顧客視点とは想像すること
「自分がお客さんだったら」という想像が課題解決型営業を実現する
2024/12/15 NEW
- 営業概論
- 戦略・戦術・計画
- 課題・提案内容想定
「売る、買う」はお客さんが決めるもの。
「売る、買う」を成立させる営業にはお客さんの視点が必要です。
「お客さんはどうしたら買うと決めるのか?」という視点。
しかし、ほとんど会社で顧客志向や顧客視点が大切と言いながら、お客さんの視点ではなく、自分の会社や商品の視点で営業しています。
お客さんの視点で営業するとはどういうことなのでしょうか?
ある日、テレアポ代行会社セントカンパニーの営業担当Aさんは厨房機器メーカーのリーディングテクノロジーを訪問しました。
商談を進めていたらお客さんが今期の方針について話してくれました。
「新しく開発した自然冷媒の業務用冷蔵庫の販売に力を入れていく」
会社に戻り、お客さんに聞いた今期の方針から提案を考えようとミーティング。
上司Bさん
「Aさん、お客さんから聞いたリーディングテクノロジーの方針を説明して」
Aさん
「今期は新しく開発した自然冷媒の業務用冷蔵庫の販売に力を入れるみたいです」
「新製品の自然冷媒の業務用冷蔵庫を切り口に新規の取引先を開拓するみたいです」
営業担当Cさん
「自然冷媒って何?」
Aさん
「冷蔵庫は冷やすためにフロンっていうものを使っているみたいなんですが、フロンは地球温暖化を進める温室効果ガスの仲間みたいなものらしいです」
「そのフロンを使わないで、自然界にあるアンモニア、二酸化炭素、水、空気、炭化水素を使った環境負荷の少ない製品らしいです」
Cさん
「なんか難しそうだけど、環境問題を重視する会社が多いから売れるんじゃない?」
Aさん
「自然冷媒の業務用冷蔵庫は競合他社も売っているみたいなんだけど、リーディングテクノロジーの業務用冷蔵庫は省エネの性能も高いらしくて」
「だからこの製品を切り口に新規の取引先を開拓しようと考えているみたいです」
上司Bさん
「どうやってアプローチしようとしているの?」
Aさん
「今まで展示会に出展していたので、今回も展示会に出展すると思うんです」
Bさん
「展示会に出展するなら来場者に対するテレポアのニーズがあるんじゃないか?」
Cさん
「そうですね、メーカーの営業ってテレアポが苦手な人が多いから」
Bさん
「当社は、新製品のテレアポ代行の実績が多いから受注できるかもしれない」
「Aさん、早めに訪問して展示会に出展するかを聞いてくるように」
Aさん
「わかりました」
そして、Aさんがリーディングテクノロジーを訪問するとお客さんは、
「今回も展示会に出展するんだけど、すでに取引しているテレアポ代行会社に頼むと思います」
すでに競合のテレアポ代行会社と取引があり断られてしまいました。
3か月後、セントカンパニーの売上は伸びていない。
マネージャーBさんは、営業部長Dさんとミーティングしていました。
営業部長Dさん
「当社のサービスを紹介することばかり考えているから売れないんだよ」
「もっとお客さんの視点で考えて提案しないと」
マネージャーBさん
「お客さんの視点で考えていますよ」
「リーディングテクノロジーの件だって、お客さんの方針を聞いてニーズを考えていましたし」
ここでみなさんに問題です。
本当にお客さんの視点で考えていたのでしょうか?
Aさん、Bさん、Cさんの会話から考えてみてください。
さらに問題です。
お客さんの視点で考えていなかったのであれば、どのようなことを考えるべきだったのでしょうか?
たしかに、Aさん、Bさん、Cさんはリーディングテクノロジーの方針からニーズを考えていました。
「新しく開発した自然冷媒の業務用冷蔵庫の販売に力を入れる」
「自然冷媒の業務用冷蔵庫を切り口に新規の取引先を開拓する」
この2つからテレアポ代行のニーズはないか?
そして、考えたことは、
①.今回も展示会に出展する。
②.メーカーの営業ってテレアポが苦手な人が多い。
③.来場者に対するテレアポのニーズがある。
④.当社は新製品のテレアポ代行の実績が多いから受注できるかもしれない。
この①~④のうちお客さんの視点で考えたものは?
①.「今回も展示会に出展する」は、
今まで展示会に出展していたという情報からお客さんの視点で考えたこと。
②.「メーカーの営業ってテレアポが苦手な人が多い」は、
お客さん(リーディングテクノロジー)の視点で考えたのではなく、メーカーの営業に関する一般論。
③.「来場者に対するテレアポのニーズがある」は、
②の一般論から考えたことでありお客さんの視点で考えたことではありません。
④.「当社は新製品のテレアポ代行の実績が多いから受注できるかもしれない」は、
自分の会社の視点(自分の会社の経験による視点)で考えたことです。
つまり、お客さんの視点で考えたことは「今回も展示会に出展する」ということだけ。
他は一般論のニーズと自分の会社の視点による短絡的な予測。
お客さんの視点で考えるとはどういうこと?
