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営業の役割

顧客と自分の会社の双方をコントロールし双方の満足を実現すること

2024年3月15日

お客さんの要望を聞いてくるばかりの営業。

自分の会社の商品やできることを伝えるばかりの営業。


その結果、

お客さんの要望を聞いてきても、自分の会社で対応できない、してくれない。

商品やできることを伝えても、理解してくれない、検討してくれない。



営業管理システムを販売しているリーディングシステムの営業担当Aさんが設備機器メーカーのセントテクノロジーを訪問しました。


リーディングシステムの営業管理システムの特徴は、

・営業のプロセスや進捗情報、商談情報を共有できる。

・カスタマイズが容易でお客さんの営業に合わせて柔軟に管理方法を変えることができる。

・リーディングシステムが持っている名刺管理システムと営業管理システムの連携が強み。



お客さん

「来期に導入するための営業管理システムを探しているんです」


お客さんに営業の状況や要望を聞いてみると・・・


セントテクノロジーの営業は、

・お客さんと一緒に設計しながら受注する開発営業、製品を売る製品営業の2種類ある。

・開発営業と製品営業は営業プロセスが異なる。

・営業社員や営業チームは開発営業と製品営業の両方を並行して行っている。


そして、要望は、

・開発営業と製品営業の双方を一元管理し柔軟にチェックしたい。

・営業社員個人ごと、チームごとの売上や進捗をリアルタイムで共有したい。


また、

・現在リード顧客を管理しているマーケティングオートメーションシステムと連携したい。



営業担当Aさんが一通り営業管理システムについて説明すると・・・


お客さん

「開発営業と製品営業の一元管理には良さそうですね」

「マーケティングオートメーションシステムとの連携はどうですか?」


営業担当Aさん

「会社に戻って確認してみます」

「あと、名刺情報と連携させると便利だと思うのですがいかがですか?」


お客さん

「名刺管理システムはすでに導入しているので必要ないです」


営業担当Aさん

「そうですか、わかりました」

「マーケティングオートメーションシステムとの連携について社内で確認してみます」



そして、会社に戻り技術部長Bさんと営業部長Cさんとミーティング・・・


技術部長Bさん

「マーケティングオートメーションシステムとの連携は経験がないから難しい」


営業担当Aさん

「セントテクノロジーの案件はマーケティングオートメーションシステムとの連携が必要なんです」


技術部長Bさん

「それに、お客さんのシステムの調査から必要になるから価格も高くなるよ」


営業担当Aさん

「そうですか・・・」


営業部長Cさん

「名刺管理システムとの連携はどうなんだ?」


営業担当Aさん

「すでに導入しているので必要ないって言ってました」



そして、お客さんを訪問して提案すると・・・


お客さん

「そんなに費用がかかるんだったら無理ですよ」

「開発営業と製品営業の一元管理では御社が一番良かったけど、ちょっと難しいですね」


結局、失注しました。



なぜ、失注してしまったのでしょうか?

