相談関係の5つの要件「自分なりの意見」
ちょっと間違えている自分なりの意見が課題と解決策の議論を盛り上げる
2023年1月15日
お客さんに対して自分なりの意見を伝えていますか?
・お客さんの要望に対して考えて提案する
・他社の成功事例を説 明し御社でも役に立つと伝える
・インターネットで有益な情報を見つけて教える
これらは外してください。
自分なりに考えて・・・
「御社は・・・した方が良い」「・・・すべき」という意見を伝えていますか?
営業担当Aさんのお客さんのパソコン販売会社セント商事が4月に組織を変更していました。
新規事業であるクラウドサービスの販売を強化するための組織変更。
Aさんは組織変更が落ち着いただろうと思い6月にセント商事の販売推進担当の桜井さんを訪問。
営業担当Aさん
「今期はずいぶんと大きく組織が変わりましたね」
「販売推進部も営業本部内にあったのに新規事業本部に移ったみたいですね」
桜井さん
「そうなんです、新規事業のプロモーションを強化しようということで移ったんですよ」
「今まで担当していた既存事業のプロモーションを兼務しながら新規事業も担当することになりまして」
Aさん
「そうなんですか、大変ですね」
「今までも担当商品が多くて忙しかったのに、新規事業のプロモーションまで加わると大変じゃないですか?」
桜井さん
「大変ですよ、販売推進部は人が足りないから兼務しなくちゃいけなくて」
「それに、新商品の企画会議まで入らないといけなくなって・・・」
Aさん
「本当ですか、それは大変ですね」
「新規事業ってクラウドサービスですよね、今までプロモーションはWEBサイト中心だったようですけど、他の施策も取り組んでいくんですか?」
桜井さん
「そうなんです、展示会の出展も企画しなくちゃいけないし」
Aさん
「さらにお忙しくなりそうですね」
桜井さん
「うちは人が足りないからしょうがないですよ」
一応、桜井さんとの会話は成り立っているようですが・・・
競合他社の営業担当Bさんが、同じ時期に販売推進担当の桜井さんを訪問していました。
営業担当Bさん
「今期はずいぶんと大きく組織が変わりましたね」
「販売推進部も営業本部内にあった のに新規事業本部に移ったみたいですね」
桜井さん
「そうなんです、新規事業のプロモーションを強化しようということで移ったんですよ」
「今まで担当していた既存事業のプロモーションを兼務しながら新規事業も担当することになりまして」
Bさん
「そうなんですか、大変ですね」
「今までも担当商品が多くて忙しかったのに、新規事業のプロモーションまで加わると大変じゃないですか?」
桜井さん
「大変ですよ、販売推進部は人が足りないから兼務しなくちゃいけなくて」
「それ に、新商品の企画会議まで入らないといけなくなって・・・」
ここまではAさんと変わらないのですが、ここからBさんは・・・
Bさん
「そうなんですか、新商品の企画とプロモーションも担当されるんですね」
桜井さん
「営業に近い立場として新商品の企画にもかかわらないといけなくて」
Bさん
「そうなんですか、御社ではクラウドサービスビジネスにシフトしようとしているので、かなり重要なミッションですよね」
「クラウドサービスに専念した方がいいんじゃないですか?」
「兼務しているとできる施策が限られちゃいますよね?」
桜井さん
「そうなんですけど、人がいないから私がやらないといけなくて」
「たしかに、WEBサイトと展示会だけじゃ計画を達成できないんですけど」
Bさん
「たしか、以前、販売推進部は人を増やしてもらえないっておっしゃってましたね」
桜井さん
「そうなんですよ」
Bさん
「クラウドサービスを進めるならWEBサイトや展示会だけじゃなくて、マーケティングオートメーションとかSNSも進めた方がいいと思うんですけど」
桜井さん
「そうですよね、競合のアドバイスカンパニーさんなんて展示会とセミナー、メルマガ、SNSを連動させて進めていますからね」
Bさん
「そうですよね、御社も来期には施策を広げないといけないですよね」
「今から展示会で回収するアンケートの来場者データを分析して来期のプロモーション施策を検討できるように考えた方がいいんじゃないですか?」
桜井さん
「それは、以 前からやってるんですよ」
「業界や規模別に来場者の声を収集して、企画部が業界別サービスを検討しているみたいです」
Bさん
「そうなんですか、ちゃんと来場者データを活用されてるんですね」
「アンケートで「興味のあるなし」や「説明を聞きたいか否か」しかとっていなくて営業リストにしか使っていない会社が多いみたいなのに」
桜井さん
「それはもったいないですよね」
「展示会って商品の認知度を高めるだけじゃなくて直接お客さんの声を集められる場でしょ?」
Bさん
「本当にもったいないですよ」
「でも、実際には多くの来場者に商品を紹介することしか考えていない会社が多いですよ」
「あれだけ多くのお客さんとの接点を持てる場って他にないんですけどね」
桜井さん
「でも、うちも商品企画には使っているけど、プロモーションには使えていないですね」
「今まではWEBサイト中心だったからよかったけど、これからは他の施策を考えないといけないし」
Bさん
「そうですか、来場者データはプロモーションの検討にも使えると思いますよ」
「部署や役職、来場目的、現在の情報収集方法やニーズなどの情報を集められますから」
桜井さん
「たしかに」
「それに、分析結果は上層部への新規プロモーション投資や増員の説得材料にもなるだろうな・・・」
「でも、どういうアンケートならプロモーションにいかせるんですかね?」
Bさん
「うちの会社のマーケティング部に聞いてみましょうか?」
桜井さん
「そうですか、お願いできますか?」
「アンケートの改善とか活用なら人がいない今の体制でもできるし」
AさんとBさんの会話を比べて振り返ってみてください。
みなさんのお客さんとの会話はAさんとBさんのどちらのパターン?
