営業計画の役割
営業の計画は計画通りにやるためのものではなく検証・修正するためのもの
2023年7月15日
売上目標を達成するための計画を作り営業活動を進めている・・・しかし、計画通りにやらない、やろうとしない。
自分で作った計画なのになぜ?
ある会社のマネージャーAさんが営業担当Bさんに今期の営業計画を作らせ、5月から計画にそって営業活動をスタートさせました。
(Bさんの営業計画)
売上目標は1億円、見込み案件が2,500万円しかないから厳しい。
上期は新規開拓営業に力を入れて見込み案件を増やさないと。
上期に新規案件で1,500万円の売上を獲得し、2,500万円の見込み案件を含めて4,000万円の売上を獲得しよう。
そして、新たに3,000万円分の見込み案件を獲得しよう。
そこまでいけば、下期に頑張って今期の1億円の目標が達成できる だろう。
受注単価は案件によってバラバラだけど平均750万円を目指す。
そのために商品だけでなくてサポートも含めて売れるように提案しよう。
9月までに新規案件で1,500万円の売上、新たに3,000万円の見込み案件を獲得するために
「今の見込み案件以外で受注を2件と見込み案件を4件獲得しよう」
・12件は提案しないといけない。
・そのためには25件の訪問が必要。
「どうやって8月までに25件訪問しようか?」
・昨年訪問して可能性があるお客 さんが10件ある。
・5月下旬に出展する展示会の来場者から10件の訪問を獲得しよう。
・販売促進部がWEBサイトをリニューアルしたので5件は引き合いを獲得できるだろう。
5月からの計画は、
8月までに25件の訪問に対し毎月7件のお客さんを訪問する。
8月までに12件の提案に対し毎月4件の提案を獲得する。
営業活動をスタートして6月末・・・
・訪問は順調にでき6月は7件の計画に対し10件を訪問できた。
・しかし、提案は4件の計画に対して2件 。
7月の営業会議で・・・
マネージャーAさん
「なんで2件しか提案できていないんだ?」
営業担当Bさん
「10件訪問できたんですけど、提案を獲得できなくて」
Aさん
「毎月4件の提案っていう営業計画は自分で作ったんじゃないのか?」
「ちゃんと計画通りにやらないとダメだろう」
Bさん
「すみません、訪問を12件に増やして提案4件を達成します」
しかし、Bさんは提案が増えず翌月の営業会議で・・・
Aさん
「なんで2件しか提案できていないんだ?」
Bさん
「訪問は増えたんですけど、提案が増えなくて」
Aさん
「毎月4件の提案っていう営業計画は自分で作った んじゃないのか?」
「ちゃんと計画通りにやらないとダメだろう」
Bさん
「すみません、訪問を14件に増やして提案4件を達成します」
そして、7か月が経った期末に・・・
Aさん
「なんで1億円の目標に対して6,000万円しかいっていないんだ?」
Bさん
「訪問は増えたんですけど、提案が増えなくて」
Aさん
「毎月4件の提案っていう営業計画は自分で作ったんじゃないのか?」
「ちゃんと計画通りにやらないとダメだろう」
Bさん
「すみません、来期の訪問を毎月16件に増やして毎月4件の提案を達成します」
どこまで訪問を増やすつもりなんだろう???
Bさんは目標を達成できませんでした。
Aさんの指導の中で何が良くなかったのか考えてみてください。
そもそも、営業の計画って何なんだろう?
自分で作った営業計画なのに、
「うちの営業は計画をちゃんとやらない」「うちの営業は2か月、3か月経つと計画を気にしなくなる」
と多くの経営者や営業責任者が悩んでいます。
「なぜ、ちゃんとやらないのですか?」
「なぜ、2か月、3か月経つと気にしなくなるのですか?」
と営業担当者に聞いてみると3つの理由があるようです。
●はじめからできないと思っている
会社から押し付けられた売上目標に対し達成できないと思いながら作った営業計画。
はじめからできないと思っているから本気でやろうと思わない。
●安パイな営業計画を作っている
達成しないと詰められる、評価が下がると思いながら作った安パイな営業計画。
一生懸命にやらなくても達成できるから真剣に考えない。
●意味がないと思っている
案件や受注金額はマチマチだから正確な計画を作ることはできないし、計画通りにいかないから意味がない。
意味がないと思っているからちゃんとやらない。
みなさんの会社ではいかがでしょうか?
正確な営業計画って作れるのだろうか?
営業計画って計画通りにやれるのだろうか?
営業は様々な要因に影響される仕事。そして、その要因を正確に把握できないし、途中で変わってしまうことも多い仕事です。
お客さんのことでは
戦略や進捗、業績、予算、決裁者の考えや現場の状況、競合の提案、他の課題との比較・・・
自分の会社のことでは
商品力や販売促進の状況、他の部門のサポート、上司やチームの協力、能力やマインド、仕事量や環境・・・
これだけ様々なことに影響され、しかも正確に把握できないし、仮に把握したとしても変わってしまう・・・計画通りにいくわけがない。
これが営業です。
営業は計画通りにいかない仕事
計画通りにいかない仕事で最も大切なことは何でしょう?