みなさんがお客さん(リーディングテクノロジー)だったらどのような仕事を、どのような状況で行い、どのようなことに悩むでしょうか?
想像してみてください。
リーディングテクノロジーは厨房機器メーカーで、自然冷媒の業務用冷蔵庫を切り口に新規の取引先を開拓しようとしている会社です。
自然冷媒の知識、新製品の機能や省エネ性能の知識も必要でしょう。
そのため、知識を身につける時間が必要だし、説明方法の指導も必要かもしれません。
技術的な説明では、技術部の人の同行が必要かもしれません。
技術部も忙しく、同行の調整で苦労しているかもしれません。
既存の取引先の営業では、注文をもらうだけでなく納品や設置まで対応しないといけないかもしれません。
設備投資の予算を確保できない会社も多いでしょう。
製品を気に入ってもらえても買ってもらえないことも多いかもしれません。
長年、飲食業界を相手に仕事をしてきたリーディングテクノロジーでは、既存の取引先の営業ばかりだったかもしれません。
新規のお客さんのニーズを考えたり、提案することが苦手かもしれません。
そうすると・・・
新規の取引先を開拓しろと言われても、
製品知識の勉強や指導、既存の取引先の営業で時間が取れないかもしれません。
テレアポ代行でアポイントを獲得し訪問しても、
予算が取れないお客さんも多いし、お客さんのニーズを考えられず提案できていないかもしれません。
その結果、なかなか受注できず、モチベーションが下がっているかもしれない。
お客さんであるリーディングテクノロジーの視点で想像し考えると、
「提案しやすいように、テレアポの時にお客さんのニーズを確認する必要があるかもしれない」
「訪問前にニーズを把握できると、忙しい営業社員が積極的に新規取引先の開拓を進められるかもしれない」
Aさんが、「テレアポの時にニーズを確認して、新規のお客さんへの提案を促進しましょう」と提案していれば、受注できたかもしれません。
お客さんには、方針や戦略があり、そして様々な仕事を抱え、他の部門や人と関わり、一つひとつの仕事にはそれぞれの悩みや苦労があります。
お客さんの視点で考えるということは、お客さんの立場で考えるということ。
お客さんの方針や戦略、抱えている様々な仕事、他の部門や人との関り、そして悩みや苦労を想像し、その想像したお客さんの立場で考えるということ。
つまり、「自分がお客さんだったら」・・・
どのような方針や戦略に対し、どのような仕事を、どのような状況で行い、どのように悩み、苦労するかを想像することです。
お客さんから情報を聞いたとき、想像せずにすぐ一般論や自分の会社の視点で考えてしまう営業の人が多く見受けられます。
みなさんはいかがでしょうか?
1.お客さんから情報を聞く
「自然冷媒の業務用冷蔵庫を切り口に新規の取引先を開拓する」
2.一般論を考える
「メーカーの営業ってテレアポが苦手な人が多い」「来場者に対するテレアポのニーズがある」
3.自分の会社や商品で何ができるかを考える
「当社は新製品のテレアポ代行の実績が多い」
ではなく、お客さんの視点で考えるためには以下の順番で考えるのです。
1.お客さんから情報を聞く
「自然冷媒の業務用冷蔵庫を切り口に新規の取引先を開拓する」
2.聞いた情報からお客さんを想像する
「製品知識の勉強や指導、技術部との調整、既存の取引先の営業で時間がない」
「製品を気に入ってもらえても買ってもらえないことも多い」
「お客さんのニーズを考えたり、提案することが苦手」
3.自分の会社や商品で何ができるかを考える
「テレアポの時にニーズを確認して、新規のお客さんへの提案を促進」
課題解決型営業や戦略営業には想像力が必要です。
想像しないでできる営業は、お客さんから聞いた要求に応える御用聞き営業か、知っている商品を説明するばかりの商品案内営業のどちらかです。
課題解決型営業や戦略営業には、お客さんに聞く、調べるだけでなく、想像する力が必要です。
お客さんの状況や課題、予算、決裁者の意向、組織の力関係など、いくら聞いても、調べても、収集できない情報がたくさんあります。
お客さんを想像しなければ課題や提案、戦略は考えられません。
しかし、見たことも、働いたこともないお客さんの想像は容易なことではないでしょう。
お客さんの様々な仕事、他の部門や人との関り、そして悩みや苦労、・・・
この難しい想像する力を身につける方法は継続です。
想像する力は継続することで鍛えられ、磨かれるものです。
営業活動では常に「自分がお客さんだったら」を想像しましょう。
「いつも、毎回、お客さんを想像する」ことが課題解決型営業や戦略営業に近づけるのです。
想像する力を身につけるために「いつも、毎回」です。