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顧客に興味を持たせる提案書のタイトル

積極的に検討させる提案書のタイトルは商品ではなくお客さんの課題を書く

2025年2月15日

現在、多くの会社で受け身の営業から積極的な営業に変えようとしています。


この積極的な営業の基本は積極的に提案すること。

お客さんから依頼される前にお客さんの課題や解決策を自ら考えて積極的に提案する。


多くの営業の人が、積極的に提案を進めようと一生懸命に考えて提案書を作成しています。

では、その提案書の表紙のタイトルにどれだけこだわっていますか?



コールセンター会社CRMリーディングの営業担当Aさんが、アパレルメーカーのセントジャパンを訪問しました。


お客さんのカスタマーセンター(コールセンター)は、問い合わせやクレームを対応していて、現在CRMリーディングの競合会社に外注していました。


訪問したときにお客さんから聞けたカスタマーセンターの情報は以下のとおり。


・様々な問い合わせやクレームが入ってくる。

「購入したパンツの丈が短すぎるので交換してほしい」

「品番123-45のロングスカートで薄いブルーの色はないんですか?」

「購入したあと洗濯機で1回洗っただけで丈が縮んでしまった」

など


・問い合わせは高齢者から主婦層、若年層と幅広く、以下の情報を聞いている。

「年齢、住んでいる地域、職業」

「問い合わせやクレームの理由・・・白のニットに合わせるブルーのスカートを探している、など」


そして、お客さんは、

「カスタマーセンターには有効な顧客の声が多いのに、商品企画に活用しようと考えていないんです」

「年齢や職業別に、問い合わせやクレーム内容とその理由を整理して分析すれば使えるはずなのに」


営業担当Aさん

「なんで使おうとしないんですか?」


お客さん

「うちの商品企画部は、売上データや競合の売れ筋情報から企画するという今までのやり方から変えないんですよ」

「どの店で何が売れているかという情報はリアルタイムに共有して商品企画に活かしているんですけど」


Aさん

「もったいないですね」


お客さん

「そうですよ、だから商品ラインナップの拡大が進まないんです」

「今まで中心だった主婦層から若年層に商品ラインナップを拡大しようという会社の方針なのに、若年層向けに売れる商品を企画できないんですよ」


Aさん

「よろしければ、顧客の声を有効活用するためのご提案をまとめてきましょうか?」


お客さん

「でも、商品企画部が考えていないから検討できるかわかりませんよ」


Aさん

「かまいません、今後のご参考にしていただければありがたいので」


お客さん

「わかりました、ご提案していただいたら商品企画部に話してみますので」



そして、Aさんは会社に戻り提案書を作成しました。


お客さんに聞いた情報から商品企画の課題と解決策、顧客の声を活用したときのメリットを整理して提案書を作成し、最後に表紙のタイトルを作成。



ここでみなさんに問題です。

下の3つの中からAさんの提案書のタイトルとして最も良いものを選んでください。


提案書のタイトル①

タイトル「顧客の声の有効活用を実現するカスタマーセンターのご提案」

サブタイトル「多様な顧客の声に対する属性別整理と分析するしくみを整備」


提案書のタイトル②

タイトル「カスタマーセンターの改善による商品企画力強化のご提案」

サブタイトル「商品企画における顧客の声の有効活用を促進」


提案書のタイトル③

タイトル「若年層ニーズの収集力強化による商品ラインナップ拡大のご提案」

サブタイトル「売上データや競合の売れ筋情報に加えて若年層向け企画力の強化を実現」



Aさんが作成した提案書のタイトルは①でした。


Aさんが提案してから2週間後にお客さんから連絡がきました。

「せっかくご提案していただいたのに、商品企画部に必要ないと断られてしまいました」


何が良くなかったのでしょうか?



提案書の表紙のタイトルは一番はじめに目にする部分です。

はじめに目にする提案書のタイトルにより提案に対する相手の印象が変わります。


お客さんの状況は以下のとおりです。

・カスタマーセンターの改善は検討していない。

・商品企画部は売上データや競合の売れ筋情報から企画している。

・顧客の声を商品企画に活用しようと考えていない。

・会社の方針は、主婦層から若年層に商品ラインナップを拡大。

・商品ラインナップの拡大が進まない、若年層向けに売れる商品を企画できない。


この状況にいるお客さんは提案書のタイトルにどのような印象を持つのでしょうか?



