「型と継続」で営業を変える
営業は「意識が変われば行動が変わる」でなく「行動が変われば意識が変わる」
2022年12月15日
「どうやって営業のやり方を身につけてきましたか?」
この質問をするとほとんどの人がこう答えます。
「場数、経験」
ほとんどの人が、体系的な手法を学ばず、様々な経験を積み、その場の苦労や努力で身につけてきました。
長い間の経験により身につけ習慣化したやり方・・・つまり”癖”。
場数や経験で身につけた営業のやり方は”癖”と同じなのです。
”癖”ってどうやって直しますか?変えますか?
パソコン販売会社の営業マネージャーAさんが悩んでいました。
「うちの社員は御用聞き営業しかできない」
「いつも「提案営業に変えないといけない」「提案しろ」と言っているのに」
ある日、Aさんが営業会議で指導していました。
Aさん
「購入予定を聞くだけの御用聞きやパンフレットを見せて紹介する商品案内だけじゃ新規のお客さんから案件をとれない、お客さんの課題を聞いて提案しないと」
「明日からはお客さんの業務内容について会話しながら課題を聞き出して提案依頼を獲得してください」
翌日、営業経験5年の部下Bさんが新規のお客さんを訪問しました。(1件目のお客さん)
訪問前、マネージャーAさんはBさんに
「御用聞きや商品案内じゃな くて、ちゃんとお客さんの課題を聞いてこいよ」
そして、Bさんはお客さんを訪問し
「御社のWEB広告ビジネスの場合だと営業の方はクライアント以外にもプロバイダーとか制作会社との打ち合わせも多いんですか?」
お客さん
「そうなんです、だからほとんど外出で営業が会社にいることは少ないんです」
Bさん
「ただ、社内の企画部の人との打ち合わせも多いですよね」
「外出中に企画の調整などを行う環境って必要じゃないですか?」
お客さん
「そうなんです、営業部と企画部の連携がうまくいっていないので、外出中に打ち合わせできる環境が必要なんじゃないかと思っていたんです」
Bさん
「そうなんですか、当社ではノートパソコンだけじゃなくてWEB会議システムも取り扱っていますので、よろしければ営業部と企画部の連携がうまくいく方法を考えてご提案させていただきますが」
お客さん
「ぜひ、お願いします」
Bさんはお客さんから課題を聞き出し提案依頼を獲得しました。
そして、会社に戻るとマネージャーAさんは
「課題を聞き出そうとしたから提案を獲得できたんだよ」
「これからも御用聞きや商品案内ばかりじゃなくて課題を聞き出すように」
その翌週、Bさんは別のお客さんを訪問。(2件目のお客さん)
前回同様にお客さんの課題を聞き出そうとしていました。
Bさん
「御社の人材紹介サービスの場合だと営業の方はクライアントとの打ち合わせ以外に求職者との打ち合わせも多いんですか?」
お客さん
「いや、求職者はカウンセラーが担当しているので営業はクライアントとの打ち合わせばかりだと思います」
Bさん
「そうなんですか、営業の方は外出が多いんですか?」
お客さん
「私は総務部なのでよくわかりません」
Bさんはお客さんの反応が悪かったので苦しくなって
「ノートパソコンの購入予定はありますか?」
お客さん
「しばらくないと思います。それに、いつも購入するときにお願いしている会社がありますので」
その翌週、Bさんはまた他のお客さんを訪問。(3件目のお客さん)
Bさん
「当社のノートパソコンとWEB会議システムをご紹介させてください」
といって商品を一生懸命に説明。
そして、Bさん
「ノートパソコンを購入する予定はありますか?」
と課題を聞こうとせず、購入予定を聞いてしました。
Bさんは3件目のお客さん以降、課題を聞き出そうとせず御用聞きや商品案内ばかりに戻ってしまいました。
なぜ、Bさんは戻ってしまったのでしょうか?
マネージャーAさんが「課題を聞き出して提案依頼を獲得してください」「御用聞きや商品案内じゃなくて、ちゃんと課題を聞いてこいよ」と指導したのに・・・
そして、1件目のお客さんで成功体験があったのに・・・
答えを下の選択肢①~③から考えてみてください。
選択肢①
「2件目のお客さんでうまくいかなかったからやめてしまった」
選択肢②
「課題を聞き出そうとしたけどチャンスがなかった」
選択肢③
「課題を聞き出そうという意識が下がり元の営業に戻ってしまった」
はじめに「場数や経験で身につけた営業のやり方は”癖”と同じ」とお話しました。
少し”癖”の直し方についてお話ししましょう。
例えば、猫背。
いつも姿勢が悪く、猫背が”癖”になってしまっている・・・
姿勢の悪さや猫背ってどうやって直しますか?
