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2024/09/15

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顧客情報のタイプと聞き出す方法

顧客情報は質問で”聞く”ではなく仮説の提示か会話で”聞き出す”

顧客情報のタイプと聞き出す方法
顧客情報は質問で”聞く”ではなく仮説の提示か会話で”聞き出す”


2024/09/15 NEW

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「ヒアリングや顧客情報の収集は大切」
ほとんどの営業部では、商品紹介やお願いばかりでなく、ヒアリングを大切にしてお客さんの情報を収集しようとしています。
 
課題解決型営業や戦略営業は顧客の情報から考える営業です。
たしかに、ヒアリングや顧客情報の収集は大切。
お客さんの要望だけでなく、その原因や背景であるお客さんの課題や戦略、決裁者の意向、競合他社の価格・・・
 
みなさんはちゃんと収集できていますか?
 
 
ある日、求人広告会社ヒューマンリーディングに食品商社のセントカンパニーから問い合わせが入りました。
「営業社員の採用で求人広告の掲載を検討しているのでサービスの説明を聞きたい」
 
 
1週間後に営業担当Aさんがセントカンパニーを訪問しました。
 
一通り会社やサービスを説明した後、Aさん
「営業社員の採用を検討しているとのことですが、どのような人材ですか?」
 
セントカンパニー人事担当Bさん
「20代後半から30代前半までの営業経験者を採用したいと思っているんです」
 
Aさん
「そうですか、何人ぐらいの採用をお考えですか?」
 
Bさん
「5名ぐらいです」
「今までは採用人数が少なかったので、入社したら費用が発生する成果報酬型の人材紹介を利用していたんですが、今回は5名なので費用対効果を考えて固定の掲載料で利用できる求人広告を検討していまして」
 
Aさん
「そうなんですか、5名だと求人広告の方が費用をおさえられますよね」
「求人広告ははじめてとのことですが、他の求人広告会社も検討されているんですか?」
 
Bさん
「すでに3社から話を聞きました」
「その中で決めようと思っています」
 
Aさん
「そうですか、当社も頑張りますので、ぜひお願いします」
「ご予算ってどのくらいですか?」
 
Bさん
「他社の話を聞いて考えようと思っています」
「御社の掲載料はどのくらいになりますか?」
 
Aさん
「2週間の掲載期間で110万円です」
「会社に戻って値引きできないか相談してみますのでよろしくお願いします」
 
 
そして、Aさんは会社に戻り上司Cさんに相談しました。
 
Aさん
「セントカンパニーを訪問してきたんですけど受注できるかもしれません」
「ただ、コンペなので値引きしたいんですが・・・」
 
Cさん
「どのくらい値引きすれば受注できるの?」
 
Aさん
「・・・わかりません」
 
Cさん
「お客さんの予算はどのくらい?」
 
Aさん
「他社の話を聞いて考えるって言っていたので、まだ決まっていないと思います」
 
Cさん
「そんなことないだろう」
「すでに3社から話を聞いているんだから、だいたいの予算は考えているだろう」
 
Aさん
「すみません、聞いたんですけど教えてもらえなくて」
 
Cさん
「他の3社ってどこなの?」
「競合他社の社名を聞けば価格がわかるから、だいたいの予算を想定できるだろう」
 
Aさん
「聞いてません」
 
Cさん
「どこの会社か聞いてみて」
 
Aさん
「はい、電話して聞いてみます」
 
Cさん
「それと、来期以降はどうなるの?」
「来期以降も求人広告を使ってくれる可能性があるなら値引きも考えられるけど」
 
Aさん
「お客さんに聞いてみます」
 
Cさん
「競合他社はどこか、それと来期以降の可能性をお客さんに聞くように」
 
 
すぐにAさんはセントカンパニー人事担当Bさんに電話しました。
 
Aさん
「先日はありがとうございました」
「上司と値引きの相談をしているので2点お聞きしたいのですが」
 
Cさん
「いいですよ、なんですか?」
 
Aさん
「すでにお話しされている他の3社のお名前をお聞きしてもいいですか?」
 
Cさん
「社名は言いにくいけど、1社は大手で2社は中堅ぐらいの会社かな」
 
Aさん
「ありがとうございます」
「あと、なんで今回は5名も採用するんですか?」
 
Cさん
「新規事業を進めているので営業部では人が足りないみたいで」
 
Aさん
「そうなんですか、来期以降の求人広告掲載の可能性はいかがですか?」
 
Cさん
「まだわからないなあ、来期の方針が決まっているわけじゃないので」
 
Aさん
「そうですか、ありがとうございます」
 
 
結局、Aさんは競合他社の社名も来期以降の可能性も教えてもらえませんでした。
 
Aさんが聞けたことは、
・新規事業を進めていて営業部では人が足りない
・20代後半から30代前半までの営業経験者を5名採用したい
・競合他社は1社が大手、2社が中堅
 
聞けなかったことは、
・予算
・競合他社3社の社名
・来期以降の求人広告掲載の可能性
 
Aさんは、なぜ聞けなかったのでしょうか?
 
