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支払いサイトの交渉

受注・売上・回収…営業にとって一番大切なものは?

2021年2月15日

※売掛金とは、商品やサービスを提供・納品したあとの未収入金。

商品やサービスを売ったあとでまだ払ってもらっていない金額。払ってもらう権利のある金額。


経営者や営業責任者からの相談で多いことのひとつが支払いサイト(納品してからお金を払ってもらう(回収する)までの期間)や売掛金の回収です。


「うちの営業は売上ばかりで回収や支払いサイトを考えない」



みなさんに問題です。


受注、売上、回収・・・

この3つ中でビジネス(営業)にとって一番大切なものはどれでしょう?



営業担当者に聞いてみると

「営業の仕事は受注や売上を獲得すること、だから受注と売上が大切」

「お金を払ってもらえば遅れても問題ない、だから未回収案件があったら対応すればよい」

「支払いサイトは、顧客が決めるものだから自分が何かできるものではない」


受注や売上ばかりで、回収を気にしていない営業担当者は多い・・・


しかし、

受注とは、売る(商品を納品する)権利です。

売上とは、商品を納品してお金をもらう権利です。

回収とは、お金をもらうことです。


つまり、受注や売上の獲得は、回収の権利(お金をもらう権利)を得たということに過ぎません。


回収できなければ、権利である受注や売上に何の意味もありません。

それ以上に営業活動にかかった費用、原材料などの費用を損したことになります。つまり、みなさんの売上を上げるための仕事は、やらない方が良かったということです。


お金をもらえる(回収できる)から、投資もできるし、みなさんの給料も払えるのです。

売上が上がっても、回収できなければ給料も支払えません。


一番大切なものは、回収です。



少し回収や支払いサイトについて考えてみましょう。



みなさんは中小企業の経営者です。


1月に頑張って800万円の売上を上げました。2月末に払ってもらう予定です。

そして、1月末時点で、1,000万円の現金がありました。


2月に入り・・・

2月15日に給与の支払いが400万円→残600万円

2月25日に家賃や光熱費の支払いが100万円→残500万円

同じく、2月25日に原材料の支払いが300万円→残200万円

2月末に、売上の入金(回収)が800万円→残1,000万円


という予定でしたが、2月末にお客さんが払ってくれません。


お客さんに問い合わせてみると

「1月末に納品された商品に不良品が混じっていた。これじゃお金を払えないよ」


その後、お客さんと交渉し1か月遅れましたが、3月末に払ってもらえることになりました。

すると、営業部長は「話がついてよかったな。今月も頑張って売上を上げよう」


ということで、2月末の現金は200万円。


そして3月・・・

3月15日に400万円の給料・・・しかし、現金は200万円しかない。


みなさんが経営者だったらどうしますか?


2つしか方法はありません。

1つ目は、給料の支払いを1か月遅らせる

2つ目は、お金を借りる・・・金利が発生する


3月末に払ってもらえることになり、営業部長は「話がついてよかった」と言っていますが、入金が遅れるということは会社や社員にとって大きな損害なのです。

自分の給料が1か月遅れるということなのですから。


逆にお金を早く払ってもらえたらどうなるでしょうか?


ちゃんと2月末に払ってもらうことができ、そして、3月末に払ってもらう予定の500万円を交渉して2月末に払ってもらうことができました。


その結果、2月末の現金は、1,000万円+500万円=残1,500万円

3月分の支払いは

給与400万円、家賃や光熱費100万円、原材料の支払い300万円

・・・全部払っても700万円も残っています。


すると・・・

4月に掲載しようと思っていた広告を3月に掲載することができる。

新入社員を1か月早く入社させることができる。


つまり、お金を早く使うことができます。


回収は「資金繰りに影響する」と漠然ととらえている人が多いのですが・・・


回収が遅くなると、必要なお金を払えなくなります、または遅れてしまいます。

みなさんが使っている経費や給料もです。


逆に、回収が早くなると、お金を早く使うことができます。つまり会社の発展や成長に必要な投資を早くできるようになるのです。

これが、キャッシュフロー(お金の流れ)が良くなるということです。


また、売掛金の貸し倒れリスクは、支払いサイトに大きく影響されます。

売掛金の貸し倒れとは、商品を納品しお金を払ってもらう権利が発生しあとに回収できないこと。


商品を納品してから回収までの期間(支払いサイト)が長くなれば、貸し倒れのリスクも大きくなります。

回収までの期間が長くなると、回収するまでにトラブルが発生する可能性が高くなります。

納品した商品に対するクレーム、顧客との認識の不一致によるトラブル、顧客の業績や経営状態の悪化、・・・


回収してしまえば、トラブルによる貸し倒れの可能性(お金をもらえない可能性)はなくなります。


ビジネスにおいて「回収は早く、支払いは遅く」は鉄則です。



もうひとつ問題です。


支払いサイトは誰に合わせて決めるものなのでしょうか?