「背筋をまっすぐにして座りなさい、歩きなさい」と指導されたとしましょう。
その直後や1日ぐらいは意識して背筋をまっすぐにしているかもしれません。
しかし、2日後、1週間後、1か月後には戻ってしまい、悪い姿勢、猫背のまま。
“癖”というものは、意識せず自然とやってしまう型です。
一時「意識しなさい」「やりなさい」「直しなさい」と指導されてもしばらくすると戻ってしまいます。
戻さないためには、朝から晩まで四六時中、そして一時ではなく、1週間、1か月・・・指導し続けないといいけない。
そんなことは無理でしょう。
"癖"である猫背は「意識しなさい」「やりなさい」「直しなさい」ではなく、背筋がまっすぐになるコルセットを付けて、まっすぐな姿勢を一定期間継続させて直します。
背筋がまっすぐになるコルセットを付ける=適正な型を作り、型にはめる。
まっすぐな姿勢を一定期間継続させる=適正な型を一定期間継続させる。
すると、適正な型(背筋がまっすぐな姿勢)が習慣化し”癖”になるのです。
つまり、悪い型を適正な型にはめて修正する、そして継続することで意識せず自然とやってしまう型にする。
なぜ、Bさんは3件目から御用聞きや商品案内ばかりに戻ってしまったのでしょうか?
答えは、選択肢③。
「課題を聞き出そうという意識が下がり元の営業に戻ってしまった」
Bさんは5年間の場数や経験により御用聞きや商品案内が意識せず自然とやってしまう型になっていました。
そのため、一時「課題を聞き出すように」と指導されても、元の御用聞きや商品案内に戻ってしまったのです。
”癖”と同じく意識せず自然とやってしまう営業のやり方はどうやって変えるのか?
まずは、適正な型を作りましょう。
お客さんの状況や営業のシーンに合わせて・・・
・営業活動の組み立て方(プロセス)
・考える内容、準備する内容
・考える方法、準備する方法
・説明や話す内容、聞き出す内容
・説明や聞き出す順番(シナリオ)
・説明する方法や話し方、聞き出し方
そして、型を継続させる方法を作りましょう。
個人で行動することが多く流動的な営業では、この型を継続させるためのテンプレートが必要です。
プロセスなど行動の種類に合わせて・・・
・型に沿って継続的に考え、準備させるためのテンプレート
顧客の課題や提案、予算対策など受注獲得方法、商談シナリオなどを考えるためのテンプレート。
・型に沿って行動させるためのテンプレート
提案書のフォーマット、商品のパンフレットや参考資料など。
・型の継続を管理するためのテンプレート
営業プロセス、商談情報、顧客情報など、行動の管理や評価(できているか否か)するために必要な情報を管理するためテンプレート。
これらのテンプレートを作り、使わせ、継続させるよう管理しなければなりません。
この型と継続により今までと違う適正な営業のやり方が習慣化され”癖”になるのです。
場数や経験で身につけてきた”癖”である営業を変えるためには・・・
心が変われば行動が変わる
行動が変われば習慣が変わる
習慣が変われば人格が変わる
人格が変われば運命が変わる
※ ウィリアム・ジェームズ(米・心理学者)
ではなく、
行動が変われば成果が変わる
成果が変われば意識が変わる
意識が変わればさらに行動が変わる
なのです。
はじめに意識を変えようとするだけでなく、型を作り継続させ行動を変えさせるのです。
営業は話す内容や話し方などの行動を変えることでお客さんの反応や得られる情報、成果が変わる仕事です。
そして、一つ一つの行動で成果を重視する営業は成果が変わることで意識が変わっていくのです。
そして、意識が変われば、さらに行動が変わっていくのです。
「意識しなさい」「やりなさい」「直しなさい」と訴えかけるだけでは、やりません、直しません、継続しません。
習慣化した”癖”である営業を変えることは大変なことです。
しかし、提案営業や課題解決型営業への変革だけでなく、
場当たり的、属人的な営業から戦略営業や組織的な営業へ
既存事業や既存マーケットから新規事業や新規マーケットへの拡大
訪問中心の営業から訪問とオンラインを組み合わせた営業へ
今日の営業は大きな変化を求められています。
「行動が変われば成果が変わる、成果が変われば意識が変わる」
営業は、はじめに型と継続で行動を変えさせましょう。
追記
型を作り営業の標準化を進めても下の2点が原因で、実行できない、継続できないという会社が多く見受けられます。
・「考える方法、準備する方法」「説明する方法や話し方、聞き出し方」がないため実行できない。
・「型を継続させるためのテンプレート」がない、または適正でないため継続させられない。
みなさんの会社はいかがでしょうか?

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