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新商品の営業は目的にこだわる

今期の売上目標、将来の事業拡大…どちらが本当の目的ですか?

2024年6月15日

ほとんどの会社で事業を拡大するために新規事業や新商品を立ち上げ一生懸命に営業活動を進めています。


しかし、既存の事業や商品と異なり、経験のない事業や商品の営業は難しい。

そう簡単には成果が上がらない。


みなさんの会社では新規事業や新商品の営業は順調に進んでいますか?



IT企業のセントテクノロジーは新商品のAIサービスをリリースしました。


今まで技術者派遣中心に売上を上げていましたが、今後の技術革新や広がるAI市場に対して5年後に拡大できる事業を確立したいと2年前からサービス開発を進めてきました。


今期に3名で専任の営業チームを作りAIサービスの営業活動をスタート。

開発にお金がかかったしこれから営業して売上を上げよう!



今期の売上目標は3,000万円。

開発やサポートの費用を考えると赤字だけど1年目なのでまずは実績を作ることが大切。


そして、3名の営業チームで営業戦略を考えました。


サービスの価格や機能を考慮して

ターゲット業界は、小売・流通業、製造業、金融業界

ターゲット規模は、年商500億円以上


販売促進として展示会に2回出展する予定。


営業活動では、システム販売会社3社と販売代理店契約を締結。

直接販売は、展示会の来場者に対し自分たちでアポイントを獲得し訪問。

それとテレアポ代行会社に依頼してアポイントを獲得し訪問。



そして、4月から営業活動をスタートしました。


5月からテレアポ代行会社のアポイントや販売代理店からの紹介が入り5件のお客さんを訪問。

6月の下旬に出展した展示会では来場者から5件のアポイントを獲得。


4月から7月まで3人で10件訪問しました。

ところが見込み案件は2件しか獲得できていない。

1件当たりの売上単価が300万円なので売上見込み金額は600万円。


まだスタートして4カ月だからこれから、頑張っていこう!


