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営業強化の問題点④

営業の9つの特性に関する障壁を解消しないと営業強化は進まない

2023年12月15日

営業社員のスキル、チームや組織の連携、マネジメントや指導、仕事量、モチベーション、・・・

どの会社でも営業部では様々な悩みを抱えています。


・ご案内営業、御用聞き営業から変わらない、提案できない

・売り慣れた今までの商品ばかりで新商品を提案しない

・せっかく新規顧客を獲得してもフォローしないから取引を拡大できない

・売上目標に対する意識が低い、貪欲さや成長意欲が乏しい

・部下の指導ができない、部下が成長しない

・戦略や計画を作れない、作っても徹底しない

・ ・・・・・

あげるとキリがない。


そして、改善しようと様々な施策を考え進めています。

目標やミッション、評価制度の見直し、教育や指導の促進、マネジメントの改善、情報共有の促進、モバイルやテレワークなど働く環境の改善、組織の見直し、上司と部下のコミュニケーション、チームの人間関係、・・・


しかし、変わらない、改善しない。


みなさんの会社はいかがでしょうか?



システム開発会社のセントテクノロジーでは「営業社員のモチベーション」に悩んでいました。

4月の期が変わったある日、社長Aさんと営業部長Bさん、人事部長Cさんがミーティングをしていました。


社長Aさん

「うちの会社は今まで技術力をいかしてシステム開発で発展してきた」

「でも、競合各社が安価なクラウドサービスを出しているし、このままでは売上を伸ばせない」

「せっかく当社も新サービスをリリースしたんだから、もっと提案して売らないと」


営業部長Bさん

「申し訳ありません」

「毎月の営業会議で指導しているんですが、なかなか提案しなくて」


社長Aさん

「なんで指導しているのに提案しないんだ?」


営業部長Bさん

「マネージャーが毎週のチームミーティングで指示しているんですけど、うちの営業社員は今までの御用聞き営業に慣れてしまって提案しないんですよ」


社長Aさん

「だったら、マネージャーが同行して提案すればいいじゃないか」


営業部長Bさん

「マネージャーも自分のお客さんに営業しないといけないからやりきれないですよ」

「だから、営業社員一人一人が積極的に提案するようにならないといけないんですけれど、指導してもやらないし、そもそも受注を獲得しようという熱意が足りないんです」

「一人一人のモチベーション自体を改善しないと」


社長Aさん

「どうしたらモチベーションを上げられるんだ?」


人事部長Cさん

「今の目標管理が合わないんじゃないですか?」

「システム開発も含めた年間の売上目標しかないですが、新サービスは受注金額が小さいから達成しにくいですよ」

「新サービスを重視させるためには、サービス別の売上目標を設定しないといけないと思うんです」


社長Aさん

「Bさん、サービス別の売上目標を設定するっていうのはどうか?」


営業部長Bさん

「新サービスを売りにくい業界もあるのでチームや営業担当者ごとに目標を設定しないといけないですが、必要だと思います」


人事部長Cさん

「あと、目標に合わせて評価制度の見直しも必要になると思います」

「新サービスの売上金額の点数が高くするような評価を設定した方がいいと思うんです」


営業部長Bさん

「そうすると評価が不公平にならないですか?」

「担当している業界によって新サービスを売りやすい営業と売りにくい営業がいるので不公平になりますよ」


人事部長Cさん

「たしかに、そうですね」

「ただ、必要だと思いますので新サービスの売上を重視させて、かつ不公平にならないよう設計してみます」


社長Aさん

「わかった、サービス別の売上目標はBさんが検討、Cさんは評価制度を設計してみてくれ」

「あと、マネージャーの指導も重要だから、週に1回はチーム単位で新サービスの営業会議もやってくれ」


営業部長Bさん、人事部長Cさん

「わかりました」



4月中に新サービスに対するモチベーション改善策をかためて5月に営業社員全員に説明し進めることになりました。


・サービス別の売上目標

・サービス別の売上を含む評価制度

・チーム単位の新サービス営業会議



そして9月

営業部長BさんとマネージャーDさんが状況を確認していました。


状況は、新サービスの提案は若干増えたけれど微増程度、売上は0円。


営業部長Bさん

「なんで少ししか提案が増えていないんだ?」


マネージャーDさん

「毎週、新サービス営業会議で提案するように指導しているんですがなかなか増えないんです」


営業部長Bさん

「指導しているのに提案しないってどういうことだ?」

「営業社員にとっては自分の評価にもかかわるんだぞ」


マネージャーDさん

「みんな、御用聞き営業しかやってきていないから、積極的に提案することに尻込みしちゃってるみたいで」


営業部長Bさん

「そんなのやるかやらないかだろう」


マネージャーDさん

「でも、今期の売上目標を考えたら新サービスより受注金額の大きいシステム開発の営業をやらないと達成できないですよ」

「それにみんな忙しいんです。営業担当の藤田さんなんてトラブル対応でそれどころじゃないし」


営業部長Bさん

「それはわかるけど新サービスの売上を上げないと」


マネージャーDさん

「今期の売上目標を達成できなくてもいいんですか?」

「それに、これ以上厳しく指導するとパワハラって言われるし、辞めちゃいますよ」


営業部長Bさん

「そうだよな・・・」

「大変なのはわかるけど少しでも新サービスの提案が増えるよう頑張ってくれ」



そして3月

新サービスの売上は0円。提案は若干増えたけれど・・・。



なぜ、営業社員は積極的に提案しなかったのでしょうか?