Aさんの問題点を探してみてください。



同じ特徴の営業管理システムを販売しているアドバイスソリューションの営業担当Dさんがセントテクノロジーを訪問しました。


マーケティングオートメーションシステムとの連携について聞いてみると・・・

販売促進部が獲得したリード顧客を営業部に引き継いだあとにフォローしていないことが多かった。

販売促進部と営業部の連携強化のためにはマーケティングオートメーションシステムとの連携は必要。


マーケティングオートメーションシステムとの連携について話したあと・・・


営業担当Dさん

「そういえば、設備機器の保守点検はグループ会社のセントマネジメントさんが担当しているみたいですね」

「セントマネジメントさんとの連携は進んでいるんですか?」


お客さん

「いや、ぜんぜん」

「うちの営業が受注したときにセントマネジメントが同行して保守点検を引き継ぐぐらいで」


営業担当Dさん

「保守点検では設備の入れ替えのタイミングも把握できるでしょうから販売を担当している御社と連携した方がいいんじゃないですか?」


お客さん

「そうなんですよ」

「実は、再来期にセントマネジメントにも営業管理システムを導入させて連携強化を進める計画なんです」


営業担当Dさん

「そうなんですか」

「そういえば、名刺管理システムは導入しているんですか?」


お客さん

「導入していますよ、名刺情報と商談議事録の共有に使っているみたいです」


営業担当Dさん

「営業管理システムと連携させないんですか?」


お客さん

「今のところ検討していないですが」


営業担当Dさん

「御社の営業の方は新規開拓営業もやっているようなので新たに登録する顧客情報も多いですよね?」

「名刺管理システムと営業管理システムの双方に登録させると負担になるのではと思いまして」


お客さん

「たしかに、二度手間で負担になるな・・・」


営業担当Dさん

「それに商談議事録と商談履歴も二重登録になるので営業管理システムを使わなくならないですか?」


お客さん

「たしかに・・・」

「社内で話してみるから名刺管理システムとの連携も提案してくれますか?」


営業担当Dさん

「わかりました、マーケティングオートメーションシステムと名刺管理システムとの連携をまとめてご提案させていただきます」



そして、会社に戻り技術部長Eさんと営業部長Fさんとミーティング・・・


技術部長Eさん

「マーケティングオートメーションシステムとの連携は経験がないから難しい」


営業担当Dさん

「セントテクノロジーの案件はマーケティングオートメーションシステムとの連携が必要なんです」


技術部長Bさん

「それに、お客さんのシステムの調査から必要になるから価格も高くなるよ」


営業担当Dさん

「再来期にグループ会社のセントマネジメントにも営業管理システムを導入する計画があるんです」

「セントマネジメントは全国に20拠点、営業社員が500名いるから、この案件を受注すれば再来期に一気に拡大できるんです」


営業部長Fさん

「そうなのか、うちの会社は営業管理システムでは後発だから大型案件はなんとしても受注しないと」


営業担当Dさん

「それに、名刺管理システムとの連携も検討させたのでもっと大きくなりますよ」

「来期の売上が3千万円、再来期にはセントマネジメントの営業管理と名刺管理システムの両方の受注が見込めるので1億5千万円にはなりますよ」


営業部長Fさん

「大きいな」

「Eさん、連携の価格を下げられないですか?」


技術部長Eさん

「そうですね、本部長にOKもらえるよう説得してみます」



そして、Dさんは営業管理システムと名刺管理システム、マーケティングオートメーションシステムの連携を受注しました。



Dさんは、なぜ受注できたのでしょうか?

Aさんと同じ状況なのに・・・



お客さんであるセントテクノロジーは

「マーケティングオートメーションシステムとの連携が必要」

「名刺管理システムとの連携は検討していない」


自分の会社のアドバイスソリューションは

「マーケティングオートメーションシステムとの連携は経験がないから難しい、価格も高くなる」

「強みである名刺管理システムとの連携で受注したい」


お客さんに「マーケティングオートメーションシステムとの連携」を外して検討させることは不可能と判断しました。

また、自分の会社にとって「マーケティングオートメーションシステムとの連携の価格を下げる」だけではメリットがないと考えました。


そして、調整するため材料(情報)をお客さんとの会話の中から探し、双方を説得できる方法を考えました。


お客さんには、

「マーケティングオートメーションシステムとの連携の価格を下げる」ことを実現し、

かわりに

「セントマネジメントの営業管理システム導入計画」の情報を入手。

「名刺管理システムとの連携を検討」するよう説得。


自分の会社には、

「セントマネジメントでの再来期の売上拡大の可能性」「名刺管理システムとの連携による案件規模の拡大」を実現し、

かわりに

「マーケティングオートメーションシステムとの連携の価格を下げる」よう説得。



お客さんの課題と自分の会社の商品の機能

お客さんの予算と自分の会社の商品の価格

お客さんの購入時期や計画と自分の会社の納期や計画

お客さんの重視していることと自分の会社や商品の強み

・・・・・


はじめからお客さんの要望と自分の会社の商品やできることがぴったり合っているということはほとんどありません。


受注を獲得するということは、お客さんの要望と自分の会社の商品やできることの双方を調整(コントロール)し、ぴったり合わせることであり、これが営業の役割です。


営業の役割は双方をコントロールすることです。


お客さんの要望だけを聞いて、自分の会社に調整してもらうことではありません。

自分の会社の商品やできることだけを伝えて、お客さんが調整してくれるのを待つことではありません。


お客さんと自分の会社の双方です。

双方をコントロールし、お客さんの満足と自分の会社の満足の双方を実現することです。


Aさんは「マーケティングオートメーションシステムとの連携が必要」「名刺管理システムとの連携は検討していない」というお客さんの要望だけを聞いて、自分の会社にだけ調整してもらおうとしました。


つまり、自分の会社の満足を犠牲にしてお客さんの満足だけを実現しようとしていました。



「お客さんの要望を聞いてきても、うちの会社は応じてくれない」

とお客さんの要望を聞いてくるだけで、自分の会社ばかりに調整させる営業。


「商品やサービスを説明しているんだけど、理解してくれない」

と自分の会社の商品やできることを伝えるだけで、自らお客さんに調整させようとせず待つ、お願いするばかりの営業。


様々な会社の営業部と関わっていると、どちらかに偏っている営業社員、営業部が多く見受けられます。


みなさんやみなさんの会社はいかがでしょうか?



双方をコントロールし受注を獲得するためには・・・


①.お客さんの要望と自分の会社の要望の違いを洗い出し明確にしましょう。

②.双方をコントロールする材料(情報)を集めましょう(探しましょう)。

③.集めた材料(情報)から双方をコントロールする方法を考えましょう。


コントロールするための情報を集め・・・

お客さんに、何を説得して、何を犠牲にさせ、何を実現するのか?

自分の会社に、何を説得して、何を犠牲にさせ、何を実現するのか?



お客さんの課題や要望の変化が速い今日、そして自分の会社の商品やサービス、戦略の変化が速い今日では、双方がぴったり合っていることはほとんどありません。


今日の営業の役割は、お客さんと自分の会社の真ん中に立ち、双方をコントロールし双方の満足を実現することです。

その結果が受注であり、売上が上がるのです。

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