みなさんは、セントカンパニー人事担当Bさんの立場で考えてみてください。
Bさんは、なぜ教えなかったのでしょうか?
 
 
実はセントカンパニーでは・・・
 
予算について、
人事部と営業部で検討しはじめから決まっていました。
予算は5名の採用に対して2社の求人広告を利用して合計200万円。
 
競合他社について、
3社のうち1社は以前から人材紹介を利用している会社でした。
人材紹介を利用しているという理由から定価の130万円から100万円に値引きしてもらっていました。
 
来期以降の求人広告掲載の可能性について
営業部では今回の求人広告で5名採用できたら来期以降も掲載したいと考えていました。
新規事業が順調に進み今後の拡大が見えてきたので、来期以降はさらに採用人数を増やしていく方針がありました。
 
Bさんは、なぜAさんに教えなかったのでしょうか?
 
予算について
2社で200万円という予算を教えたら、Aさんは10万円を値引きし100万円で提案するかもしれませんが、教えなかったら勘ぐって20万円か30万円値引きするかもしれません。
正直に教えると値引き額が下がり損するかもしれません。
 
競合他社について
人材紹介を利用している会社とは、他の会社に言わない約束で値引きしてもらうという裏事情がありました。また、以前からの付き合で信頼関係があるという内情もありました。
内情や裏事情は信頼関係や公平性を考えると言いにくいものです。
 
来期以降の求人広告掲載の可能性について
営業部では来期以降も掲載したいと考えていましたが、人事部のBさんは知りませんでした。
知らないことは教えられません。
 
 
どうしたらAさんは聞くことができたのでしょうか?
 
営業活動で必要なお客さんの情報には4つのタイプがあります。
 
「顕在情報」
お客さんの中で明確で言っても問題ない情報。
 
「潜在情報」
お客さんの中で明確でない、または気づいていない情報。
 
「内情・裏事情」
機密情報、未決定情報、しがらみ、信頼関係や公平性により言いにくい情報。
 
「取引に影響する情報」
言ってしまうことで損する情報。
 
この4つのタイプの情報の中で「顕在情報」は、質問すれば教えてもらえるでしょう。
 
しかし、「潜在情報」「内情・裏事情」「取引に影響する情報」の3つは質問しても教えてもらいにくい情報です。
 
これらの情報を収集するためには、
「おそらく・・・だろう」と思う仮説をぶつけて、仮説に対するお客さんの言葉や表情などの反応で収集する。
雑多なことについて会話しながら自然と言わせる、また会話しながら考えさせ言わせて収集する。
 
「潜在情報」「内情・裏事情」「取引に影響する情報」の3つを収集するためには、質問という手段で”聞く”のではなく、仮説の提示か会話という手段で”聞き出す”必要があるのです。
 
しかし、Aさんはすべて質問という手段で教えてもらおうとしていました。
 
その結果、
Bさんの中で明確で言っても問題ない「顕在情報」は教えてもらえました。
新規事業を進めていて営業部では人が足りないこと、20代後半から30代前半までの営業経験者を5名採用したいこと、競合は1社が大手で2社が中堅。
 
そして、
「潜在情報」Bさんが知らない来年以降の求人広告掲載の可能性。
「内情・裏事情」他の会社には言わない約束で値引きしてもらう競合他社のこと。
「取引に影響する情報」教えることで損するかもしれない200万円という予算。
この「潜在情報」「内情・裏事情」「取引に影響する情報」は教えてもらえませんでした。
 
 
営業活動で必要なお客さんの情報はたくさんあります。
課題、求めるメリット(課題解決の効果)、決裁者の状況や意向、関係者(現場など)の状況や意向、予算、時期や計画、商品購入による現状への影響、方針や戦略との整合性、競合、代替案・・・そしてこれらすべての原因や背景の情報。
※ 参考「クロージング力強化の第一歩」(顧客分析の10項目)参照
 
これらの情報のほとんどは「潜在情報」「内情・裏事情」「取引に影響する情報」です。
「顕在情報」は、ほんのちょっとしかありません。
 
つまり、質問して”聞く”という手段で収集できる情報はほんのちょっとだけ、ほとんどは仮説の提示か会話という手段で”聞き出す”必要がある情報です。
 
 
お客さんの情報は、お客さんに質問して教えてもらう(質問して聞く)という営業の人が多く見けられます。
みなさんはいかがでしょうか?
 
営業活動で必要なお客さんの情報を収集するためには聞き出す力が必要です。
 
営業は、収集したお客さん情報によって成果が変わる仕事。
多くの情報を収集するほど、有効な提案や対策も考えられ、交渉や説得もしやすくなる仕事です。
 
より多くのお客さんの情報を収集するために、質問で”聞く”のではなく、”聞き出す”ために仮説を提示、または会話をしましょう。


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