経営課題や戦略情報の使い方
経営課題や戦略はひとつ落とした情報から会話に入る
2019年1月15日
ご案内営業やご用聞き営業から提案営業や課題解決型営業に変えるということは、商品を理解させる、要望を聞くだけでなく、顧客の課題を聞き出したり、課題や解決策を提案するということ。
しかし、一生懸命に顧客の経営課題や 戦略を調べて訪問し、課題を聞き出そうとしてもうまくいかない、聞き出せない・・・
求人広告の営業担当Aさんが、スーパーマーケットを展開している会社の人事担当Bさんと面談した時のことです。
Aさんは、事前に顧客のホームページから経営課題や戦略を調べていきました。
IR資料に・・・
「鉄道沿線の再開発や大規模マンションなどの新設により各店の周辺環境が変化している」
「周辺環境の変化への対応力を強化し既存店の収益力を向上する」
そして、人事担当Bさんと面談・・・
Aさん、
「御社のIR資料を見たのですが、鉄道沿線の再開発やマンションの新設などで周辺環境が変化しているお店が多いんですか?」
Bさん
「そのようですが・・・」
Aさん
「そうすると、需要も変わるでしょうからお店の対応も変えていかないといけないんですよね?」
Bさん
「私は人事なのでよくわかりませんが、そうだと思いますよ」
Aさん
「採用 面でも何か変える必要はあるんですか?」
Bさん
「あるかもしれませんが、店舗のことだから私にはわかりません」
Aさん
「・・・・・」
Aさんは、「周辺環境の変化への対応力を強化」という経営課題を調べて、会話の中で採用面の課題を聞き出そうとしています。
しかし、これでは「採用面で何かお困りのことはありませんか?」とダイレクトに聞くご用聞き営業と変わらない・・・
その結果、会社に戻ってきて
「相手が人事担当者だから会社の経営課題や戦略の話をしたって意味がないんですよ」
「担当者だから」「人事だから」「総務だから」「情報システムだから」「購買だから」・・・「経営課題や戦略の話をしたって意味がないんですよ」
よく聞く言葉です。
そんなことはありません。
各部門や各担当者の仕事は、「経営課題や戦略→部門課題や戦略→チーム課題や戦略」と落とされているものです。
ということは、担当者だから、人事だから、総務だから・・・関係ない、意味がないということはありません。
意味を持たせるためには、経営課題や戦略を相手の立場に落とす必要があります。
同僚の営業担当Cさんが面談した時のことです。
Cさん
「そういえば、御社のお店のある〇〇駅は再開発しているみたいですね」
「鉄道沿線の再開発やマンションの新設が増えてお店の環境が変わっているようですけど、販売スタッフへの影響もあるんですか?」
人事担当Bさん
「そうですね、店舗の広さだけじゃなくて来客数や時間帯も考慮して体制やシフトを組みますからね。来店者状況が変わると販売スタッフの体制も変えないといけな いから」
Cさん
「たしかに、近くにファミリー向けのマンションができたりすると、平日夕方の来店者数も増えるので販売スタッフも大変ですよね」
Bさん
「そうなんです、ピークの時間帯は、レジ打ちだけじゃなくて、陳列した商品も切れるので品出しも必要だし、お客さんから声を掛けられることも多いので来店者対応も必要で」
Cさん
「でも、周辺環境の変化で全体的な来店者数が変わるだけでなく、時間帯によっても変わるので適正な体制を組むのって難しいし、お店じゃないとわからないですよね」
「そうすると、販売スタッフの採用はお店が独自で進めているんですか?」
Bさん
「そうなんですけど、コンプライアンスも徹底しないといけないし、全社的な人件費の管理もしないといけないので、採用の管理は人事でやらないといけないんですよ」
Cさん
「そうなんですか、店舗数も多いし大変ですね」
Bさん
「それに、アルバイトが多くて、急な欠勤や退職ですぐに採用しないと、ということも多いので管理するのは大変ですよ」
Bさんは、「周辺環境の変化への対応力を強化」という経営課題から「全店舗のコンプライアンスとコスト管理が大変」という人事部の課題を聞き出しています。
AさんとBさんの違いはどこにあるのでしょうか?
いくつか違いはありますが、大きな違いは会話の内容です。
Aさんは、
「鉄道沿線の再開発やマンションの新設などで周辺環境が変化」
「需要も変わるでしょうからお店の対応も変えていかないといけない」
という経営課題そのものの会話をしています。
Bさんは、
「鉄道沿線の再開発やマンションの新設が増えてお店の環境 が変わっている」
「販売スタッフへの影響」
と経営課題に対する販売スタッフの体制についての会話をしています。
この販売スタッフの体制は人事部として無関係なことではないため、会話が盛り上がり課題を聞き出すことができたのです。
「周辺環境の変化への対応力を強化」という経営課題は、様々な部門やチームに落とされ、また様々な部門やチームの仕事は影響を受けています。
みなさんも考えてみてください。
「周辺環境の変化への対応力を強化」という経営課題に対して
人事部には「販売スタッフ採用の柔軟性、および全社的なコンプライアンスとコスト管理の徹底」と落とされている、また影響を受けている・・・
では、
総務部にはどのように落とされていますか?また影響を受けていますか?
情報システム部にはどのように落とされていますか?また影響を受けていますか?
購買部にはどのように落とされていますか?また影響を受けていますか?
この経営課題からひとつ落とされた情報について会話をすることで、経営課題から派生した部門やチームの課題を聞き出すことができるのです。
経営課題や戦略を調べて会話するのではなく、経営課題や戦略からターゲットの部門に落とした情報を考え準備し、会話しましょう。
ひとつ落とした情報で会話をして盛り上がれば経営課題や戦略についても聞けるのです。
経営課題や戦略に対して相手が関係のある、興味のあるひとつ落とした情報から入りましょう。
そして、この経営課題や戦略に対して相手が関係のある、興味のあるひとつ落とした情報を考えることが、自然と顧客の課題を考える力になるのです。
(余談)
よく「IR情報を見た」「中期経営計画を読んだ」「有価証券報告書に書いてあった」・・・と言ってから経営課題や戦略の話をする人がいるのですが、この言葉はタブーです。
ほとんどの人が自分の会社のIR資料を読んでいません。
自分の会社のIR資料を読んでいない場合に社外の人から「IR資料を見た」と硬い言葉で言われると、知っているべき情報を読んでいないというネガティブな意識にさせてしまい引かれる可能性があります。
※ 参考・・・AさんとCさんの会話の入り方を比べてください。
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