経営課題の会話・ヒアリング
関係する身近なネタから会話をはじめる
2018年4月15日
「お客さんの経営課題や戦略をおさえろ」
最近の営業現場でよく耳にします。
顧客の課題を把握するためにも、決裁者や予算対策にも、顧客との関係を強化するために も必要なことです。
しかし、「うちの営業はお客さんの経営課題や戦略を把握できない」と悩んでいる上司、そして「聞けなかった」「聞いたけど教えてもらえなかった」と困っている営業担当者は多いものです。
なぜ、聞けないのでしょうか?
なぜ、教えてもらえないのでしょうか?
スマートフォンの営業をしているAさんが自動車メーカーの総務担当Bさんに訪問した時のことです。
上司に「経営課題や戦略をおさえろ」と指導されたので、訪問前に顧客の中期経営計画から経営課題を調べていきました。
一通り商品説明をした後に・・・
営業担当Aさん
「御社の中期経営計画を見たら国内工場の一元管理を進めているように書いてあったのですが、生産プロセスや管理方法の標準化を進めているんですか?」
顧客Bさん
「そうみたいですけど」
営業担当Aさん
「生産プロセスや管理方法の標準化はどの部署が担当されているんですか?」
顧客Bさん
「それが何か関係があるんですか?」
営業担当Aさん
「担当されている部署の方の出張も増えていて大変なのではと思って」
顧客Bさん
「スマートフォンを検討しているのは販売促進部のためなので関係ないと思いますが」
「それに、生産本部のことはわかりません」
営業担当Aさん
「そうですか・・・」
顧客Bさんは生産本部のことを何も知らないのでしょうか?
詳しく知らなくても・・・
・国内工場の一元管理を生産本部の生産技術部が担当していること
・生産プロセスや管理方法の標準化は国内各工場と調整して進めていること
・生産技術部の人が国内の各工場に出張していること
・ ・・・・・
期初の方針説明、部や課の会議、上司や同僚との飲み会で聞いたりすることはあるでしょう。また、想像することぐらいできるでしょう。
では、なぜ「生産本部のことはわかりません」と言われてしまったのでしょうか?
なぜ、教えてもらえなかったのでしょうか?
その後、Aさんが異動になり、同僚の営業担当Cさんが引き継ぎ、同じ総務担当Bさんに訪問したときのことです。
一通り用件を済ませた後に・・・
営業担当Cさん
「話は変わるんですけど、このあいだ母が車を買ったんですよ」
「ハイブリッドにしたんですけれどずいぶん燃費がいいんですね。リッター30キロぐらい走るって言ってましたよ」
顧客Bさん
「そうなんですか、何を買ったんですか?」
営業担当Cさ ん
「御社の○○を買ったみたいです」
顧客Bさん
「そうなんですか、ありがとうございます。○○だと街中を走ると20キロぐらいかな」
営業担当Cさん
「そうなんですか、それでもガソリン代は前の車の半分ぐらいですね。
そういえば、EV車の開発も力をいれているみたいですね。やはり価格は高いんですか?」
顧客Bさん
「そうですね、モーターやバッテリーの開発コストもかかるし、ガソリン車に比べるとまだ需要が小さいので大量生産できないし」
営業担当Cさん
「そうなんですか、生産本部も大変ですね。他メーカーの競合車種も増えるでしょうから、販売価格を考えると生産コストは抑えないといけないんでしょうね」
顧客Bさん
「そうらしいですね、現段階では少量生産なのでどうしても効率が悪くなるみたいですよ」
「生産コストを抑えるのも大変みたいで」
営業担当Cさん
「そうなんですか・・・」
「そういえば、生産本部で国内工場が個別で進めていたプロセスや管理方法を標準化して一元管理を進めているみたいですね」
「それも生産コストを抑えるためでもあるんですか?」
顧客Bさん
「そうだと思いますよ」
「生産本部だけじゃなくて全社的にも業務改革を進めてコストを削減しようとしているし」
「でも、よく知ってますね。どこで知ったんですか?」
営業担当Cさん
「この間、御社の中期経営計画を見たら書いてあったので」
顧客Bさん
「そうですか、よくチェックしてますね」
「昨年から始めているみたいですよ。ここ3年で国内の一元管理体制を整備して、再来年からは海外工場も段階的に進めるみたいですよ」
営業担当Cさん
「生産本部のどこが担当されているんですか?」
顧客Bさん
「正確にはわからないのですが、たぶん生産技術部だと思いますよ」
顧客Bさんは、スマートフォンの購入や販売促進部に関係ない生産の効率化や国内工場の一元管理といった経営課題や生産本部の戦略について話してくれています。
また、生産技術部が担当していることも話してくれています。
AさんとCさんは何が違うのでしょうか?