Aさんが作成した提案書のタイトル①

「顧客の声の有効活用を実現するカスタマーセンターのご提案」

「多様な顧客の声に対する属性別整理と分析するしくみを整備」


「カスタマーセンター」「顧客の声の分析」「顧客の声の有効活用」の提案という印象。


CRMリーディングの商品は「カスタマーセンター(コールセンター)」です。

売込みや商品紹介の提案という印象を持たせてしまいました。

しかし、カスタマーセンターの改善を検討していないため、興味を持ちません。


また、検討していない「顧客の声の分析や有効活用」にも興味はありません。必要ないと否定的な意識にさせてしまいます。


はじめに目にする提案書のタイトルで否定的な意識にさせてしまいました。

そのため、その後の提案内容に対して否定的な意識のまま聞かせることになりました。

その結果、必要ないと断られてしまいました。



提案書のタイトル②

「カスタマーセンターの改善による商品企画力強化のご提案」

「商品企画における顧客の声の有効活用を促進」


このタイトルも同じ理由で断られてしまいます。


商品企画部は、売上データや競合の売れ筋情報から企画していて「カスタマーセンターによる商品企画力」や「顧客の声の有効活用」は考えていません。

そのため、興味を持たせることができず、必要ないと否定的な意識にさせてしまいます。



最も良い提案書のタイトルは・・・提案書のタイトル③


訪問時に聞いた情報から、商品企画部では会社の方針により商品ラインナップの拡大を進めるというミッション(商品企画部にとって重要なこと)があり、若年層に売れる商品を企画できないという課題があると考えられます。


「若年層ニーズの収集力強化による商品ラインナップ拡大のご提案」

「売上データや競合の売れ筋情報に加えて若年層向け企画力の強化を実現」


このタイトルは、商品企画部が重要だと思っているミッションや課題に対する提案という印象を与え、興味を持たせることができるのです。


また、CRMリーディングの商品である「カスタマーセンター」という言葉が入っていないため売込みや商品紹介の印象を持たせず前向きに提案を聞かせることができます。



はじめの印象で、その後に説明する提案内容に対する興味や理解も変わってくるのです。


はじめに「関係ない、必要ない」と思わせてしまうと、その後に説明する提案内容も否定的にとらえられてしまいます。


はじめに「自分に関係あるかもしれない、必要かもしれない」と思わせると、その後に説明する提案内容を前向きに聞かせることができます。



提案書のタイトルを「商品やサービス+抽象的なメリット」と定型的に作成している人が多く見受けられます。

みなさんの提案書はいかがでしょうか?


「○○システムによる業務効率のご提案」

「採用支援○○ソリューションによる人材採用強化のご提案」

「当社自動化設備○○による生産ライン省力化のご提案」

「販売促進サービス○○による集客力強化のご提案」


これらはお客さんが解決策となる商品を探しているときは通用します。

しかし、課題や解決策を検討していない、商品を探していないときの提案では通用しません。


つまり、自ら積極的に提案し、課題や解決策を理解させて検討させようという提案では通用しないのです。



はじめに「自分に関係あるかもしれない、必要かもしれない」と思わせるために・・・


「自分に関係あるかもしれない」と思わせるためには、お客さんにとって重要なこと(関係があること)をタイトルに入れましょう。

「商品ラインナップ拡大」


「必要かもしれない」と思わせるためには、お客さんが考えている課題(必要と思うこと)をタイトルに入れましょう。

「若年層向け企画力の強化」


そして、「関係ない、必要ない」と思われてしまう商品に関する言葉、商品のアピールはタイトルから外しましょう。

「カスタマーセンター」


「若年層ニーズの収集力強化による商品ラインナップ拡大のご提案」

「売上データや競合の売れ筋情報に加えて若年層向け企画力の強化を実現」



提案書はお客さんの社内の決裁者や関係者が見る可能性があるものです。

提案書は直接説明する相手以外に、決裁者や関係者を説得するために有効なツールです。


まずは、誰を説得しないといけないのか?を考えましょう。


そして、提案書で一番はじめに目にする表紙のタイトルでは、説得する相手に「関係ない、必要ない」と思われる商品に関する言葉や商品アピールは外しましょう。


「自分に関係あるかもしれない、必要かもしれない」と思わせるために、説得する相手の重要なことである”ミッション”と悩んでいる”課題”の2つを入れましょう。



提案書はお客さんに興味を持たせて理解してもらうものです。

提案書のタイトルは「お客さんが何に興味を持つのか、何が必要なのか」を考えて作成するものです。


自分が伝えたい、アピールしたいことではなく、お客さんの立場で考えて作成しましょう。

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