変更、しかし、うまくいかない・・・


期末が近づき来期の体制について悩んでいる方も多いことでしょう。

今回は、営業部の体制や技術や企画、製造部との連携についてお話ししましょう。



システム開発会社の営業部長Aさんが来期の体制を考えていました。


今期は提案が増えず売上目標を達成できなかった。

何とかしないと・・・


今期の問題を振り返ってみると、

・顧客への技術的な説明や設計、調整を技術部にお願いしているが、技術担当者の残業が問題になっている

・新商品を紹介しているようだが、あまり提案に進んでいない

・営業担当者の仕事は、営業活動以外にトラブル対応、会議、報告書、社内調整など多岐にわたり忙しい


そこで来期の方針として

「負担を減らしながら、商品や技術知識を強化し提案件数を増やす」


具体的には

・顧客への技術的な説明は営業が対応し、設計や調整を技術部が対応

・営業担当者に新商品や技術知識を指導する新商品・技術促進チームを作る

・営業チームにアシスタントをつけて報告書や社内調整を任せ負担を減らす


そして1年後・・・

負担も減ったし、新商品や技術知識もついたのに提案が増えない、売上が上がらない。


今度は、担当顧客が多すぎる、会議が多すぎる・・・

いつになったら提案が増えるのだろう?



なぜ、負担も減ったのに、新商品知識もついたのに、提案が増えないのでしょう?


営業部長Aさんは体制や連携を考える方法を間違えていたのです。


体制や連携を考えるための本質を忘れてしまっている・・・

その本質とは何でしょう?



多くの会社で体制や連携を考えるときに、業務内容や管理方法、能力など現場の問題から考えようとしています。


商品紹介や技術的調整の内容や方法、提案書や見積書の作成や確認方法、個人や組織の能力や仕事量、他部門との調整方法・・・

これらに対し、負担や非効率さ、精度の問題を考えて体制や連携を考えようとしています。



本来、体制や連携は、現場の問題から考えるものではなく、会社が実現したいこととそのフローから考えるものです。


売上拡大、マーケット拡大(会社が実現したいこと)

売上拡大やマーケット拡大に対するビジネスのフロー(どうやって実現するか)

そして・・・

営業部は何をするべきなのか?

技術部は何をするべきなのか?

営業部と技術部はどのように連携するべきなのか?

そして、どのような体制にするべきなのか?



ビジネスのフローは時代とともに大きく変わりました。


高度成長期の大量生産大量消費時代では、多くの顧客が同じような商品を欲しがり、多くの顧客に商品を紹介するという自社・商品中心の視点による活動で成果を上げることができました。


そのため、より多くの商品を作り、より多くの顧客に紹介し、より多くの顧客に売るというフローで進め、体制や連携も自分の会社の商品や業務中心の視点で考えれば良かったのです。


良い商品をたくさん作り、たくさん紹介すれば売れる・・・これを実現する体制と連携。


しかし、今は、顧客によって課題やニーズが異なり、顧客の課題やニーズからビジネスを組み立てないといけない時代です。


前述のシステム開発会社の場合、

①.顧客の戦略や事業を知る

②.顧客の課題やニーズを把握する

③.解決策を考える

④.顧客に解決策を理解させる

⑤.技術的な調整を行う

⑥.価格や条件を調整する

⑦.契約

⑧.受注


この①から⑧のフローは、顧客との面談回数や受注までの期間の差はありますが、システム開発会社でなく、部品や設備を売るビジネスでも、広告や人材派遣などサービスを提供するビジネスでも大きくは変わらないでしょう。



このビジネスフローには、顧客視点と自社(商品や技術)視点の2種類の活動があります。


問題です。

上のビジネスフローの①から⑦は、それぞれ、顧客視点の活動、自社(商品や技術)視点の活動のどちらでしょう?



顧客視点の活動とは、顧客の戦略や事業、課題やメリット、予算や決裁者の視点で行う活動です。


今日の顧客の課題やニーズから組み立てるビジネスは、顧客視点と自社(商品や技術)視点の融合で成り立ちます。


顧客の立場で、顧客の戦略や事業から課題やメリットを考え、計画や組織から予算や決裁者の意向を考える。

そして、商品や技術の立場から、課題やメリットに対し、技術的に何が必要なのか、何を提供できるかを考える。

この2つの融合で成り立つのです。



答えは、

①②が顧客視点中心の活動

⑤は商品・技術視点中心の活動

③④⑥⑦は顧客視点と商品・技術視点の両方の活動



顧客視点と商品や技術視点の融合で成り立つビジネスにおいて、技術や商品企画、製造部が商品や技術視点の活動を担い、営業が顧客視点の活動を担うのです。


会社の中で顧客との接点が最も多い営業が顧客視点の活動を担わなければ、顧客の課題やニーズから組み立てるという今日のビジネスフローは進まないのです。



この顧客視点の活動はけっこう難しい・・・


自分の会社のことは聞いたり見たりして、知っている、または理解できます。

しかし、顧客の中のことである戦略や事業、課題やニーズ、メリット、予算や決裁者は見ることができない・・・

しかも、会社や組織、人によって異なり、見えない考え方や性格まで関係する・・・


片手間でできるものでも、意識するだけで改善できるものでもありません。


日々進歩する商品や技術の専門知識をつけ、対応方法を習得しながら、同時に、様々な顧客の戦略や事業、組織などの知識を身につけ、課題を考える方法を習得することは無理があるのではないでしょうか。



営業は、顧客視点の活動を強化、促進する

技術や企画、製造は、商品・技術視点の活動を強化、促進する

そして、双方を融合(連携)させる


これが体制や連携を考えるための本質です。


営業部長Aさんの場合、

営業は、顧客の戦略や事業、課題やニーズの把握を強化、促進し

技術が、新商品や技術的な対応を強化、促進し、

そして、双方を連携させる

・・・これが体制や連携を考えるための本質。


とするとAさんは、


技術的な説明を営業が担当するのではなく、技術部の体制を強化させるべきだったのでは。


営業担当者に新商品の知識を指導するのではなく、知識が足りなくてもサポートできる体制を考えるべきだったのでは。


新商品の知識よりも、顧客の戦略や事業、組織の知識や情報を収集する力、課題やニーズを把握する力を強化する体制を考えるべきだったのでは。



業務内容や管理方法、能力や仕事量など現場の問題を考えることも必要です。

しかし、体制や連携は、会社の目的を実現するビジネスフローから考えるものです。

ビジネスフローから体制や連携を考えた後に、現場の問題を考えて調整するのです。


ビジネスを促進したい、売上を上げたいのであれば、まずは、営業として顧客視点の活動を強化する方法を考えましょう。

そして、営業の顧客視点の活動を促進する体制と自社(商品・技術)視点の活動を担う技術部との連携を考えましょう。



営業は、顧客の課題やニーズから組み立てるビジネスフローにおいて、最も重要で難しい顧客視点の活動を担っているのです。

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