サービス別の売上目標、サービス別の売上を含む評価制度を設定し、チーム単位の新サービス営業会議も進めたのに・・・


みなさんも何が良くなかったのか考えてみてください。



新サービスを提案しない理由を営業社員に聞いてみると、


・仕事が忙しくて時間がない

・システム開発の提案やトラブル対応があって新サービスの提案ができない

・提案しようにもお客さんのニーズがない

・そもそも会社として新サービスの戦略が明確でない

・今期の売上目標はシステム開発の営業に力を入れた方が達成できる


営業社員の話を聞きながら営業部長Bさんはこう思っていました。


・忙しいって言うけど1年間ずっとじゃないだろう

・システム開発の提案とかトラブル対応は一時的なものでずっとじゃないだろう

・ニーズがないって言うけどニーズを見つけるのが営業の仕事だろう

・戦略が明確でないって言うけど期初と下期に営業部の戦略や計画を説明しただろう

・不公平にならないようにサービス別の目標や評価制度まで設定しただろう

・今期の売上目標も大切だけど、来期以降どうするんだよ



営業の特性とは?


ここで「そもそも営業ってどういう仕事なのか?」について考えてみましょう。



営業は、

・場数や経験で成長してきた人が多く、長い間の場数や経験で身につけた考え方ややり方は凝り固まった「癖」と同じようなもの。

・場数や経験で身につけた考え方ややり方は整理され体系化されていないため感覚的、感性的に仕事をしている。

・場数や経験で力をつけた上司も多く、上司も過去の自分の経験に依存しやすい。


営業の特性①

癖と同じようなものである営業の考え方ややり方は、指示や指導だけでは変えにくい。


営業の特性②

感覚的、感性的に仕事をしているため論理性、体系化が弱い。


営業の特性③

営業現場(現在)と自分の経験に依存する上司(過去)の間でギャップが生じやすい。


営業は、

・個人で売上目標を持ち個人で考え動くことが多い仕事。そのため個人主義的体質になり、チームや複数名で考えることが少ない。


営業の特性④

自分の行動やレベルを客観的に判断しにくく、そのため改善しにくい。


営業の特性⑤

一人で考えるため、難しい仕事や経験のない新たな仕事を進めにくく今までの慣れた仕事ややり方に戻りやすい。


営業は、

・今期の売上(短期、今)ばかり意識してきたため来期以降(中長期)に対する意識が低い。


営業の特性⑥

成果がでるかわからない仕事、また中長期な成果に対する仕事を取り組ませにくい。


営業は、

・会社や上司が決めた売上目標(指示)に対し仕事をするというトップダウン体質、結果主義が強い。


営業の特性⑦

受け身体質になりやすく、積極性や自主性、自ら考える力が弱くなる。


営業は、

・仕事内容が多様で流動的。商談、提案、条件交渉、トラブル対応・・・と仕事内容が多様で、やることもやり方も毎日、毎回異なり、相手の状況や性格によっても変えなければならない。

・計画通りにいかない、思い通りにいかない仕事。


営業の特性⑧

場当たり的になりやすく戦略や施策、計画など継続的に徹底することが難しい。


営業の特性⑨

二度手間三度手間などミス、ロス、無駄が多く、ミス、ロス、無駄を明確にしにくい。


この9つが営業の特性です。

この特性に対しセントテクノロジーのモチベーション改善策を見てみましょう。


目標や評価制度を設定し、新サービス営業会議で指導し新サービスの提案を促進しようとしていますが・・・


・指導するだけでは新しいやり方が必要な新サービスの提案は進まない。

・新サービスの提案を進めている営業現場と営業部長Bさん(上司)の間でギャップが生じる。

・新サービスの提案が進まないときに営業現場自らが課題と対策を考え改善しようとしない。

・今期の売上目標のために新サービスではなく今まで売ってきた受注金額の高いシステム開発の提案を重視する。

・システム開発の提案やトラブル対応があるのは当たり前。新サービスの提案を徹底できなくなる。

・・・・・・。


これらは営業の9つの特性を考えればわかったはずです。

しかし、セントテクノロジーは対策を考えていませんでした。


新サービス営業会議の他に、

ギャップを解消し課題と対策を考えるために、営業部長Bさんと営業現場が新サービスの提案について議論する場が必要だったのかもしれません。



営業という仕事は常に9つの特性に影響されます。


営業強化や営業改革を進めようとしても9つの特性が障壁になり、取り組まない、進まない、徹底できない・・・。


目標やミッション、評価制度の見直し、教育や指導の促進、マネジメントの改善、情報共有の促進、モバイルやテレワークなど働く環境の改善、組織の見直し、上司と部下のコミュニケーション、チームの人間関係、・・・

営業強化や営業改革の施策を考えるときは、あわせて9つの特性の対策も考えましょう。



場数や経験で成長してきたため変えにくいこと、今期の売上ばかり考えること、場当たり的で1つのことを徹底できないこと、・・・

これらは営業社員個人の問題ではなく、営業の特性に起因することです。


9つの特性を踏まえた営業強化でなければ進みません。

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