新人営業教育の5つのテーマ
新人だから商品説明…3年経ったらご案内営業しかできなくなっている
2021年7月15日
新入社員が入ると会社や事業、商品について入社研修で教え、営業の教育は現場に配属されてからOJT。
その結果、ついた先輩によって、育たない、モチベーションが上がらない、辞めてしまう。
せっかくお金をかけて採用した貴重な営業社員に対し、人任せ、運任せの教育で良いのでしょうか?
考え方からマインド、スキル、人間性まで総合的な力が必要な営業では、初めの教育が大切です。
ある会社に10人の新入社員が入社しました。
4月から5月の2か月間、人事部主催で新入社員研修
・社会人のマナーや常識、日々の行動について
・会社や組織の役割について
・事業内容や仕事について
・商品やサービス、基礎的な技術について
そして、6月から各部署に配属。
営業部には4名の新入社員が配属されてきました。
営業部に配属されると2日間の研修
・営業部内のチームの説明
・仕事内容やシステムの使い方
研修後、各チームに配属され先輩についてOJTがスタート。
新入社員Aさんは、先輩Bさんにつきました。
先輩Bさんと同行して・・・
Bさんの営業を見ながら商談や提案の進め方を学び、提案書や見積書の作成、受注登録を教えてもらいました。
報告書の作り方を教えてもらい営業会議にも参加しました。
先輩Bさんの指導
「営業の仕事は受注を獲得すること、売上を上げること」と営業の考え方について教わりました。
まず「商品説明をちゃんとできるようにならないと」と指導され、商品説明の練習。
あと「提案書や見積書を作るために必要な質問事項を覚えてヒアリングしないと」と質問事項を渡され丸暗記し、ヒアリングのロールプレイング。
Aさんの入社1年後
Aさんは独り立ちしBさんの指導を受けながら自分で営業をしていました。
Bさんには、お客さんに訪問する前に 、競合商品より優れていることをアピールするために商品の説明方法を教えてもらっていました。
実績や事例、参考資料を使って説明する方法を。
ある日、見込み案件を獲得すると・・・
・提案書を作るために技術部と打ち合わせ
・お客さんの決裁者が納得していないようなので説得方法を上司と相談
・値引きして提案するため社内の承認をもらおうと経営企画部に説明
そして、毎日残業。
新入社員Aさん
「なんでいちいち経営企画部に説明しないといけないんですか。技術部の調整も営業がやらないといけないし、こんなんじゃ営業活動ができないですよ」
先輩Bさん
「うちは人が少ないからしょうがないんだよ」
「経営企画部の承認をもらわないと値引きできないし、技術部に相談しないと提案書を作れないだろ」
Aさんの入社4年目
一生懸命に受注を獲得しようと商品のしくみや強み、実績や事例を説明していました。
そして、見込み案件を獲得すると面倒くさいと思いながらも技術部や経営企画部との調整もしていました。
しかし、上司から
「なんで商品説明ばかりでお客さんの課題を聞いてこないんだ」
「お客さんがどうしたら納得してくれるかは、お客さんの立場 で考えないとわからないだろ」
「日頃から技術部や経営企画部と関係を作らないとダメだろ。だから社内調整や説得に時間がかかるんだよ」
と説教されてばかり。
ここで問題です。
入社4年目のAさんは、なぜ・・・
お客さんの課題を聞いてこないのか?
お客さんの立場で考えられないのか?
日頃から技術部や経営企画部と関係を作ろうとしないのか?
視点は、日々の環境で身につくもの。
適切な考え方は、適切な行動のもとになるもの。
考え方ややり方なき行動の継続は、癖や習慣のように固まってしまうもの。
Aさんは入社してからどのように育てられたのでしょう?