顧客(買う側)?それとも自分(売る側)?



そもそも支払いサイトとは何をもとに考えて決めるものでしょう?


支払いサイトを決めるということは、商品を納品してから、いつお金を払ってもらうか?を決めることです。

この支払サイトを決める要因は2つあります。


1つ目は、商品やサービスの特性


たとえば、人材派遣サービス・・・

原価は派遣スタッフの給料。月末に締めて翌月の給料日に支払いが発生します。

つまり、1か月以内に給料の支払いが発生。しかも、売上の7割から8割の金額。


例えば・・・

50万円の売上に対し給料は40万円で、2月から取引が開始しました。


支払いサイトが1か月(当月分を翌月末に入金)で、給料が翌月15日の場合

3月15日に40万円(2月分の給料)支払い/マイナス40万円

3月末に50万円(2月分の売掛金)入金/プラス10万円


3月末にはプラスになっています。


しかし、支払いサイトが2か月(翌々月末に入金)の場合

3月

15日に40万円(2月分の給料)支払い/マイナス40万円

月末に入金なし/マイナス40万円

4月

15日に40万円(3月分の給料)支払い/マイナス80万円

月末に50万円(2月分の売掛金)入金/マイナス30万円

5月

15日に40万円(4月分の給料)支払い/マイナス70万円

月末に50万円(3月分の売掛金)入金/マイナス20万円

6月

15日に40万円(5月分の給料)支払い/マイナス60万円

月末に50万円(4月分の売掛金)入金/マイナス10万円

7月

15日に40万円(6月分の給料)支払い/マイナス50万円

月末に50万円(5月分の売掛金)入金/プラスマイナス0万円

8月

15日に40万円(7月分の給料)支払い/マイナス40万円

月末に50万円(6月分の売掛金)入金/プラス10万円


支払いサイトが1か月長くなっただけで、ずっとマイナスが続き、取引をはじめてからプラスマイナスが0円になるまで6か月、プラスになるまで7か月もかかっています。


ちゃんと利益が出ているのに、入金と支払いの差でお金を使えるようになるまで7か月も・・・


人材派遣の場合、サービスの特性上、支払いサイトを短くしなければいけません。


人材派遣、広告、一定期間構築して納品するシステム開発、毎月納品する部品や資材・・・これら商品やサービスの特性によりキャッシュフローが変わってきます。

支払いサイトは、この商品やサービスの特性によるキャッシュフローを考えて決めるものです。


2つ目は、顧客の状況


顧客の財務状況や信用など顧客の状況に対し、貸し倒れリスクを考えて決めなければなりません。

創業したばかりの中小企業では、信用力が低いため前金(納品してもらう前にお金を払う)でしか取引してもらえないことが多いものです。


支払いサイトとは、商品やサービスの特性と顧客の状況に応じて決めるものです。

つまり、本来、顧客(買う側)の条件に合わせて決めるものではなく、売る側に合わせて決めるものなのです。


しかし、多くの取引では顧客の条件に合わせて決めていることが多い・・・

これは、支払いサイトの本来の決め方ではなく、買う側と売る側の力関係で決めているのです。


その結果、キャッシュフローの悪化(使えるお金が少なくなる)や貸し倒れリスクを押し付けられているのです。


支払いサイトは、顧客の言いなりになるのではなく、自分の会社のルールに合わせるように交渉する、また顧客の状況を踏まえ短くするよう交渉しなければならないのです。



支払いサイトを交渉するためには、一般的な交渉力や関係構築の他に以下の3つが大切です。

※ 一般的な交渉力や関係構築は、下の「関連するアドバイス」参照


①.自分の会社や商品に対する動機付けをする


顧客に対し、競合他社や競合の商品ではなく、自分の会社と取引したい、自分の商品を買いたいという動機付けをして交渉に有利な状況を作る。


②.リスクを想定する


商品やサービスの特性、顧客の状況から支払いサイトの影響、回収遅延や未回収リスクを想定する。


③.自分のビジネス(支払いサイトの根拠)を理解させる


会社の決まりなのでとお願いするのではなく、支払いサイトを短くしなければならない根拠を理解させる。

つまり、原価の支払いやキャッシュフローに対し早くお金をもらわなければならない理由を理解させる。



一度、自分の商品やサービスの特性からキャッシュフローや回収が遅れること、未回収のリスクを考えてみてください。


新規事業の投資や働く環境の整備、経費や給料・・・

支払いサイトや回収遅延、未回収でみなさん自身も損しているかもしれません。

※ 資料ダウンロード「キャッシュフローシミュレーションシート」



営業は、売上を上げるためでなく、お金をもらうために働いているのです。

支払いサイトと回収にこだわり交渉しましょう。





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