Aさんの会話は、
「既存事業と新規事業のプロモーション、新商品の企画を兼務することになり大変」「人が足りないからしょうがない」と桜井さんに対する共感の会話が進んでいますが、共感して終了。
Bさんの会話は共感で終わらず、
来場者データの分析やプロモーションの検討、上層部への説得材料など桜井さんと課題(悩み)や解決策(アドバイス)の議論まで会話が進んでいます。
この差はなぜ?
一般的に会話は下の4つから成り立っています。
事実、質問、感想、意見
Aさんとの差が出たきっかけは、Bさんが会話の途中で”自分なりの意見”を差し込んだこと。
「クラウドサービスに専念した方がいいんじゃないですか?」
AさんとBさんの一つ一つの会話に対し事実、質問、感想、意見のどれに該当するか確認してみてください。
Aさんの会話は事実、質問、感想だけ。
「販売推進部も営業本部内にあったのに新規事業本部に移った」・・・事実
「他の施策も取り組んでいくんですか?」」・・・質問
「そうなんですか、大変ですね」「さらにお忙しくなりそうですね」・・・感想
Bさんは「クラウドサービスに専念した方がいいんじゃないですか?」という”自分なりの意見”を境に、事実や感想の会話から、お互いの意見を伝えながら課題(悩み)や解決策(アドバイス)を議論する会話に変わっています。
事実や質問、感想は、相手に対する理解や共感を促進しますが、議論を促進するものではありません。
相談関係とは、相手に悩みを言ってもらいアドバイスをする関係です。
理解する、されるだけの関係でも、共感するだけの関係でもなく、課題や解決策を議論する関係です。
この議論を促進するためには”自分なりの意見”が必須です。
そして、この”自分なりの意見”は間違えている方が議論は盛り上がります。
Bさんは自分なりの意見に対し桜井さんに否定されています。
「今から展示会で回収するアンケートの来場者データを分析して来期のプロモーションを検討できるように考えた方がいいんじゃないですか?」という意見に対し「それは、以前からやってるんですよ」
しかし、この後の「業界や規模別に来場者の声を収集して、企画部が業界別サービスを検討しているみたいです」という桜井さんの否定した理由の会話からまた議論が続いています。
自分の意見が間違えていると、相手は「違う」という反対意見とその理由を言いたくなります。
間違えている意見は、相手に意見や情報を言わせやすくするのです。
みなさんも上司との会話を思い出してください。
上司が正論を言うと自分の意見を伝えるのではなく「はい」と同意、同調するだけになりやすい。
しかし、上司が間違えたことを言うと「違います、そうじゃない」と言いたくなるでしょう。言うか言わないかは上司の人柄や場によりますが、少なくとも言いたくなるでしょう。
正しかろうが、間違っていようがどちらでもいいんです。
自分なりに考えた意見を伝えることが大切なのです。
お客さんに間違えていることを言ってはいけないという無難、安全意識により、”自分なりの意見”を言えなくなっている人が多く見受けられます。
”自分なりの意見”を言えない、言いにくいという人は下の2つの方法を試してください。
楽に”自分なりの意見”を言えるようになります。
(自分なりの意見を言いやすくする方法)
・前置き&語尾をぼかす。
「経験が浅いので違うかもしれないのですが」「勉強不足で間違っているかもしれないのですが」と前置きし、「・・・だと思うんですけど」と語尾をぼかす。
すると、表現が強くなりすぎずソフトに、そして間違えていても信用をなくさずに意見が言えるようになります。
・意見は質問で伝える。
「・・・した方が良いと思います」ではなく「・・・した方が良いと思うんですが、いかがですか?」と質問で伝える。
意見は質問で伝えても、相手に意見を言わせやすくなる、議論を促進するという効果は変わりません。
「インターネットで情報収集したこと、上司や先輩から教えてもらったこと」などの事実を伝えるばかり。
「お客さんのことは自分で考えずにお客さんに教えてもらう」という質問ばかり。
「大変ですね、お忙しそうですね、すごいですね」と感想を伝え共感するばかり。
“自分なりの意見”は課題や解決策の議論を促進するものであり、相談関係を構築するために必要なものです。
そして、“自分なりの意見”は最も会話を盛り上げるものです。
間違えていても良いので・・・
お客さんに対し自分なりの意見を考えましょう。
そして、お客さんに自分なりの意見を伝えましょう。
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