いくつかあげてみてください。
Aさんは、直接的に中期経営計画に書いてあったことを説明し、経営課題に関する状況を質問しています。つまり質問するというスタンス。
Cさんは、知っていること、経験したことをお互いが会話する中で聞き出しています。つまり、雑談するというスタンス。
そのため、Aさんは面談の目的や用件との関係性を意識させてしまっていますが、Cさんは意識させていません。
Aさんは、「国内工場の一元管理」や「生産プロセスや管理方法の標準化」という具体性のない抽象的な情報ばかりで会話しています。
Cさんは、「母が車を買った」「燃費がリッター30キロ」と身近なネタを使い具体的に話せる情報で会話しています。
そのため、Aさんは表面的な印 象を与えてしまっていますが、Bさんは与えていません。
Aさんは、「生産プロセスや管理方法の標準化」というお互いにとってあまり関係のないネタから入っています。
Cさんは、お互いにとって関係のある「車」という共通のネタから入っています。
そのため、Aさんと違い、Cさんは会話が盛り上がり発展させることができています。
Aさんは、「生産プロセスや管理方法の標準化を進めているんですか?」「どの部署が担当されているんですか?」と直接的に聞いています。
Cさんは、「母が車を買った話」→「昔の車と最近の車の違い」→「最近の車の需要」→「生産効率の問題」→「各工場の一元管理」と経営課題に落とし込むストーリーを考えストーリーの中で聞き出しています。
そのため、Cさんは面談の目的や用件を意識させず、自然な流れで聞き出しています。
経営課題や戦略を聞き出すためのポイントは4つあります。
・質問ではなく、目的や用件を意識させない雑談というスタンス
・具体的に話せる身近なネタを使い会話する
・自分と相手が共通して盛り上がるネタから入る
・直接聞くのではなく、盛り上がるネタから経営課題に落とし込むストーリーを考える
「相手の業界に関わったことがないので、共通で身近なネタがないんです」と言う人がいますが、20年以上生きていればたくさんあるはずです。
自分の経験、家族や友人の経験、ニュースや新聞で見聞きしたこと・・・
「半導体事業」であれば、「半導体を使っている自分のスマートフォンのネタ」
「災害対策やBCP」であれば、「自分の家、自分の会社や家族の災害対策のネタ」
「グローバル化」であれば、「友人が海外旅行をしたときのネタ」
「組織改革や体質改善」であれば、「自分の会社の組織や体質のネタ」
「うちはスマートフォンの営業だから、現場のコミュニケーションや通信コストは関係あるけど、顧客の経営課題は関係ないんですよ」と言う人がいますが、顧客と経営課題について会話し共有することには様々なメリットがあります。
・顧客と様々なことについて会話する関係を作ることができる
・経営課題を把握することで提案できる顧客の課題を考えることができる
・様々なことについて会話することで各部門の状況や課題、組織や決裁者、予算など様々な情報を収集できる
・顧客に「うちの会社をよく知っている人」と思ってもらうことができ、様々なことについて相談される
そして、一度、顧客と経営課題について会話し共有すれば、次回も共有した経営課題のネタを使ってさらに別の経営課題についての会話ができます。
営業にとって顧客の経営課題や戦略を把握することは大切です。
関係ができていない顧客、経営課題や戦略に直接関わっていない担当者に、単純に聞いても教えてもらいにくいでしょう。
顧客の経営課題や戦略を聞き出すためには、関係する身近なネタを考え、会話しましょう。
お知らせ