組織対策を考える方法②
決裁者が誰かを把握するだけでなく背景のMCPPCを把握する
2024/11/15 NEW
- 戦略・戦術・計画
- 顧客攻略・クロージング
予算(Budget)、決裁権(Authority)、必要性(Needs)、時期(Timing)、競合(Competitor)・・・BANTC
予算や決裁者、ニーズ、導入時期や競合・・・営業として売上を上げるためにすべて必要な情報です。
そのためBANTCでお客さんを把握するよう指導している会社も増えてきています。
しかし、BANTCを把握すれば本当に売上が上がるのでしょうか?
「予算や決裁者、ニーズ、導入時期や競合を把握することは売上を上げるために必要」ではなく、「予算や決裁者、ニーズ、導入時期や競合を把握すれば売上が上がる」のでしょうか?
求人サイトを運営しているセントコーポレーションでは営業部長Aさんが悩んでいました。
「うちのサイトは技術営業の採用に強いという特徴があるので引き合いは多いけど、営業のクロージング力が弱い」
下期に入りAさんとマネージャーBさんが対策についてミーティング。
営業部長Aさん
「セミナーの開催やプロモーションの改善のおかげで引き合いが増えているのに売上が伸びていない」
「このままだと今期の売上目標を達成できなくなってしまう」
「なんで売上が伸びていないんだ?」
マネージャーBさん
「うちの営業は予算も決裁者も聞いてこないので、手が打てないんですよ」
Aさん
「なんで聞いてこないの?」
Bさん
「毎回、聞いてくるように指導してるんですけど、聞くことが多いから忘れちゃうみたいで」
Aさん
「予算や決裁者を聞いてくるんなんて、営業として当たり前のことだろう」
Bさん
「そうなんですけど、求める人材や仕事内容、組織体制、今までの採用状況、今後の計画とか聞くことがたくさんあるので」
Aさん
「だったら、聞いてくるようにって言うだけじゃなく、ちゃんと体系的に管理しないといけないんじゃないか?」
Bさん
「そうですね、でもどうやって?」
Aさん
「BANTCって知ってる?」
Bさん
「いや、聞いたことはあるんですけど」
Aさん
「予算(Budget)、決裁権(Authority)、必要性(Needs)、時期(Timing)、競合(Competitor)の5つで、営業が売上を上げるために把握しないといけないこと」
「BANTCについて指導して、管理表を作って訪問後に登録させるようにすると、聞いてくるようになるんじゃないか?」
Bさん
「わかりました、やってみます」
BさんはBANTCを登録する案件管理シートを作成し、営業担当者に聞いてくるよう指導しました。
ある日、営業担当Cさんがお客さんを訪問し、訪問後にマネージャーBさんに報告していました。
営業担当Cさん
「設備機器メーカーのリーディングテクノロジーに行ってきました」
Bさん
「どうだった?」
Cさん
「うちの求人サイトに興味は持っているんですが、今期は予算がないので厳しいと思います」
Bさん
「決裁者は誰なの?」
Cさん
「営業社員を採用したいみたいで、最終的には営業本部長が判断するみたいです」
「ただ、人事部が担当しているからって言われて会わせてもらえませんでした」
Bさん
「営業本部で採用を進めているんだから予算はあるんじゃないの?」
Cさん
「今まで取引していた競合のヒューマンポータルの求人サイトにすでに掲載していて予算を使ってしまったみたいで」
「今期中に新規開拓営業経験のある営業社員を2名採用するために、すでに採用活動は進めていたみたいで」
結局、リーディングテクノロジーから受注できませんでした。
半年が経ち下期が終わり、営業部長AさんとマネージャーBさんが今期の結果について話していました。
Aさん
「なんで、売上目標を達成できなかったの?」
「引き合いや新規商談は増えているのに」
Bさん
「みんな、BANTCを聞いてくるようになったんですが、予算がないって言われたりしていて」
「それに決裁者を聞いても、役員とか本部長クラスなので会わせてもらえず説得できなくて」
ここで、みなさんに問題です。
BANTCを聞いてくるようになったのに、なぜ、売上が伸びなかったのでしょうか?
CさんはちゃんとBANTCを聞いていました。
予算(Budget):すでに他社の求人サイトに使ってしまったので予算はない。
決裁権(Authority):営業本部長、ただ人事部が担当しているから会わせてもらえない。
必要性(Needs):新規開拓営業経験のある営業社員を2名採用したい。
時期(Timing):すでに求人サイトは掲載していて、今期中に採用したい。
競合(Competitor):今まで取引していたヒューマンポータルの求人サイトにすでに掲載。
BANTCを聞いても意味がないのでは・・・
可能性や受注確度を判断するためには参考になりそうな気がするけれど、受注にならない、売上にならない。
受注できない言い訳のため?
正確な受注確度を把握して上司や会社に報告するため?
可能性が低いお客さんを判断して無駄な営業をやめるため?