Aさんが入社してからの3年間を振り返ってみると・・・
Aさんが教わってきたことは、
「商品説明をできるようにならないと」「提案書や見積書を作るために必要な質問事項を覚えてヒアリングしないと」「実績や事例、参考資料を使ってお客さんに説明する方法」
・・・すべて、お客さんのことではなく、商品や自分の会社のこと。
「営業の仕事は売上を上げること」と漠然と言われ育ち、技術部や経営企画部の調整は、「人が少ないからしょうがない」「承認をもらわないと提案できない」「相談しないと提案書を作れない」
・・・社内調整は、積極的に取り組むことではなく、しょうがないからやること。
商品や自分の会社のことばかりで、「お客さんの立場で考えること(顧客視点)が必要」ということも「顧客視点で考える方法」も教えてもらっていないし、「顧客視点になる環境」も与えられていません。
そして、技術部や経営企画部の調整や説得方法は教えてもらっても、会社の中での営業の役割を教えてもらえず、営業の仕事にとって社内調整がどのようなものかを教えてもらっていません。
営業として成長し活躍してもらうためには、はじめに営業についての適正な考え方を教え、将来身につけて欲しい営業方法に対し教育内容を考えなければなりません。
提案営業をできる人材になってもらいたいのであれば、提案営業をできる人材になるような教育を。
しかし、提案営業をできる人材になって欲しいと思いながら、「新人だからまず商品説明」という教育をしている営業組織が多く見受けられます。
当然、商品をアピールすることばかり考えて、顧客視点ではなく自社視点でしか考えられない営業に育ってしまいます。
顧客視点で提案する営業ではなく、自社視点のご案内営業に・・・
また、顧客のニーズが多様化し、商品や技術の進歩が速い今日の営業は、商品を理解してもらい売る役割から、顧客の様々なニーズと自社の戦略や商品、技術力の間で、双方を調整しながら取引を実現していく役割に変わってきています。
つまり、営業の役割は、顧客と自分の会社の双方をコントロールして取引を実現すること。
しかし、「営業の仕事は受注を獲得すること、売上を上げること」と漠然と教えられ、その結果、顧客への商談や提案が自分の仕事で、社内調整(社内をコントロールする仕事)はじゃまなものとしか思わなくなる・・・
後輩を指導する立場になった入社5年目のAさんは、
同じように、後輩に対し自分の会社や商品の立場で考えること、商品を説明することばかり指導し、技術部や経営企画部の調整は「人が少ないからしょうがない」と教え、そして、その後輩も次の後輩に・・・
営業として成長し活躍してもらうためには下の5つのテーマの教育が必要になります。
①.会社や事業の中での営業の役割
顧客と自分の会社の双方をコントロールして取引を実現すること。
そして、コントロールするために必要なこと。
売上や受注だけでなく、利益や回収、契約。
②.戦略や事業に対する適正な営業のやり方
新人だからまず商品説明ではなく・・・
将来身につけて欲しい営業のやり方、会社の戦略や事業にとってあるべき営業のやり方。
③.顧客視点を身につけるために必要なこと
商品や技術のことばかりでなく・・・
営業にとって顧客視点がなぜ必要なの か、顧客視点とは何か。
顧客視点を身につけるために必要なこと、顧客視点になるための環境。
④.営業の特性に対し必要なこと
引き合い対応やトラブル、根回しなど雑多で流動的な仕事にとって必要なこと。
技術部や経営企画部など様々な関係者を調整するために必要なこと。
人間関係で成り立つ仕事にとって必要なこと。
⑤.営業を頑張ることの価値
売上目標の追求、顧客との交渉、トラブル対応など苦しいことが多い営業という仕事を頑張る価値。
売上や評価ばかりでなく、営業を頑張ることで身につく力や身につけた力で将来実現できること。
営業は、初めに携わるときの考え方にその後の行動が影響され、その後の行動の積み重ねという経験により凝り固まってしまうものです。
新人だからお客さんの課題を考えさせることも難しいし、提案営業を教育してもできないから、まずはご案内営業を・・・3年経ったらご案内営業が凝り固まってしまい提案営業に変えられない。
「新人だから」ではなく必要なことは教えましょう。
経験により凝り固まってしまう営業は初めの教育が大切なのです。

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