8月に入ると販売代理店からの紹介が減ってきました。

展示会の来場者も一通りあたってしまったし、頼みの綱はテレアポ代行会社のアポイントだけ。


8月と9月は

新規訪問は3件しかできず、見込み案件は1件だけ。


営業活動をスタートしてから3件の見込み案件を獲得したけれど、そのうち1件が失注。


訪問したお客さんの失注理由はバラバラ・・・

・予算をとっていないから今期は難しい。

・AIサービスには興味があるけど今すぐに検討できない。

・機能に比べて価格が高い。

・価格は気にならないし機能は充実しているけど使いにくさがネック。

・ここまで機能はいらないからもう少し安い方がいい。


上期はなんとか1件を受注し売上金額300万円。



10月に入りチームでミーティングしました。


リーダーAさん

「このままだとまずい」

「売上目標3,000万円は1年目だからといって経営陣に了承してもらった最低限の金額」

「達成できないと来期はこのチームがなくなるかもしれない」


メンバーBさん

「でも、あと2,700万円だと7件受注しないといけないんですよ、難しいですよ」

「見込み案件が1件しかないし」


リーダーAさん

「まだ13社しか訪問してないじゃないか」

「下期で少なくとも2,000万円ぐらいは受注しないと」


メンバーCさん

「あと7社もどうやって?」


リーダーAさん

「訪問件数が足りないよ、販売代理店と交渉してもっと紹介してもらおう」

「あと、うちの営業部にもAIサービスを紹介してもらおう」


メンバーCさん

「でも、ターゲットの小売・流通業、製造業、金融業界で年商500億円規模の会社ってうちの営業部のお客さんには少ないですよ」


リーダーAさん

「ターゲットにこだわっている場合じゃないよ」

「そもそも、まだどの業界や規模に売れるかわかっていないし」

「とにかく訪問件数を増やさないといけないから、業界や規模は問わず訪問できるところはすべて訪問しよう」


メンバーBさん

「それなら販売代理店からの紹介も増えると思います」



といって、業界や規模を問わず、営業部や販売代理店から紹介をもらいながら営業活動を進めました。


そして期末、

訪問件数は増えて5か月間で17件、1年間で30件。

しかし、見込み案件は4件で受注件数は2件。


3,000万円の売上目標に対し600万円。


1年目を振り返ってみると・・・


訪問したお客さんの業界はバラバラ。

小売業4社、流通業3社、製造業6社、金融業界4社、人材業4社、広告業3社、製薬業界2社、資材業界1社、IT・通信業界3社


お客さんの規模はバラバラ。

年商500億円以上10社、年商100億円以上7社、年商50億円以上5社、年商50億円未満8社


そしてお客さんから聞いた失注理由もバラバラ。



リーダーAさんは経営陣に報告しました。


リーダーAさん

「3,000万円の売上目標に対して結果は600万円でした、申し訳ありません」


経営陣

「うちのAIサービスは本当に売れるのか?」


リーダーAさん

「見込み案件も4件ありますし、2件は受注していますので」

「今期は1年目でターゲットとか売り方とかわからない中での営業でしたので結果は出せませんでしたが、来期は必ず結果を出します」


経営陣

「そうか、2年目は結果がすべてだからな」

「開発にずいぶんとお金を使っているから、結果がでなかったら見極めないといけない」



そして、2年目に向けてチームでミーティング。


リーダーAさん

「今期の売上目標は5,000万円」


メンバーBさん

「えーっ、5,000万円は無理ですよ」

「前期の売上が600万円で、見込み案件も4件しかないのに」


リーダーAさん

「無理っていったって2年目だから1年目と同じっていうわけにはいかないよ」


メンバーBさん

「じゃあ、どうやって5,000万円達成しますか?」


リーダーAさん

「どの業界や規模がいいかは前期の結果ではわからないし、業界を絞るのはリスクだと思う」


メンバーCさん

「そうですね、ターゲットの業界や規模を広げたら訪問量が増えましたし」


リーダーAさん

「そうだな、ターゲットを絞らずに販売代理店や営業部に紹介してもらえるところを徹底的に訪問しよう」



そして1年が経ち、

訪問件数は1年間で30件、受注件数は2件で売上金額600万円。

・・・1年目と同じ結果。



リーダーAさんは期末に経営陣に報告しました。


リーダーAさん

「すみません、今期の売上は600万円しかいきませんでした」


経営陣

「1年目と同じじゃないか」

「本当に売れるのか?」


リーダーAさん

「AIはこれから伸びる市場だから来年はなんとか」


経営陣

「見込み案件も5件で前期から1件しか増えていないじゃないか」

「訪問件数だって増えていないし」


リーダーAさん

「販売代理店や営業部に紹介をお願いしたんですけど増えなくて」


経営陣

「3年目に売上が上がる根拠がないだろう」

「来期は営業部長のDさんに任せるから」


3年目は経営陣から認められずチームは解散になりました。



なぜ、Aさんのチームは解散になってしまったのでしょうか?



Aさんのチームは、1年目の上期で売上見込み金額が600万円しかありませんでした。

その結果、下期は3,000万円という今期の売上目標を達成することばかり考えて、とにかく訪問しないとと思いやみくもに営業活動を進めました。


1年経ってみると、

業種も規模もバラバラでターゲット別のニーズを収集できていない。

お客さんから聞いた失注理由もバラバラで整理や検証ができていない。


その結果、2年目のスタートでは、

有効なターゲットの業界や規模を考えることができない。

サービス説明や提案などの課題と対策も考えられない。

AIサービスで改善すべき点も明確にできていない。


1年間営業したのに何の資産も残っていない・・・


1年目にスタートしたときと同じ状況で2年目をスタートしてしまいました。

そのため1年目と同じ結果。


もし、1年目に・・・

業界や規模別にニーズを収集することを重視して営業活動を進めていたら、

サービス説明や提案で何をアピールすれば有効かを検証しながら営業活動を進めていたら、

サービスの改善すべき点を収集しながら営業活動を進めていたら、

どうだったのでしょうか?


2年目のスタートでは、

ニーズのあるターゲットに有効なサービス説明や提案を進められていたのでは。

サービスの改善点を明確にして開発チームに提案しサービスを改良できたのでは。



なぜ、Aさんのチームはとにかく訪問しないとと思いやみくもに営業活動を進めてしまったのでしょうか?


それは、今期の3,000万円という売上目標ばかり考えていたからです。


はたして、今期の売上目標は大切だったのでしょうか?


セントテクノロジーがAIサービスを立ち上げた目的は5年後に拡大できる事業を確立したいということです。

今期の3,000万円という売上目標ではなく5年後に拡大できる事業のために営業活動を進めていたはずです。


本当に大切なことは、

・5年後にAIサービスどのような姿を実現したいのか

・5年後の姿を実現するために今期は何が重要なのか、何をしないといけないのか

この2つにこだわり営業活動を進めることだったはず。


5年後の姿を実現するために、

業界や規模別のニーズを収集することにこだわり、サービス説明や提案の検証にこだわり、サービスの改善すべき点を収集することにこだわり・・・今期の営業活動を進めること。



新たな事業や商品を作り拡大していくことは容易なことではありません。

開発チームが商品を作り、営業すればすぐに売上が上がるほど簡単ではありません。


新規事業や新商品を成功させるためには、

ターゲット、営業方法や販促方法、商品やサービス・・・成功するまで何度も検証し修正しながら精度を上げていかなければなりません。



みなさんは何のために新商品の営業活動を頑張っているのでしょうか?


会社から指示された今期の売上目標ばかりを気にして、本当の目的を見失っている営業が多く見受けられます。


今期の売上目標のためなのか?

将来の事業拡大のためなのか?


新規事業や新商品を成功させたいのであれば、本当の目的にこだわり何をすべきかを考えましょう。


そのためには、今期の計画よりも将来の姿を実現するためのストーリーが大切です。

本当の目的である将来の姿を実現するための計画を考え大切にしましょう。





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