しかし、言い訳しても、報告しても、無駄な営業をやめても・・・受注や売上にはつながらない。
では、なぜBANTCは売上を上げるために必要なのでしょうか?
BANTCはネガティブなこと(受注の障壁)の対策を考えることに意味があるのです。
しかし「決裁者が営業本部長」と聞いただけでどのような対策が考えられるでしょうか?
「ご紹介してもらえませんか」とお願いする。
しかし「人事部が担当している」と断られておしまい。
「営業本部長が何を重視しているか」を聞いて提案を考える。
そもそも「何を重視しているか」は担当者が聞いてすでに要求していること・・・改めて聞いても意味がない。
対策を考えるためには、BANTCそのものを把握するだけでなく、その背景を把握することが大切です。
決裁者が営業本部長であることを把握するだけでなく営業本部長の背景を把握すること。
つまり、営業本部長のミッションや悩んでいることを把握する。
リーディングテクノロジーは、取引先が海外に移転し減っていました。そのため新たにお客さんを獲得しないといけない。
そして、今までの製品では差別化できないので、製品である設備と一緒に設備の稼働情報を収集できるシステムの提案を進めていました。
また、また、受注するためには技術的な提案のため人手不足で忙しい技術部との連携が必要になっていました。
決裁者である営業本部長の背景は、
取引先が減って新たにお客さんを獲得しないといけない。
今までと異なりシステムの提案を進める必要がある。
受注するためには提案で人手不足で忙しい技術部との連携が必要。
この背景を把握することができれば・・・
「新規開拓営業の経験だけではなく、システム提案の経験も必要」と提案し、技術営業の採用に強い求人サイトが必要と説得できるかもしれません。
「顧客対応や提案経験のある技術者が必要」と提案し、営業本部長と技術部に話し合ってもらい、技術部の採用ニーズで受注できるかもしれません。
営業本部長の背景を把握していれば、対策を考え受注できたかもしれません。
受注するため、売上を上げるためには、
お客さんの情報を把握するだけでなく、対策を考えなければなりません。
BANTCを把握するだけでなく、BANTCの背景を把握し対策を考えなければなりません。
決裁権(誰、裁量、判断基準、決裁ルート)を把握するだけでなく、決裁権の背景を把握し対策を考えなければなりません。
決裁権に関する対策≒決裁者など購入判断に関する権限を持っている人の説得。
決裁者など購入判断に関する権限を持っている人を説得するために把握するべき背景はMCPPCの5つです。
「組織対策のMCPPC」
Misson:ミッションや重点課題
・新たにお客さんを獲得するために、新規開拓営業を進めないといけない。
・今までと異なりシステムの提案を進める必要がある。
Cooperation:事業における関係組織との連携
・受注するためには提案で技術部との連携が必要。
Misson、Cooperationの他に
Power relationship:会社組織における力関係
Personality:主義や思考傾向
Competitor:競合との関係
決裁者など購入判断に関する権限を持っているひとり一人のMCPPCを把握しましょう。
このMCPPCを把握すると決裁者など購入判断に関する権限を持っている人を説得する方法を考えられるのです。
「新規開拓営業の経験だけではなく、システム提案の経験も必要」
「顧客対応や提案経験のある技術者が必要」
問題の答え
BANTCを把握しただけで背景を把握しなかったため対策を考えられなかったから。
決裁権(Authority)を把握しただけでMCPPC(背景)を把握しなかったため対策を考えられなかったから。
BANTCを把握して売上を上げるためには、それぞれの背景を把握しなければなりません。
予算(Budget)の対策を考えるためには予算の背景
※「予算を確保させる方法」参照
必要性(Needs)の対策を考えるためには必要性の背景
※「顧客課題を考える方法」参照
時期(Timing)の対策を考えるためには導入時期や計画の背景
※「受注時期の調整」参照
競合(Competitor)の対策を考えるためには競合との関係性の背景
そして、
決裁権(Authority)の対策を考えるためには決裁権者の背景「MCPPC」
決裁者やキーマンをおさえて営業しようとしても「誰、裁量、判断基準、決裁ルート」しか把握していない営業が多く見受けられます。
しかし「決裁者は誰か、決裁者が何て言っているのか」だけを把握しても対策を考えられません。
結局、買ってくれるのを待つだけ、お願いするばかりの営業になってしまいます。
今日の法人営業で売上を上げるためには、待つだけ、お願いするばかりではなく、決裁者やキーマンなど購入に関係する人たちを積極的に説得する営業が必要です。
そのためには、決裁権(誰、裁量、判断基準、決裁ルート)を把握するだけではなく、決裁者を含む購入に関係する”ひとり一人のMCPPC”を把握しましょう。
決裁権を把握すること自体に意味があるのではなく、把握した決裁権から対策を考えることに意味があるのです。
「決裁者は誰か、決裁者が何て言っているのか」を把握しても、営業活動で使わない、使えない(対策を考えない)のであれば把握した意味がありません。