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営業の指導はイメージさせる

やることを指示するのではなく、やり方をイメージさせることが大切

2019年2月15日

「部下に指導しているんだけど、やらない、やれない・・・」

多くのマネージャーや上司が悩んでいることでしょう。


営業の指導は、案件の状況や顧客のタイプ、部下のスキルや性格など、毎回異なる状況に対し方法や対策を考え行わなければならないという難しい仕事です。


みなさんは、この難しい営業の指導という仕事をどのようにやっていますか?



営業会議で上司のAさんが、部下のBさんに指導していました。


Aさん

「この案件はコンペになっているんだろう?」

「提案のときに予算オーバーだとはずされる可能性があるので、次の訪問では予算をおさえてくるように」


Bさん

「わかりました」


顧客訪問から戻ってきて・・・


Bさん

「予算を聞けませんでした」


Aさん

「なんでだよ、ちゃんと聞いたの?」


Bさん

「聞くタイミングがなくて」


Aさん

「まずは、聞けよ。聞いて教えてくれないならまだいいけど、聞かないのはだめだよ」


Bさん

「はい、次の訪問が来週に入っているのでその時に聞いてきます」



はたして、Bさんは次の訪問のときに予算を聞いてくるでしょうか?



なぜ、Bさんはやらなかった(聞かなかった)のでしょうか?

Aさんに「予算をおさえてくるように」と指導されて「わかりました」と言っていたのに・・・



実際に訪問したとき・・・

・聞くタイミングがわからなかった

・どのように聞いたら顧客担当者が教えてくれるかわからなかった

・聞いたけどタイミングが悪かった

・「予算はどのくらいですか?」と直接的に聞いたら教えてくれなかった


Bさんは、やることはわかっていたけれど、やり方がわからなかったということです。

つまり、やらなかったのではなく、やれなかったのです。


ということは、「まずは、聞けよ。聞いて教えてくれないならまだいいけど、聞かないのはだめだよ」と指導されていますが、次の訪問でも聞いてくることはできないでしょう。



先輩Cさんが、同じBさんに相談され指導していました。


Cさんは、

はじめに、顧客や案件の状況、顧客の過去の予算の取り方、顧客とBさんの関係性や顧客担当者のタイプを聞いていました。(①)


その後、Cさん

「次回の訪問はどのような内容になるの?」


Bさん

「商品のデモを見せる予定です」


Cさん

「そうなんだ、そうしたらはじめにデモを見せて、その後に顧客から質問がくるでしょ?」

「うちの商品のどの辺を気にしていた?つまり、どの辺の質問が多そう?」


Bさん

「現場の営業部が使い勝手を気にしているようなので使い方の質問が多いと思います」


Cさん

「そうしたら、質問に対して使い方の説明をするときにオプション○○と△△のうち価格が高い○○の説明をして、その後にオプションの価格を伝えてみな」(②)

「その段階では、値引きの話はしちゃだめだよ」


Bさん

「でも、ひかれないですか?オプション○○はいつもお客さんに価格が高いって言われるから」


Cさん

「○○の説明は、外出時に情報共有できるということより、営業社員が外出中にパワーポイントで提案書を作成できるから、営業の方にとって一番大変な提案書作成の負担を軽減できると伝えるように」

「うちの商品が他社の商品よりも良いと思わせた後に、価格を伝えるのがポイントだよ」(③)


Bさん

「それはわかったんですけれど、予算を聞き出すのはどうしたらいいんですか?」


Cさん

「その反応で予算を把握するんだよ。直接聞いても教えてくれないよ」

「価格を伝えた後の相手の表情をよく見ておくように」

「本体の価格は伝えてあるんでしょ?お客さんもオプションの価格を加えて200万円ぐらいになるのはわかるはず。その価格に対してどう思ったかが表情に出るからよく見ておくように」(③)


Bさん

「わかりました」


Cさん

「どう?お客さんの表情に出そう?」(④)


Bさん

「いつも、否定的なことばかり言うタイプだから、口では高いと言いそうですが、価格を伝えた後の表情には出ると思います」

「でも、高いって言われそうだな」


Cさん

「言われていいんだよ。高いって言われたら安い方のオプション△△の話をすれば」

「ポイントは、提案書作成の負担軽減でうちの方が良いと思わせた後に価格を伝えること。うちの方が良いと思わせてからじゃないと、予算に対する反応が出ないから」(③)


Bさん

「わかりました」


Cさん

「どう?やれそう?お客さんとの商談のシーンを想像してみな」(⑤)


Bさん

「うーん、イメージできます。大丈夫です」



営業は、やる、やらない以外に「やり方」にも大きく影響される仕事です。


コミュニケーションや関係性、説明の仕方、会話の仕方、資料の見せ方や内容、タイミング・・・これらのやり方によって顧客の反応や意識も変わるデリケートな仕事です。

そして、顧客の反応や意識によって説明の仕方、会話の仕方、資料の見せ方や内容、タイミングも変えないといけない仕事です。


ということは、「説明しなさい」「聞いてきなさい」と指導しても、実際の営業現場を想像してやり方をイメージできなければ実践できないのです。



実践させるための指導には少なくとも以下の5つが必要です。

・顧客や組織の状況、顧客担当者との関係性や顧客担当者のタイプを確認し(Cさんの①)

・どのタイミングで説明やヒアリングをやればよいか(Cさんの②)

・どのように説明やヒアリングをやればよいか(Cさんの③)

・そして、説明やヒアリングに対する顧客の反応を想像させる(Cさんの④)

・そして、やれそうか、やれないかを想像させる(Cさんの⑤)



営業は、顧客の状況や反応に臨機応変に対応することが必要な難しい仕事です。

そして、顧客の反応に必ずというものはありません。100%正しいやり方というものもありません。

そのため、やり方を明確にしにくい、指導が難しい・・・

その結果、「やることの指導(指示)」ばかりで「やり方の指導」をしていないケースが多く見受けられます。


営業は、やることだけではなく、やり方で結果や成果の変わる仕事です。

やり方を指導しイメージさせてから実践させましょう。



最近、マネジメントだけでなく、自分でも営業活動を行っているプレイングマネージャーが増えています。

忙しくてやりきれないと思うマネージャーも多いことでしょう。


しかし、「やることの指導(指示)」だけで部下がうまく実践できない・・・


その結果、

失注する、売上が伸びない→さらに訪問や提案を増やさないといけない→マネジメントも大変になる・・・


また、

トラブルが発生する→部下のトラブル対応に追われる→他の部下の指導や自分の営業活動がおろそかになる・・・


「やることの指導(指示)」ばかりでなく「やり方の指導」もやってみてください。

そのときは大変かもしれませんが、部下が適正な営業活動を実践することができ、結果的に楽になることでしょう。

また、部下がスキルを身につけ成長し、マネジメントも楽になることでしょう。


Cさんの指導を受けたBさんは、今後の営業活動で予算を把握しようとするときに直接聞くのではなく、顧客の表情や反応から把握しようとするでしょう。



みなさんの指導とCさんの指導を比べてみてください。

「説明しなさい」「聞いてきなさい」というやることの指導(指示)ばかりになっていませんか?


部下に実践させたいのであれば「やり方」の指導①~⑤でイメージさせましょう。

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