それは、計画通りにいかないときに対策を考えることです。
つまり、PDCAのC(Check、検証)とA(Act、修正)です。
計画通りにいかない営業はCheck(検証)とAct(修正)の繰り返しで目標を達成する仕事です。
計画通りにいかないときに検証し対策を考え、そして実行し、そしてまた計画通りにいかないときに検証し対策を考え・・・この繰り返しで成果を上げる仕事。
このCheck(検証)とAct(修正)には、現状や実績との比較対象となるPlan(営業計画)が必要です。
良いか、悪いか、どこが良くて、どこが悪いのかを判断するための比較対象としての営業計画。
営業計画の役割は、計画通 りにいかないときの検証・修正の指標なのです。
営業計画がないとどうなるのでしょうか?
営業担当CさんがBさんと同じ営業計画を作っていました。
上期に新規案件で1,500万円の売上を獲得し、2,500万円の見込み案件を含めて4,000万円の売上を獲得しよう。
そして、新たに3,000万円分の見込み案件を獲得しよう。
5月からの計画は、
8月までに25件の訪問に対し毎月7件のお客さんを訪問する。
8月までに12件の提案に対し毎月4件の提案を獲得する。
営業活動をスタートして6月末・・・
・訪問は順調にでき6月は7件の計画に対し10件を訪問できた。
・しかし、提案は4件の計画に対して2件。
「訪問件数は達成しているけど、提案件数が達成しないのはなぜだろう?」
訪問したお客さん(ターゲット)が悪いのか?
訪問時の説明が悪いのか?
訪問したお客さんの規模や担当者の役職、訪問時の説明やお客さんの反応を振り返ってみました。
すると、
規模は昨年に受注したお客さんと変わらないからニーズはあるはず。
担当者の役職も部長とマネージャークラスなので悪くはない。
「良い商品だと思うけど今は必要ない」「今期は予算をとってないから来期に検討」というお客さんの反応が多かった。
お客さんの規模や担当者の役職は悪くないから、改善するべきことは訪問時の説明や商談方法だろう。
お客さんにメリットを理解させられていない、検討させる流れを作れていない。
Cさんは上司と相談し対策を考えました。
・商品購入のメリットを他社の事例としてまとめて訪問時に説明する。
・お客さんに課題を理解させるため現場課題を調査させてもらえるよう打診する。
・訪問件数を減らしても良いので、訪問前の事例作成や現場課題の調査に時間をかける。
そして計画を修正。
訪問:期初計画は7件→修正計画は6件
提案:期初計画は4件→修正計画は4件
すると7月は訪問が減って8件だったけれど提案は5件。
そして、上期中に4,000万円の売上と3,000万円分の見込み案件を獲得できました。
その結果、Cさんは売上目標の1億円も達成できました。
Cさんが売上目標を達成できた一番の理由は7月に対策を考え計画を修正したことです。
そして、計画を修正しようとしたのは、6月末に計画と実績を比較して「訪問件数は達成しているけど、提案件数が達成しないのはなぜだろう?」と考えたからです。
もし、Cさんが営業計画を作っていなかったらどうなっていたのでしょうか?
おそらく、
・売上目標に対し提案2件が少ないということはわかる。
・訪問10件が多いか少ないか、適正かどうかわからない。
・そのため、提案を増やそうと原因を考えずに訪問を増やそうとする。
・すると、訪問時の説明や商談方法を改善しないまま訪問が増える。
・説明や商談方法が原因なので訪問を増やしても提案は増えない。
・そして、翌月また同じ指導をしている。
Bさんに対するAさんの指導は何が良くなかったのか?
「毎月4件の提案を獲得するっていう営業計画は自分で作ったんじゃないのか?」
「ちゃんと計画通りにやらないとダメだろう」
営業計画を指標とし原因や対策を考えさせる指導ではなく、計画通りにいっていないことを否定的にとらえ、計画通りにやるよう指導していました。
その結果、Aさんは原因を考えず計画通りにやろうと単純に訪問件数を増やしたため売上目標を達成できませんでした。
営業では、計画通りにいかないことは悪いことではありません。
計画通りにいかないときに原因と対策を考えないことが悪いことなのです。
売上目標を達成するためには計画通りにいかないときに原因と対策を考えることが大切です。
・どこが計画通りにいっていないのか
・計画とどのぐらい差があるのか
・その原因は何なのか
・どのような対策をとるべきか
そのためには、
・検証・修正の指標である営業計画の役割を理解させる
・計画通りにいっていないことを否定的にとらえず報告させる
・計画通りにいっていないことに対し原因と対策を考えさせる
計画を達成していないことを堂々と報告させましょう。
そして「計画通りにいかないのはなぜなのか?」を考えさせましょう。
営業計画は、検証・修正することに価値があるのです。

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